80年代にアメリカへ移住しその後市民権をとった著者の室謙二は、あるとき友人に「何故アメリカ人になったのだ?」と問われ、その意味を考える。アメリカは多層的な複数文化の国だが、一体自分はどのアメリカに連なるのか？と。例えば白人に対する黒人・ラテン系・アジア系、右傾化した共和党とリベラルな民主党、既成の文化とカウンターカルチャーなど、二極化しつつあるアメリカで著者は自分を「向こう側」（主流アメリカ）ではない「非アメリカ」に連なる者としてどう生きるのかを考えるのだ。そして室は、非アメリカを生きてきた複数の人物を取り上げる。北米最後の野生インディアン「イシ」、政府の意志に反しスペイン市民戦争に参加したハンク・ルービンとジャック白井、ジャズの巨匠マイルス・ディヴィス、等々。そして現在、非アメリカの側にいたオバマが大統領になった時代の新しいテーマを設定しなければならないとして本書を閉める。著者の続編を早く読みたくなる非常に興味深い一冊だ。（加藤梅造）