お笑いにあかるくない僕がこんなこと言うのもアレですが、ボケとツッコミを文字化するのってとても難しいことだと思っておりまして、それに失敗して非常に寒々しいことになったアレコレを幾つか目撃したこともあるんですが、本書はそのハードルを非常に上手くクリアしておりまして、とにかく「お笑い好きな高校生がひょんなことからコンビを組んだ転校生美少女は実は戦闘サイボーグだった!」というアルティメットな設定で冒頭から読者を物語世界に引きずり込み、なかば力技でお笑いに必要な「空気感」を醸成してしまう訳です。あとはもう著者のなすがまま。コントと恋とSFバトルという一見欲張り過ぎな要素をこれでもかと詰め込んでいるのに、不思議と何の違和感もなく、ハイテンポな文体に導かれるまま爽快なラストへ一直線。発売からやや経ちましたが、略して『青サバ』と呼ばれる本書、今年の個人的ベストラノベの一角を担う名著であります。(Asagaya/Loft A:前川誠)