正直、今エンタメ（映画、音楽etc）業界はやりにくいと思う。月並みだが想像を遥かに凌駕する事態が３.１１に勃発、何をやっても不謹慎とそしられそうな空気に満ちてしまったのだから。特に死、不運等を題材とするホラー／怪談業界の苦境は想像するだに...。そんな中、私の見る限り最も早く動き態度表明をハッキリ打ち出したのは自身東北に住み、活動している黒木あるじ氏。4.26発売の地方小出版社「荒蝦夷」刊「仙台学vol.11」、5.5刊「饗宴」に東北在住でなければ書けないこの震災における不思議な話と怪談作家としてのアティチュード宣言を高らかに謳っており両書とも必読。さて本書「百物語」の平谷美樹氏も岩手在住でご自身被災者。その分、じっくりと集められたラスト30頁にわたる東日本大震災の章が圧巻。"あの世の者も、必死で我々を護ろうとしている"。筆者、語り手たちの言葉が沁みる。十夜読み続けてきて良かったと思えた。「不謹慎という言葉で縛ろうとしているのは、災禍の外にいる人々が多い」...ハッとする。怪談好きだけでなく全読書人に読ませたい巻。（尾崎未央）

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