わたしはごはんがすき。パンは嫌いではないけれど、普通。「パン好き」に感じてしまうおしゃれ感も苦手だし、人気のパン屋にできる行列も情報誌のパン特集が人気なのもピンと来なかった。でもこの本で、普通だったパンが好きになった。覚えたてのクロックムッシュが食べたい。自らもパンを焼くパン好きな漫画家堀道広とその妻のパンにまつわる何気ない日常と、クセのあるタッチで描かれる魅力的なキャラクターたち(パンにこだわりすぎる刑事やパンを愛しすぎるヤクザなど)が織りなす四コマ漫画。思わずくすっと笑えて、おいしいパンを食べたときのような幸せにつつまれる。実在するパン屋も登場し、それぞれの話にパン研究所「パンラボ」主宰の池田浩明氏によるパンの豆知識やお店情報などのパンエッセイつき。さらに著者と池田氏が行く「不思議なパン屋を巡る小旅行」を特別収録。次の休みは、堀夫妻のように早く起きてパンを買いにいきたい。じわじわっと発酵するパンのような一冊。(Loft PlusOne West : 甲木美紅)