エログロという言葉が示す通り、猟奇と耽美の親和性はとてつもなく高い。そして、おそらくはそういった妄想を描かせたら世界でも随一の説得力を持つ作家が佐川一政、その人であろう。とは言っても、今作ではそういったグロ描写は無い。しかしながら、魔都シンジュクに存在する、海外からの不法就労者たちのねぐら、ガイジンハウスに居住することになった、若い白人女性ストリッパーを主人公に描き出される世界は、まさしく“糞”のような世界だ。西洋との文化・価値観の違いを軸に、卑屈なまでの日本人への蔑視や、ワイドショー的に世間を騒がせる日本社会システムの崩壊が、ガイジン目線で描かれる様は、三人称の形をとってこそすれ、コンプレックスに塗れた諧謔的な独白であると言えよう。作者自身の分身「シン」を登場させて、自身の中にある白人女性へのマゾヒズムを解放、サイケデリックな文体で食人に対しての心境を暴露する展開は、まさしく破滅型私小説と言えるだろう。ただし「後発の」ではあるが。(Asagaya/Loft A 山崎研人)