冲方丁原作のコミック第三巻
2003年に日本SF大賞を受賞した作品の漫画化である。サイバー・パンクを意識した本作は、一時期の多重人格探偵サイコを彷彿させるグロさもあり、それでいながら現代アニメに必要とされるヒロインのかわいさをも併せ持つ秀作マンガであろう。また、作者の好みと思われる、古典SFをイメージさせるシーフードも多く、ウィリアム・ギブソンの作品から引用したと思われるリリックも多数見受けられる。そういう視点でみると、本作は古典SFを現代的表現によって再現したと言っても過言ではないだろう。さらには、漫画化したことにより生まれた気持ちのよいテンポが、濃いストーリーをさらっと読ませてしまう力を持っている。特にこの3巻は全編戦闘シーンでありながら、ヒロイン・バロットとネズミ型万能兵器・ウフコックの信頼関係のすれ違いが起こり、まったく先を予測できない展開である。11月6日より本作が劇場公開されるので、こちらも見逃せない!(LOFT/PLUS ONE:菊池悠介)