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トップレポートKitri、初バンド編成でのライヴをBillboard Live YOKOHAMAで開催! 普段とは違うBLACKなKitriで魅了する!

Kitri、初バンド編成でのライヴをBillboard Live YOKOHAMAで開催! 普段とは違うBLACKなKitriで魅了する!

2021.06.16

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MonaとHinaの姉妹ふたりによるピアノ連弾ボーカルユニット、 Kitriが今年4月にリリースしたアルバム『Kitrist II』を引っ提げて、 『Kitri Billboard Live 2021“Kitri & The Bremenz Live”』を開催。 6月13日に開催されたBillboard Live YOKOHAMA公演の第二部をレポートする。
 
『Kitrist II』は2020年1月リリースの1stアルバム『Kitrist』に続く2作目のアルバムで、 2019年発表のEP 2作『Primo』『Secondo』然り、 彼女たちは“姉妹によるピアノ連弾ユニット”というかたちを大切にしながら、 “Kitriでこんな曲をやってみたらどうなるのだろう?”と想像を膨らまし、 ふたり以外の音も取り入れて、 作品をリリースするごとに表現の幅を広げてきた。
 
そんな中でも、 ステージでの衣装は決まってKitriのキーカラーである赤いワンピースだったり、 1曲目にクラシック曲を演奏することなど、 ライヴではちょっとしたルーティンがあったわけだが、 この日のKitriは黒色に赤い十字のラインが入ったワンピースに、 フワッとしたパーマをかけたヘアスタルで登場。 そして、 『Kitrist II』の収録曲「小さな決心」で幕を開けると、 ふたりが口ずさむハーモニーが優しく会場に広がる。 音源で感じていたサウンド面での挑戦とはひと味違う、 “ここからさらにKitriが変わっていく”という実感に胸が高鳴った。
 
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本ライヴはKitri初のバンドセットということで、 2曲目からは“The Bremenz”と名付けられたメンバーが参加。 音源ではアレンジャーとしてもお馴染みのドラマー・神谷洵平をはじめ、 Monaが“大地を感じる音色が魅力的”と太鼓判を押すベーシスト・千葉広樹、 Sax、 クラリネット、 シンセ、 フルートも奏でる副田整歩がこの日のステージに彩を添える。 Hinaは曲ごとにギターやピアニカなどを持ち換え、 Monaはピアノ固定と、 ライヴを重ねるうちにふたりのポジションも決まってきたようだ。 そんな5人で披露した「人間プログラム」では、 最初の音合わせでHinaがエレキギターをバイオリン弓で弾いていたのも印象的だった。 Kitriはピアノ連弾から始まり、 打ち込みやストリングスなどを取り入れて挑戦を重ねているが、 サウンドを一気に華やかにするのではなく、 その変化を“じっくりと時間をかけて魅せる”ことにも手を抜かない。 ライヴでもまるでフルコースを振る舞うように、 まずはシンプルなアンサンブルを聴かせることで、 曲が始まってからのピアノ、 エレキベース、 パーカッションの調和の中でキラリと光るエレキギターの存在感をより味わうことができた。
 
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ふたりがステージでの装いを一新したことにも通ずる「NEW ME」も披露。 ダンサブルな曲調がバンドサウンドにはぴったりだけれど、 Hinaの高音パートとMonaの低音パートが合わさり、 どこか気怠さを帯びて響く歌声の妙が癖になる。 「Akari」ではノスタルジックなフルートの音色に魅了され、 曲に潜入しきった神谷の絶妙なビートに心を奪われながらも、 Kitriのヴォーカルとピアノがしっかりと音の中心にあるのを感じていた。 「未知階段」のドラマチックなピアノリフと、 ウッドベースのじんわりと広がる深みも相性がばっちりで、 ラテン調の「赤い月」が描く情熱と勇敢なさまは今のKitriそのものを表しているかのよう。
 
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また、 同曲の大サビ前でそれぞれの楽器が違うメロディーを弾いていても、 全ての音が耳に飛び込んでくるという奏者としての巧みな技術は圧巻。 その余韻を残しながら聴く「矛盾律」はライヴのたびに最も音の変化を楽しめる曲で、 今まではMonaとHinaのふたりで遊びを凝らしていたところ、 今回は3人の仲間が加わることでどっしりとした音像が広がり、 動物の足音に似たリズムも聴こえて、 より壮大なジャングルが目に映るようだった。 ライヴで聴いた時の新しい感覚はどの楽曲にもあって、 独特なリズムを刻む「目醒」にはもともとクールなイメージがあったが、 《個々にここに呼び醒ませ》と歌う中に芯の強さが潜んでいることにも気づかされた。
 
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また、 これだけ劇的でメリハリのあるセットリストなのに、 会場に広がっていたのは緊張感ではなく、 温かく柔らかな空間だったことにも感動した。 各奏者の経験が物語っていることは言うまでもないが、 Kitriがひとえに“新しいこと”へ突っ走ってきたのではなく、 常に“ふたりで表現できること”にも追求心を持っていたからだと思う。 ふたり以外のサウンドに挑みながらも、 拍子に工夫をしたり、 歌い方で表情を広げるなど、 自分自身も大胆に殻を破ってきたという自覚が、 ステージでの堂々のパフォーマンスにつながっているのだろう。
 
後半の流れも素晴らしく、 「Lily」ではドラム、 ウッドベース、 クラリネットが入るも、 どこかささやかなアレンジでピアノ連弾を引き立たせ、 次の「青い春」ではMonaが思いきり歌うのに合わせて、 その他の楽器も高らかに鳴っているという抑揚が心地良い。 本編のラストにメジャーデビュー作『Primo』のリード曲「羅針鳥」を選ぶのも粋な計らいで、 《ここからはじめまして》と歌うサビにこれからのKitriへの期待を募らせる締め括りだった。
 
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Kitriはカバーの選曲も意外なものが多く、 これまでにもフラワーカンパニーズの「深夜高速」、 たまの「パルテノン銀座通り」と、 ジャンルや世代関係なく演奏してきたが、 この日のアンコールでチョイスされたのはビートたけしの「TAKESHIの、 たかをくくろうか」。 趣深いこの曲も哀愁を帯びながらしっとりを歌い上げる姿に、 まだこんな一面もあるのかと驚かされる。 そして、 最後はMonaとHinaだけでふたりの生い立ちを綴った「君のアルバム」を演奏し、 ここまで終始“Kitriの変化”に魅了されてきたところ、 Kitriはピアノ連弾ユニットである以前に、 “MonaとHinaのふたりである”ということが大前提なのだと悟る。 Kitriは変化を求めることで表現の幅が広がっていく面白さを感じさせてくれたが、 それでいてこのふたりである意味も強くなっていく、 かけがえのない音楽ユニットであることをそっと心に留めたライヴだった。 
 
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今回は初のバンドセットでのワンマンライヴということで、 音以外にも黒い衣装や新しいヘアスタルで変化を見せたKitriだったが、 きっとふたりだけのピアノ連弾と赤い衣装姿も変わらずに観ることができると思う。 赤と黒のふたつのモードで魅せていくこれからのKitriも楽しみにしたい。 
 
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取材:千々和香苗
写真クレジット:Masatsugu ide
 

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