ハリウッドの映画音響にフォーカスした世界初のドキュメンタリー映画『ようこそ映画音響の世界へ』[8月28日(金)より、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、立川シネマシティほかにて全国順次公開]の公開を記念して、8月25日(火)に放送作家の町山広美をゲストに招いたトーク付き試写会が下北沢のカフェサンデーブランチで開催された。
本作『ようこそ映画音響の世界へ』は、世界的に活躍する映画監督たちや、『スター・ウォーズ』(1977)などを手掛けたベン・バート、『地獄の黙示録』(1979)などで知られるウォルター・マーチ、『ジュラシック・パーク』(1993)などに携わったゲイリー・ライドストロームといった映画音響界のレジェンドを始めとした、その道のペシャリストたちへのインタビューと共に、“音”が映画にもたらす効果と重要性に迫っていく感動と興奮のドキュメンタリー。
町山はまず本作について、音が映画においてどのような役割を果たしているか分かりやすく知ることができると述べ、観賞後は映画館で映画がより観たくなると熱い感想を語った。続けて、普段聞こえている音にどのような工夫を施しているか今まで以上に注目するようになるため、映画館で映画を観ることがより楽しくなるとも語った。
さらに自身が特に音の存在を感じた映画として、ジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』を挙げる。当時学生だった町山は、恐怖のあまり画面を直視することができず、音だけを聞いていたという。ゾンビが人を食べる“ムシャムシャ”という音が特に印象的で、あまりの恐怖に最後まで作品を見ることができなかったとのこと。後に改めて作品を観た際はあまり怖く感じなかったとのことだが、音がもたらす効果と人の想像力のすごさを感じるエピソードだったと笑顔で語った。
新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、ハリウッドでは4割ものスタッフが失業する事態となっているが、同じような状況が1960年代にもあったと語る町山。当時のハリウッドは逆境を跳ねのけてさらに躍進することになるが、今回も最悪の状況を乗り越えた先には何か新たな変革が起きるのではと期待の声を寄せられた。また、本作に登場する音響技術者の声が全員良い声で印象的だったと笑顔で語り、説明も聞きやすかったと述べた。
続けて本作をぜひ中学校の授業で流してほしいと語り、様々なプロフェッショナルの活躍が分かるお仕事映画にもなっていると評価。トークショーの中盤、人間の五感で最初に感じるのは“音”であり、最後に感じるのも“音”であると語った。自身の母親が亡くなる直前、兄であり映画評論家の町山智浩が声をかけると一時的に心臓の波形が反応したと、当時を思い出しながら語る場面も。
続けて屋久島で空間と音の関係を感じる印象的な体験をしたとも語る。バス停でバスを待っていたところ、ほうきを掃く音が聞こえ、すぐそこで掃かれていると感じたが、実際にはかなり遠いところで掃かれていたという。都会の喧騒がなく、静かな場所ならではの体験だったと驚きの表情で語られた。
終盤にはこの映画を観た後にぜひ観て欲しい作品として、フランシス・フォード・コッポラ監督の『カンバセーション...盗聴...』などを挙げた。最後に試写会に集まった観客に向けて、映画館でもう一度本作を観て欲しいと熱く語り、イベントは大盛況のなか終了した。
商品情報
映画『ようこそ映画音響の世界へ』
監督】ミッジ・コスティン
【出演】ウォルター・マーチ(『地獄の黙示録』)、ベン・バート(『スター・ウォーズ』)、ゲイリー・ライドストローム(『ジュラシック・パーク』)、ジョージ・ルーカス、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・リンチ、アン・リー、ライアン・クーグラー、ソフィア・コッポラ、アルフォンソ・キュアロン、クリストファー・ノーラン、バーブラ・ストライサンド
2019年/アメリカ/英語/94分/カラー/ビスタ/5.1ch
【原題】Making Waves
【提供】キングレコード
【配給】アンプラグド
8月28日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
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