ロックが「反抗の音楽」としての立ち位置を失っていくなか、誰もが飼い馴らすことのできない、アンタッチャブルな領域として燦然と(?)輝きを放ち続けるジャンル。それがブラックメタルだ。これは、そんなメタルの極北から産み落とされた暗黒の名盤600枚を紹介する珠玉のガイドである。ジャンルの祖であるノルウェーブラックにはじまり、スウェーデン、ドイツ、フランス、日本など15の国・地域別に押さえるべきバンドを紹介。更に歴史の闇に消えたオリジネイターや数年前に大爆発したヴァイキングメタル、ポストロック/シューゲイザーに接近したニューウェーブまで、深化・複雑化するジャンルを網羅する。コアなファンにしてみたらラインナップに不満もあるだろうし、紹介文が抽象的過ぎて作品の全体像が掴みにくいことも時折ある。だが、それでも本書が、ブラックメタルが如何にして始まり、どのように息づいているのかを知るに最適かつ貴重な入門書であることは揺るがない。そしてそれは同時に、音楽による世界への反抗のドキュメントとも言えるのだ。(前川誠)
SHADOWS OF EVIL - BLACK METAL DISC GUIDE
2011.04.07 CULTURE | BOOK