“映画を語る”配信番組「活弁シネマ倶楽部」に、『パンケーキを毒見する』の内山雄人監督が初登場。映画評論家の森直人が番組MCを担当し、映画ジャーナリストの徐昊辰をも迎え、シニカルな鋭い視点で作られた、かつてない“政治バラエティ映画”についてのトークを繰り広げている。
本作は、間もなく公開となる吉田恵輔監督最新作『空白』や、『ヤクザと家族 The Family』に『MOTHER マザー』、『新聞記者』『i -新聞記者ドキュメント-』などを手がけるスターサンズが製作したドキュメンタリー。現在の日本の内閣総理大臣である菅義偉の素顔に迫るものだ。ナレーターに俳優の古舘寛治を迎え、現役の政治家や元官僚、ジャーナリスト、そして各界の専門家が、「菅義偉」という人物について語り尽くしている。またそれだけでなく、これまで表に出てこなかったような証言や、過去の答弁も徹底検証。とはいえ本作は、いたずらに意義を唱えたり、スキャンダルを暴こうとする政治ドキュメンタリーではない。作品全体に見られるブラックユーモアや風刺アニメを愉しみつつ、多角的に浮き彫りにされる菅政権の実態や、現在の日本について思考することを促すものとなっている。
そんな本作の企画のはじまりについて内山監督は、「河村光庸プロデューサーから『この菅さんという人物の正体を暴いて欲しい』という話を持ちかけられたんです」と語っている。「依頼の段階では、『一人の監督に断られた。そこで内山監督にお願いしたい』と言われたのですが、実際に完成してマスコミ試写会を実施した際、挨拶のために河村さんと登壇したんです。そのときに『6、7人の監督に断られて……』とおっしゃっていて。『いやいや、僕が聞いていたのと違いますよ』って(笑)」と、監督依頼を受けた際のこと、そして完成当時のことを監督は振り返っている。映画として扱うテーマがテーマなだけに、やはり尻込みしてしまう人は多いのかもしれない。企画が進んでいく中で、「選挙に影響を与える映画を製作したい」という思いも生まれたのだという。
本作の製作期間は約150日。製作開始から5ヶ月足らずで完成に至った。森が本作の製作の方法論について『華氏911』や『華氏119』などとの類似点に言及すると、「最初からマイケル・ムーア的なものだと言われていたわけではありません。僕はテレビの人間なので、映画監督の方々の『半年での製作は難しい』という考えでなく、半年でやるべきことは何なのか。制約の中でやるべきことは何なのか、という訓練をずっとしてきました。同時に、僕は報道の人間じゃないので、すごいスクープを探すことなんてできません。ある種、素人から見た『菅政権とは何なのか?』ということを描こうと注力しました」と監督。さらに「とにかく、政治を面白く、笑えるようにできないか、ということを最初から思っていて。そういった方向性は、たしかにマイケル・ムーアと似ているところがあるのかもしれません」と続けている。
またこのトークでは、中国出身である徐の発言にも注目だ。日本に生まれ育ったわけではない者の視点からの、ある種の客観的な意見が興味深い。監督は、政治に関心のある若者たちの反応や、映画好きの学生たちの反応についても語っている。