児童書出版社、 株式会社岩崎書店は、 「わたしは しなない おんなのこ」(作・絵:小林エリカ)を、 2021年8月25日に発売。
今をより良く生きる為に、 より深く死を見つめてみよう。女の子は死にたくないと、 それを歌にした。 ねずみ、 猫、 ノミ、 ウナギ…みんなが歌い継ぎ、 歌は生き続けた。 アンネ・フランクの言葉に着想を得た著者初の絵本作品。
「闇は光の母」シリーズについて
死について想いをめぐらすことは、 生きることについて考えるのと同じこと。 このシリーズでは、 言葉を使い、 人の多様な営みを表現している作家たちに、 様々な角度から「死」について考えていただき、 絵本に仕立てていく。 文字通り、 足元がぐらつくような、 不安な時代を生きていく子どもたちの生きる力となるシリーズ。
シリーズ名の名付け親! 詩人の谷川俊太郎さんによる推薦文
死を重々しく考えたくない、 かと言って軽々しく考えたくもない、 というのが私の立場です。 死をめぐる哲学的な言葉、 死をめぐる宗教的な言葉、 果ては死をめぐる商業的な言葉までが氾濫している現代日本の中で、 死をめぐる文と絵による絵本はどんな形でなら成立するのか、 この野心的な企画はそれ自体で、 より深く死を見つめることで、 より良く生きる道を探る試みです。 谷川俊太郎
小林エリカ コメント
私は子どものころ、 死んで、 忘れ去られ、 失われてゆくことが、 怖くてしかたありませんでした。 そんなとき、 私はたまたまアンネ・アンネフランクの『アンネの日記』を読みました。
そこには、 こう書かれてあったのです。
「わたしの望みは、 死んでからもなお生きつづけること!」
実際、 その日記はいまなお読みつがれ、 アンネはその望みどおり、 書くことによりいまなお生きつづけていました。
私はそれを読み、 深く感動しました。
そして、 いつか私も作家になりたいと夢みました。
いま私はアンネが死んだ年をとおに追い越して、 すっかり大人になりました。 あの頃の私とおなじ年になりつつある、 子どもさえいます。
私は懸命に書き、 書き続けてきました。
けれど、 どんなにがんばっても全ては書ききれない。
そうして過去を振り返ると、 これまでも歴史書や本に書きとめられることなく失われてしまった膨大なひとりひとりの人生や時間があることに、 私は気がつきました。
そこには、 アンネのように書いた、 書いたけれど失われてしまった、 あるいは書かなかった、 書けなかったひとりひとりが、 いたはずです。
けれど失われてしまったその人生が、 その時間が、 大切でなかったとは、 決して私には思えないのです。
人は私もふくめ、 いつかみんな死んでなくなります。
けれど、 たとえその生が、 忘れ去られ、 失われてゆくものだとしても、 いつかだれかが私の、 私たちの声を見つけてくれるのではないかと、 私は心のどこかで信じています。
だから、 いま、 私は耳を澄ませて、 聞いてみたいと思うのです。
ずっと遠くの、 あるいはすぐ近くの、 だれかの声を、 だれかの歌を。
小林エリカ