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宅間守 精神鑑定書----精神医療と刑事司法のはざまで/岡江晃

2013.06.06   CULTURE | BOOK

亜紀書房
2,520yen

 まさに恐怖の書。宅間は17歳の時から自主的に(時に犯罪からの逃避や措置入院はあれ)精神医療施設に14回もかかり記録に残るだけでも強姦、薬物混入など13回罪を犯している。だが4度の結婚と1度の養子縁組、自衛隊員や公務員(用務員や市バス運転手)!として勤務歴があり病気自覚ありつつ「フツウ」を装えたのだ。「社会への怨みでエリートを」というより3番目の妻に離縁堕胎されたことへの怨みが事件前夜まで彼を支配しきっていた。池田小以外にエリート女子小学校があり当日思い出せばそちらに行った事(その場合もっと被害甚大だった?)、用務員経験から子供や教員がどの時間どの辺りにいるか予想できたことなどゾッとする。本書はタイトル通りの資料で(絵画心理テストや脳の断面図あり)、余り「地の文」はない。少ない著者の言葉で誰がどう加療しようとも事件は起きただろうことが示唆されるのも切ない。事件から12年…公刊に意義はある。精神医療者に読んでもらいたい。変えられない結末に向けジリジリ色々な側面が明らかにされていく感じが映画「ローラ・パーマー最期の7日間」をふと思い出した。(尾崎未央)

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