映画『鳩のごとく 蛇のことく 斜陽』製作発表記者会見が行われ、主演の宮本茉由をはじめ、安藤政信、白須慶子、岡元あつ子が登壇し、これから製作する意気込みを語った。この日は、原作者・太宰治の桜桃忌ということもあり、ゆかりの地である三鷹での会見となった。
故・増村保造監督と、当時助監督を務めていた近藤明男監督が、40年以上前に二人で書いた脚本で、ついに映画化することになった本作。最初に挨拶に立った 永井正夫プロデューサーは、太宰治の命日である桜桃忌に製作発表が行われたことについて「桜桃忌のこの日にこの機会を持てたことを嬉しく思います」と挨拶し、秋からのクランクイン本作の製作に至った経緯を説明し、「秋からクランクインし、来年の今頃には、ご覧いただけるようにスタッフ一同、頑張っていきますので、ご協力をお願いします」と作品成功に向けての協力を呼びかけた。
次に、太宰治が原作を執筆した地であり、亡くなった場所でもある三鷹市の河村孝市長は、会見の前に太宰を墓参したことに言及し「雨の中でも大勢の方が全国から集まっていらっしゃり、太宰治は未だに人気があるんだと実感しました。この作品が見る方の心を揺さぶるんではないかと思っています」と作品への期待を寄せ、「地元の市長として応援していきたい」と語った。
念願だった作品の映画化について近藤監督は、「幻の企画と言われていた作品を手がけられることがうれしく、10月のクランクインにむけ、素晴らしい才能の発見となった宮本茉由さんと、彼が太宰を演じたら数年は誰も太宰を演じる俳優がいなくなるのではと思う安藤さんを起用できた」と主要キャラクターである二人の起用に自信をのぞかせた。
主人公のかず子役で今回初の映画出演かつ主演を務める宮本は、「まだクランクイン前なので、実感がないですが、撮影が楽しみです」と初めての映画現場への期待を語り、「初主演なので純白にしました」と清純を思わせる白いワンピースで登壇し、作品への意気込みを感じさせた。
主人公の想い人であり、昭和を代表する作家である太宰治が自らをモチーフにしたと言われる上原を演じる安藤からは、「撮影前で、まだ上原役を掘り下げていないので適当には言えないですが、エールをこめて蜷川実花監督の「人間失格」には勝ちたいです!」と友人である蜷川監督の作品をライバル視した発言が飛び出した。
上原の本妻・亜津子役の白須からは「実は作品の中では、本妻なのに安藤さんとは絡みがないと今朝告げられました」と作品の脚本が気になる発言も。最後に、本作で女給・みわ子役を演じ、三鷹市出身でもある岡元あつ子は「こういう難しい時代に新しい作品を生み出せることが嬉しいですし、三鷹で発表できることがこの上ない喜びです」と出身地と映画との縁を語った。
また、宮本が「バラエティで見る印象と作品で見る印象が違うなと思っていましたが、今日お会いして素敵な方だなと思いました。」と安藤の第一印象を語ると、安藤は「恵比寿駅にある、宮本さんのチョーヤ梅酒の看板を見ていて、素敵な人だなと思っていました。今回共演するというのは不思議な縁ですね。」と今回の顔合わせに先立って宮本に注目していたことを明かした。
また会見に先立って三鷹市のゆかりの地と多くのファンとともに太宰のお墓参りをしてきたという白須と岡元は、「お線香をあげて、この映画の成功を祈ってきた(白須)」「太宰の作品は若い方に響くものがあるんだろうなと思った。太宰作品を愛している方にお届けできるようにしないといけないと思った」(岡元)と語った。また安藤も「愛に溢れた人、愛に溢れた小説だと思います」と太宰と原作への敬意を語った。
最後に、「これからクランクインを迎えるということで、さらに撮影が楽しみになりました。もっと「斜陽」の島崎かず子を研究して、役に入り込見たいと思います。」と初主演映画へのさらなる意気込みを語った。
映画初主演となる宮本、安藤など豪華な顔合わせで、作品への期待が高まる会見となった。本作は、10月17日より五所川原にてクランクイン、来年6月中旬の公開を目指す。
Live Info.
映画「鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽」
「人間は恋と革命の為に生まれた来たのだ」女主人公のこの結論は、世俗に必死に抗議する<詩人・太宰>の姿でもある。古い道徳とどこまでも争い<太陽のように生きる>道ならぬ恋につき進んでいく25歳のかず子。最後の貴婦人の誇りを持ちながら結核で死んでいく母。体に流れる貴族の血に抗いながら麻薬と酒に逃げ破滅していく弟。そして太宰自身を投影した無頼な生活を続ける売れっ子作家上原。終戦直後の荒れ果てた東京・本郷の屋敷は人手に渡り、再出発を願う一家が移り住んだ西伊豆の別送を舞台に物語が大きく動く。1947年に出版され“斜陽族”と流行語にもなった「斜陽」執筆から75年の時を経て、2022年に全国公開される。