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トップレビューたった一人の生還--「たか号」漂流二十七日間の闘い/佐野三治

たった一人の生還--「たか号」漂流二十七日間の闘い/佐野三治

2013.08.05   CULTURE | BOOK

新潮社

 古書だが辛坊氏事件受け。乾パン1枚分け合い食べてきた仲間が飛行機を見て助かると喜ぶも、気付かれなかったと実感した途端バタバタ3人死去…いかに希望が人を生かし絶望が殺すかと戦慄。最後の1人になり、奇跡的に捉えた鳥を少し食べ(まず鳥の胃中の溶けかけの魚から喰う!)棄ててしまう場面の絶望の深さ、暗黒の海に響き渡る幻聴「川の流れのように」の恐怖。救助後会見で食人疑う声が出て医師が怒ったのを今も覚えている。辛坊氏がすぐ救助されたのがいかに僥倖か…。著者が加山雄三のクルーだったこと(直接見舞いにも来る)、この海難事件が起きた時、彼らを追い抜いたヨットが石原慎太郎氏のものだったこと(そのすぐ後リタイア。過酷なレースだったようだ)に驚く。22年前、著名人が船を持つのはステイタスだったのか。1人になりもう誰も自分のまぶたを閉じてくれないと目にテープを貼り熟睡…凄まじいリアリティ。それでもまたヨットをやりたいと21年前の時点で著者。辛坊氏がまたの挑戦示唆、非難がましく思うがそれが海の男か。解説が日航機墜落や三陸大津波ルポの吉村昭なのもポイント。(尾崎未央)
 

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