言霊を信じつつ葛藤、その力を身につける途上の青年の記録。落ち葉に埋もれベッドで誘う! アイドル的写真も必見だが、淡々としつつ壮絶すぎる内容の箸休め。あどけない表情…と奥付見るとどちらも十代!虚無や闇も引き受け成長、表紙の立派な青年に育ってきたのだと心打たれた…震災、事故…(流血キスクラまでの未知の舞台裏に絶句)。
ルポだが題名通り幼時からの非凡な思考メソッドを辿る思想書。失敗や自力とは関係ないどん底であっても考え方と口に出す言葉によってどう前向きに生きるかを参照する指南にもなる。
著者野口氏が前に出過ぎず他選手尊敬もあり対象と程よく一体化、特にラストは憑依的で幸福な執筆だったろうと想像する。新聞記者出身とのことで、全く未知分野の現場や歓迎されぬ場にぶっつけで行く経験も駆け出し時に必ず積んだだろう。そこがフィギュア専門ライターとは異なる客観性と書き癖の抑制を生み信頼できる。アナウンスから1年以上、版元も著者も代わった評伝、この著者で良かった。気がかりだった高橋大輔や無良崇人とのやり取りもあり、ホッとする。(尾崎未央)