「羊たちの沈黙」でサイコスリラーを確立し、「牢獄の名探偵」にして狂気の殺人鬼という唯一無二のキャラクター、ハンニバル・レクター。その高潔さと狂気をあわせ持つ彼のイメージは「ハンニバル」等の続編で凋落、ちょい悪プチブル親父（食人癖あり）に堕していたのが事実だ。しかし今回ＴＶドラマ化された「ハンニバル」は「羊〜」以前の物語が描かれており、また本来のレクターのあるべき姿が描かれている。毎回怪人のように登場する連続殺人鬼たち、ＦＢＩの捜査に協力しながら殺人鬼を煽り、捜査官をも狂気の縁に誘う…。本来の「他人の狂気を扇動する」レクターの危険な魅力が全開である。新たにレクター役を演じる「北欧の至宝」マッツ・ミケルセンも大人の危険な色気に満ちた演技を見せている。前日譚ゆえラストは判っている作品だが、原作や映画版との関わりも含め、今もっとも見逃せないＴＶドラマである。（多田遠志）　※DVD版もあり。