タモリがかつて、いかにクレージーであり、アナーキーな存在であったか。『笑っていいとも』や『タモリ倶楽部』でしかタモリを知らない世代にとって、この本との出会いは衝撃的なものがある。中でも南伸坊のエッセイは傑作であった。赤塚不二夫や山下洋輔らがタモリの密室芸を堪能していた四谷にあるジャズバー「ホワイト」にてタモリを初めて目撃した時のこと、タモリが帰ろうとしているところで「連れの黒人のジャズマンらしい人」が「じゃあねえ、くらいの思いいれで“ノーモア ヒ・ロ・シ・マ!”と大声で言った」、普通なら凍りつく場面だがそれに対してタモリは「おお、じゃあな、くらいのテンポで「リメンバー パールハーバー!」と返したのだ」……タモリ、おそるべし。小田和正や武田鉄矢などにケンカを売り、馴れ合いや感傷的なものをことごとく否定しながら、独自のポジションを築いていったタモリの“タモリとは何か?”が分かる一冊。アナーキーなタモリを知りたい方は是非。(石崎)