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トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか/羽根田治など

2012.12.05   CULTURE | BOOK

ヤマケイ文庫 / 998yen

 先日の万里長城遭難事件と同じツアー会社による、夏山8人死事件の検証を一般向けにまとめた2年前の本。教訓は全く生かされなかった…。ガイド同士の連携の悪さ、行程の無理さ・ツアー客の経験値体力の差、低体温症の怖さ。幾ら食べ物防寒具雨具を持っていても判断が鈍って食べず着なければ死ぬ。ガイドがおかしくなって極寒の中流水と化した道の真ん中を歩くよう客に命じ、ついには寝そべり携帯メールを打つしかしなくなり(きっと打てていない)、「帰りたい」と客が訴えると「帰ってくれ」という場面…。ホラー映画でなく現実。皮肉にもこのガイドが生き残り証言しているのが圧巻。低体温症の影響で生き残った人々の記憶、時間などは曖昧だったり伸び縮みしたりしていて少し「薮の中」な部分もあるがそれでも恐怖がリアルに迫る。そしてこの本が刊行された時点では生き残った方々(若いとはいえない、60代〜)がそれでもこの会社でツアー登山を続けていると書いてあるのも万里の長城に直結して恐ろしい…。(尾崎未央)

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