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戦争と一人の女/近藤ようこ

2013.04.04   CULTURE | BOOK

青林工藝舎 / 1,050yen

 『見晴らしガ丘にて』や『アカシアの道』など人間描写の巧みさで知られる近藤ようこの書き下ろしによる新刊が登場。戦後、GHQの検閲により大幅改変されていた坂口安吾の『戦争と一人の女』の無削除版を読んだ著者が、削られていた「女は戦争が好きだ」とか「毎日空襲があればいい」という言葉に興味を持ち、これを漫画化したいと思い立った。それから実際に描き上がるまで7年かかったのは、近藤の興味がどんどん戦時中の庶民の様子に移ったからとのことだが、常に平凡な人達の生活を第一のテーマにしてきた著者らしい理由だ。物語の主人公である虚無的な男は作者(坂口安吾)を投影しているが、敗戦後の破滅や絶望を怖れる男は、戦争がずっと続くことを願っている。しかし戦争は終わり二人は生き残る。それは実際に生き残った安吾自身の姿でもある。彼が『堕落論』を書いた荒涼とした地平が見事に漫画化されている。(加藤梅造)

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