株式会社KADOKAWAは、 2022年2月16日(水)に、 伊集院光の単行本『名著の話 僕とカフカのひきこもり』を発売。 WEB書店にて、 予約受付を開始。
伊集院光は、 2012年よりNHK Eテレ「100分de名著」に出演し、 100冊を超える名著を紹介してきた。今回、 番組で取り上げられた古今東西よりすぐりの名著の中から、 自身の心に刺さった3冊を厳選。 本をよく知る3人と再会して、 時間無制限、 語り下ろしの徹底トークを繰り広げる。
実は「100分de名著」収録の時点では、 「未読の人」として視聴者との橋渡しの役割を果たすためにあえて「名著」をまったく読まずに臨むことを自分に課している伊集院。 番組で出会った本を収録後に初めて読むと、 話したいことが湧き出てくるそうだ。本書では、 カフカ『変身』、 柳田国男『遠野物語』、 神谷美恵子『生きがいについて』の3冊をすみずみまで読んだうえで、 それぞれの名著のエキスパートと再び向きあい、 語りつくす。
専門家と伊集院光が語り合うとき起きるという「ビッグバン的な〈無知との遭遇〉」とは─。本と人生を語りつくす、 100分de語りきれない名著対談。
本文より
伊集院「どんな本が好きですか」と聞かれて「カフカの『変身』ですね」と答えたら、 なにか意味ありげに聞こえるのも、 そういうことでしょうね。 でも、 先入観を取り除いて読めば、 けっこう多くの人が「俺の話」になると思うんです。 起き上がりたいんだけど、 背中が丸くカーブの付いた甲殻みたいになっちゃっているから起き上がれないというあの感じも、 学校行かなきゃダメなんだけど、 行けない感覚に通じているんですよ。 たぶん鬱になったことのある人、 登校拒否や出社拒否になったことのある人ならその感じがわかる。 行こうと思えば行けるはずなのに行けない、 という感じが一気に入ってくるんです。
川島 記録で残っている限り、 カフカ自身は鬱や不登校、 出社拒否の経験はないと思います。 ただ、 彼は起きたくない、 起きたくないとひたすら思い続けていた人です。 表面としてはエリートで、 いい暮らしをして、 社会人としてまっとうに生きてきているわけですけど、 朝はいつも起きたくない、 仕事に行きたくないと思っていて、 たまにずる休みもしていた。 それは彼の日記や手紙を見るとわかります。
目次
■川島隆(京都大学准教授)と語る、 カフカ『変身』
──“虫体質な僕ら”の観察日記
・『変身』は「俺の話」だ!
・境界線の上のカフカ
・窓のある部屋に閉じこもりたい
・翻訳のむずかしさ
・キレる妹
・コロナ禍でみんなが虫になった
・リンゴは何を意味している?
・安定恐怖症のカフカ?
・どこかにある“虫の世界”
・文学に謎解きは大事じゃない
・生きていることが苦しいときに
■石井正己(東京学芸大学教授)と語る、 柳田国男『遠野物語』
──おもしろかなしい、 くさしょっぱい話たち
・柳田国男は何を切り、 何を盛ったか
・孤高のテキスト
・河童の子殺しと伏せ字
・河童が本当にいると信じさせる仕掛け
・寒戸の婆の曖昧さ
・ザシキワラシが家の盛衰を決める!
・『遠野物語』への評価
・現代版『遠野物語』は何を描くか
・死者との出会いで立ち直っていく
・魂の感覚
・「平地人をして戦慄せしめよ」
■若松英輔(批評家、 随筆家)と語る、 神谷美恵子『生きがいについて』
──人生の締め切りを感じたとき出会う本
・悲しみや苦しみに共鳴する弦
・観察した途端に見えなくなること
・パラアスリートに抱く感謝
・生血がほとばしり出すような文字
・名著に出会うタイミング
・自分がしたいと思うことと義務との一致
・生きがいの誤用
・コロナ禍の話
・待つことではじめて見えることがある
・亡くなった人の尊厳
・自分の言ったことを本当にしていく
・自分が好きなものに社会性をもたせる
・生きがいって何ですか?
・人生の締め切り