撮影:佐山 順丸 インタビュアー:モモコグミカンパニー 構成:吉田 大助
作家・村田沙耶香氏の最新短編集『丸の内魔法少女ミラクリーナ』が2月29日に刊行されることを記念して、 楽器を持たないパンクバンドBiSHのモモコグミカンパニーさんとの初対面&初対談がカドブン誌上にて実現。 グループの楽曲の作詞を手掛けエッセイ本も出版している モモコさんは、 村田さんの大ファン。 愛情や質問を、 村田さん本人にグイグイぶつけていただいだ。 その対談の一部をご紹介。
村田さんの小説は、 自分の代わりに、 誰かを殴ってもらえるような気持ちになるんです。 (モモコ)
モモコ: 私はBiSHというグループで活動をしているんですけど、 ステージにいる時の自分は本当の自分じゃないような気がしています(笑)。 普段は本を読んだり、 文章を書いたり、 静かにじっとしているほうが好きなタイプなんです。 村田さんの本もすごく好きでいろいろ読ませていただいているんですが、 「このお話を書いた人に会ってみたい」って、 人生でほぼ初めて思いました。 他の小説を読んでいる時は、 作品は作品だし、 書いている人自体にはそこまで興味を惹かれることはないんです。 でも、 「村田さんってどういう人なんだろう、 頭の中はどうなってるの?」とずっと気になってしまっていたので、 今日はお会いできて本当に嬉しいです。
村田:私もお会いできて嬉しいです。 ありがとうございます。
モモコ:お会いしたらめちゃくちゃきれいな人だから、 感動しています。 男性目線な感じで見てしまって、 すみません!
村田:いえいえ、 本を手に取っていただけて本当に光栄です。 最初は、 何を読んでくださったんでしょう。
モモコ: 『消滅世界』です。 芥川賞を受賞した『コンビニ人間』も好きだったんですが、 一番印象に残っているのは『地球星人』。 あまりに衝撃的で、 面白いから読み進めたいのに、 読めない。 読んでいるこちらの心も体も痛くなってきて、 何度も本を閉じたくなりました。
村田:わかります。 私も『地球星人』を書いている時は、 辛くて何度も書くのをやめたくなりました(笑)。
モモコ:今度の新刊も読ませていただいたんですが、 性別を表に出すことが禁止されている「無性教室」は、 『消滅世界』とちょっと繋がっているのかな、 と思いました。
村田:そうですね。 この本に入っている4本の短編の中で、 一番古いものは「丸の内魔法少女ミラクリーナ」で2013年の夏、 一番新しいものは最後に収録した「変容」で、 去年の夏に発表したんです。 1冊の本にまとめるまで間が6年あいてしまったんですが、 そのおかげで、 自分はずっと同じようなことを考え続けているんだなって気付けましたね。
モモコ:「丸の内魔法少女ミラクリーナ」は『地球星人』とちょっと繋がっている部分がありますよね。 でも、 最後まで本を閉じようとする気持ちにならず、 楽しく読めました(笑)。 主人公は33歳になっても魔法のコンパクトで魔法少女に変身して、 会社の残業とかをやっつけるじゃないですか。 こういう丸の内のOLさん、 結構いそうだなって思いました。 現実の自分を保つための「変身」ですもんね。 現実で笑顔でいるために、 現実とは違う自分の世界を持っている。 ちゃんとした人だなって思います、 ミラクリーナは。
村田: あの短編は雑誌の「ヒーロー特集」で書いて欲しい、 という依頼だったんです。 ヒーローというかヒロインが、 自分の空想世界を誠実に愛していて、 ちゃんと人を救うような小説にしようと思って書いたものなので、 『地球星人』の地獄みたいな展開には行かずに済みました(笑)。
モモコ: 私は普段小説を読む時は、 主人公の気持ちに自分を寄り添わせて、 「この小説の主人公が頑張っているから、 私も頑張ろう」とか思ったりするんですけど、 村田さんの小説だけはちょっと位置付けが違うんですよね。 ガツンと殴られる、 みたいな。 同時に、 自分の代わりに、 誰かを殴ってもらえるような気持ちにもなるんです。
対談全文は、 文芸WEBマガジン「カドブン」にて公開中。
【後編】2月26日(水)公開予定
『丸の内魔法少女ミラクリーナ』発売記念「表題作をまるごと試し読み」企画
『丸の内魔法少女ミラクリーナ』の発売を記念して、 本日2月21日(金)から2月25日(火)まで毎日配信で、 「表題作をまるごと試し読み」企画をスタート。 また、 試し読み企画は同時にニュース閲覧アプリ「スマートニュース」(スマートニュース株式会社)の「読書」チャンネルでも展開される。
◆文芸情報サイト「カドブン」
サイトURL: https://kadobun.jp/
◆「スマートニュース」公式サイト: http://about.smartnews.com/