「2015年は本当に楽しかった。終わって欲しくない」去年の暮れ、若林は自身のラジオ番組でこんな発言をしていた。ずっとラジオを聴いている1人のリスナーとして、それは何だか新鮮な言葉だった。そんな時期に、2010年から雑誌で連載中の彼のエッセイが文庫化された。連載初期のエッセイには、「趣味がない」「自意識過剰だ」「撮影で笑えない」など何かにつけて考え込み、斜めに生きる彼の心情が綴られていた。今の若林とは大違いだ。だって今の彼は、”趣味”であるプロレス観戦についてラジオで楽しそうに語り、車のカスタムに興味を持ち、某電気メーカーのCMで「にくいね!」なんて笑顔で言っているからである。本を読み進めていると、エッセイの中の若林と今の若林が徐々に一致してくる。そしてあとがきにいたのは、冒頭の言葉を口にできる、出会った人や出来事に正面から感謝を伝えられる若林である。これはエッセイ集だが、1人の男の成長譚でもあると思う。迷い立ち止まりながら、それでも変わろうとする人にとって励みとなる1冊になるはずだ。(Loft PlusOne West:平松克規)