▲全12巻のイメージ。装画は風間サチコによる
株式会社皓星社はこのたび、行動するルポライター・鎌田慧の仕事を集大成した『鎌田慧セレクション─現代の記録─』の刊行を開始する。
袴田巌さんの無罪判決が出された今月、第1巻として『冤罪を追う』を刊行した。
鎌田慧は、死刑制度、原発問題、労働問題、自動車産業など、戦後日本の闇を抉る作品を書き続けてきた。これらの著作・著述から重要作品を自選し、さらに「拾遺」として「単行本未収録文集」を加え、全12巻を2年間かけて刊行していく。
鎌田慧は1938年青森県生まれ。大学卒業後、鉄鋼新聞社記者、月刊誌『新評』編集部を経てフリーになり、1970年に初の単著『隠された公害:ドキュメント イタイイタイ病を追って』(三一新書)を刊行した。
以後、冤罪、原発、公害、労働、沖縄、教育など社会問題全般を取材し執筆、それらの運動に深く関わってきた。東日本大震災後の2011年6月には、大江健三郎、坂本龍一、澤地久枝らと「さようなら原発運動」を呼びかけ、2012年7月、東京・代々木公園で17万人の集会、800万筆の署名を集めた。2024年現在も、狭山事件の冤罪被害者・石川一雄さんの再審・無罪を求める活動などを精力的に行なっている。
▲澤地久枝(左)と鎌田慧(右)
第1巻『冤罪を追う』は、死刑事件で、戦後はじめて再審への道がひらかれた財田川事件を追った『死刑台からの生還』を収録。さらに狭山事件、袴田事件、福岡事件、三鷹事件、菊池事件などの論考を再編集して収録した。
袴田巌さんの無罪判決が出たいま、冤罪の問題について考える契機になることが期待される。
発行元の皓星社は、1979年創業。ハンセン病患者・元患者の方々の作品集と、アジア問題の出版からスタートし、現在は広く人文社会科学に関する本を刊行している。
本シリーズは、格差が拡大し差別と分断がはびこるいま、その種子が蒔かれた高度成長期の闇を暴く鎌田氏の仕事を再読することが必要だとの認識に立ち、同社の45周年記念企画として、刊行の運びとなったという。
現在、東京堂書店(千代田区)にて、鎌田慧と東京堂書店の選書によるフェアが開催中。
鎌田が追求してきた、冤罪、原発、公害、労働、沖縄、教育などに関する本が壁面一面で大きく展開されているので、ぜひ足を運んでいただきたい。
皓星社『鎌田慧セレクション─ 現代の記録 ─』の特設サイトはこちら。
商品情報
鎌田慧セレクション ─ 現代の記録 ─
A5判並製 / 平均350ページ
予価各巻 2,700円+税
2024年9月より隔月刊行
発行:株式会社皓星社
【全12巻の構成】
1. 冤罪を追う
2. 真犯人出現と内部告発
3. 日本の原発地帯
4. さようなら原発運動
5. 自動車工場の闇
6. 鉄鋼工場の闇
7. 炭鉱の闇
8. 教育工場といじめ
9. 追い詰められた家族
10. 成田闘争と国鉄民営化
11. 沖縄とわが旅路
12. 補遺