2023年、Ken Yokoyamaは全3作に及ぶシングルシリーズに取り組んだ。まず、5月に『Better Left Unsaid』を発表。そして、9月に『My One Wish』、11月に『These Magic Words』と2~3曲入りの作品を送り出した。かつて、横山健はアルバムというフォーマットにこだわった作品づくりを行っていたが、昨今の音楽業界を取り巻く環境や自身の心境の変化を受け、<作品>というバンドとしてのステートメントをパンクキッズと数多く共有するという手段を選んだ。それに伴い、彼らは5月には初めて日比谷野外大音楽堂でライブを行い、9月からは初の東名阪ホールツアーも敢行。来年でKen Yokoyamaとして活動をはじめて20年が経つが、2023年の今になっても初めて尽くしの1年を過ごしている。これは本人も想像していなかったことだろう。
そのせいなのかはわからないが、今作にはどの曲を削っても成立しないような強さがある。たとえ自分たちが死んだとしても誰かの寄生虫として魂は生き残る、と歌う『Parasites』は今作を代表する強烈なステートメント。13年前に「Let The Beat Carry On」(アルバム『Four』収録)で伝えていたメッセージをより泥臭い形で突きつけてくる。一聴してすぐに横山の音だとわかる特徴的なギターフレーズと音色、そして何十年もシーンを牽引してきた2ビートが『Indian Burn』の扉を開ける。
「The Show Must Go On」はタイトルからしてすでに強い意志を感じるが、横山は<ズタズタに心が引き裂かれていても ガタガタになった体を引きずって たった数人しか 目の前にいなくても あいつのハートも連れて>(日本語訳)というメッセージをカラッとした8ビートに乗せて歌うのである。いくつになってもステージに立ち続けるという歌はこれまで数多くのバンドが残してきているが、今年54歳になった横山がそれを歌う覚悟を想像してみてほしい。彼の想いの強さに身震いがする。
一方、「A Little Bit Of Your Love」はまさに今作の産みの苦しみがうかがえる曲。<今夜は詞を書かなきゃいけないんだ 明日の朝までに書かなきゃ 間に合わないんだ>(日本語訳)と綴られているが、このミドルテンポの曲はアレンジ力がずば抜けている。シンプルでありながら、中盤で聴かせる展開には思わず拳を握る熱さがある。
2024年1月31日(水)発売 【初回盤】PZCA-106 / ¥3,500(+税)※CD+DVD 【通常盤】PZCA-107 / ¥2,500(+税) レーベル:PIZZA OF DEATH RECORDS
【収録曲】 01. Parasites 02. My One Wish 03. A Pile Of Shit 04. Show Must Go On 05. These Magic Words 06. New Love 07. Better Left Unsaid 08. Indian Burn 09. Deep Red Morning Light 10. Long Hot Summer Day 11. A Little Bit Of Your Love 12. Heart Beat Song