80年代前半、 社会現象ともいえる活躍を見せた「T.C.R.横浜銀蝿R.S.」。 革ジャン、 リーゼントで登場した彼らは、 不良だけでなく、 普通の中高生のハートをもつかみ、 ビッグヒットを連発、 アイドル並みの人気を獲得した。
しかし、 その活動は実質3年強でピリオドを打った。 ‘83年の解散後はオリジナルメンバー4人が揃うことはなく、 それぞれの人生を歩んできた。その「T.C.R.横浜銀蝿R.S.」が2020年、 「横浜銀蝿40th」として1年だけの期間限定で活動を再開。本書は、 それぞれが自らの道を歩んでいた「空白の37年」を赤裸々に語り下ろした書籍となる。
しかしこの本では、 彼らを「アラ還の不良のカリスマ」としてとらえはしない。あれだけ突っ張って芸能界を駆け抜けた彼らが、 活動休止になってからの長い時間、 どんな人生を過ごしてきたのか、 むしろ等身大の男としての姿を掘り下げていこうという試みだ。ある者は体を壊し、 ある者は法を犯して収監され、 またある者はサラリーマンとしての葛藤に苦しみ……ままならないそれぞれの時間は、 決してきらびやかでなく、 かっこよくもないかもしれない。でも、 その正直な姿やエピソードこそが、 かつてのファンだけでなく、 多くの同世代の人たちの共感を呼ぶ。
そして「誰も知らない時間」を持ち寄った4人が、 再びバンドとして同じステージに上がる。そんな「奇跡」は多くの人の憧れでもある。音楽だけではない。野球でもいい、 演劇でもいい、 ただ仲間と過ごした教室の時間でもいい……誰しもが持つ「あの頃」に戻れる瞬間を多くの人が求めている。この本はそんな人たちに向かって編まれている。
1年限定の彼らの活動を、 昔のファンはもちろん、 彼らになじみのなかった多くの人にも楽しんでもらうための、 参考書となる1冊だ。