20年以上前の書物が現代に侵食…！ ある意味活字の力を感じた。死ぬよりは逃げろ！ と言う反語的メッセが強い本なのだが。刊行時94年、オウムも大震災もまだ。新天地で生活するてっとり早い方法に異性との同棲とあったが、死んでいるとも思われたオウム平田や菊地も内縁生活をそれぞれ送っていたことを考えると細かい法はともかく根っこは人間、性変わらぬと唸らされる。逃れた先で結局新たな人間関係に絡め取られるのか。元探偵なので愛読紙からの職応募、同じＡＴＭ利用など失敗例が具体的。自殺マニュアルに絶歌、太田出版も20年ぶれない。

　包丁で料理する人が99％だが殺しに使う者もいる。醤油も大量に飲めば死ぬ。子供をさらうなんて想定外の読まれ方は本もキツい。90年代は真剣大真面目な悪ふざけや反語的な知的好奇心で遊べた時代。ネットの一般化で色んなことがマジモンでシャレにならなくなり…村崎百郎も青山正明も死んだ。情報に誰でも繋がる社会は幸福なのか。鬼畜ブームを超え生き続けている自分の今後のありようを沈思させられた。（尾崎未央）