高橋幸宏と林立夫のふたりが、9月29日(日)に東京・銀座プレイス common ginzaで行われたトーク・イベントに登壇。BEAMS RECORDSの青野賢一の進行のもと約60分に渡ったトークで集まった120人のオーディエンスをわかせた。
このイベントは8月21日にリリースされた「YUKIHIRO TAKAHASHI LIVE2018 SARAVAH SARAVAH!」の購入者の中から抽選で選ばれた120人のファンが招待された。同作品は昨年、11月24日(土)に東京国際フォーラム・ホールCで行われたライブを収録したもの。これは高橋幸宏が高橋ユキヒロ名義で1978年6月21日に発表したソロデビュー作「Saravah!」のヴォーカル・パートのみを再録音し2018年10月24日に発表したアルバム「Saravah Saravah!」を、収録曲順通りに演奏した一夜限りの再現コンサート。
ゲストで登壇したのは1978年のオリジナル盤に参加し、昨年のライヴにもドラマーとして参加した林立夫。二人の出会いは高橋の高校生の頃にまで遡る。細野晴臣を介して出会ったふたりは、好きなドラマーとして互いに双方の名前を上げるほど、リスペクトし合う仲。付き合いも半世紀近くに及ぶ。林の最初に会ったユキヒロの印象は、遠くから見るとちょっとイヤな奴風で、声をかけづらい雰囲気だったという。一方、幸宏は林のドラムを『叩き方がスタイリッシュ!ずっと、いいなぁと思って見ていた』そうで、林は『センスが良くて個性的な数少ないドラマー』と讃える。その後、音楽以外のプライベートでも共通の話題で意気投合し、現在まで交遊が続く無二の友だ。
高橋ユキヒロのソロデビュー作「Saravah!(1978)」は当時ユキヒロの中にあった欧州的な指向を具現化した作品。林はこのアルバムにパーカッションで参加しているが、どちらかというとアメリカ音楽に近いスタンスにいた林を、ユキヒロはフランシス・レイの武道館公演やフランス映画に連れていきヨーロッパのイメージを共有したという。
高橋幸宏、林立夫のふたりはドラマーゆえ、両者の共演は少ないが、林は1978年10月にYMOのステージに参加していた。『コンピュータに合わせて叩くというのは馴染みがなく、 ちょっとやり辛かった』そうで、もっとも印象に残ってるのが衣装。YMOがタキシード着用と聞いて、タキシードを持ってなかった林はそれに近い秋冬もののジャケットを着てドラムを叩くことになる。この共演で覚えているのは、ジャケットを着てて暑かったぐらい!と話して、会場から笑いを誘っていた。
昨年、11月に行われた「Saravah!」完全再現ライブに林はドラマーとして参加した。当時、ユキヒロが叩いたドラムのフレーズをそのままプレイした。林にとっては、リスペクトの気持ちを持って完全再現し演奏したが、『変なフレーズ叩くなぁこの人は! 完コピするなんて言わなきゃ良かった』と後悔したとこぼし、会場を和ませた。この流れで話題は昨年の「Saravah!」再現ライブに及ぶ。M04「C'EST SI BON / セ・シ・ボン」ではシャンソンなのに、リズムはレゲエ。ステージで再現するにあたりユキヒロは『これをやるのは、僕にとっては未知の領域。 40年前は凄いことやってたんだなぁ』と感慨深け。
また、M05「LA ROSA / ラ・ローザ」は、とにかく演奏が難しかったそう。それゆえ、演ってる方も気合が入り、特に後半のメンバー全員のグルーヴ感が凄かった!とユキヒロは思い返す。
坂本龍一作曲によるM07「ELASTIC DUMMY/エラスティック・ダミー」では録音時、坂本は間奏で超絶的なキーボードを弾いた。せっかくの名演なので本番にも残そうと、この部分は当時の音源をHDで出した。このパートがあるため、メンバーはHDに合わせての生演奏することに。ステージにこそいないが1978年の坂本龍一と時空を超えた共演というエピソードも披露された。
演奏者にとっても苦難の連続であった「Saravah!」完全再現ライブ。高橋は『40年前に背伸びして、様々な事に挑んだアルバムでしたが、あのコンサートでようやく完結できたかなと思います』と感無量気味に振り返ってトークを締めた。
「Saravah!」完全再現ライブは2018年11月に東京、2019年5月に福岡の野外フェス「CIRCLE 19」で行われた。林は『(完コピに)ようやく慣れました(笑)。次回はもう譜面なしでやれると思います。叶うなら、もう1回はやりたいですね!』と話し、ファンに期待を持たせた。
最後に観客から80歳になったらどうしてますか?という質問にユキヒロは『僕は今、67歳ですが、かつて細野さんは65歳ぐらいまでは頑張れると言ってました。その細野さんは72歳でムチャクチャ元気(笑)。きっと僕も物理的に無理というところまではやってると思います。』と生涯現役宣言で応えた。