『氷獄』対談 撮影/橋本龍二
株式会社KADOKAWAは、 新作『氷獄』の発売(2019年7月31日刊)を記念し、 著者・海堂尊とココリコ・田中直樹による対談を文芸情報サイト「カドブン」にて公開となった。海堂尊のデビュー作『チーム・バチスタの栄光』が刊行されたのは2006年。 本作から始まった<桜宮サーガ>シリーズは2015年にいったん閉じられたが、 今回、 その中では描かれなかった物語が4作収録された作品集『氷獄』が刊行された。
表題作はなんと『チーム・バチスタの栄光』のキーパーソン、 麻酔医の氷室貢一郎(ひむろ・こういちろう)の<その後>を描いた物語。 2008年に公開された映画「チーム・バチスタ~」で氷室役を演じた、 ココリコの田中直樹さんとのスペシャル対談が実現。 映画の思い出、 氷室に対する思い、 今回の『氷獄』について、 存分に語っている。そんな対談の冒頭を少しだけお届けする。続きは文芸情報サイト「カドブン」にてお楽しみいただきたい。
舞台挨拶の言葉
──お二人は2008年公開の映画『チーム・バチスタの栄光』のときにお会いになっているんですよね。
海堂:もう10年以上前なんですね。
田中:最後にお会いしたのは舞台挨拶でしたね。
海堂:田中さんが舞台挨拶でおっしゃった言葉でよく覚えているのは「麻酔医という仕事は本当に大変なので、 みなさん、 そのことを考えてください」とおっしゃっていたことです。 おっしゃいましたよね。
田中:はい。 言いました。
海堂:本当にこの方は麻酔医になってるんだなあ、 と。
田中:先生とお会いしたのは撮影のときと舞台挨拶の数回、 短時間でしたが、 麻酔科の先生の少なさをうかがいました。 それが自分の中で印象深かったんですね。 患者を救う医師を救ってください、 と先生がおっしゃっていたことをよく覚えています。 僕が演じた氷室も麻酔医として1日に何件も手術を掛け持ちしている。 忙しいスケジュールの中で仕事をしているということが心に残っていました。
海堂:麻酔科の先生ともお話しされたんですか。
田中:ええ。 撮影に入る前に、 撮影チームで手術の現場を勉強させていただく機会がありました。 患者さんの許可をとって。 目の前で手術が行われる現場を初めて見ました。 意外だったのはみなさん、 すごく落ち着いていたこと。 イメージとしては、 一分一秒を争うような慌ただしい現場じゃないかと思っていたので。 もちろんそういう現場もあるでしょうけど。
海堂:慌ただしいのは映画やドラマの中だけですね。 緊急手術のときでも、 決してドタバタはしませんよ。 「血を持ってこーい!」とかはないですね(笑)。
田中:すごく冷静に行われているんだな、 とびっくりしたと同時に、 安心したのを覚えています。 たとえば、 自分が手術を受けるときにもお医者さんたちは平常心なんだなと思うと。
海堂:田中さんのようにいろいろな場所で発信できる方に、 医療現場のことを理解してもらえるのはありがたいことです。 だからこそ、 舞台挨拶のときに「麻酔医は大変なんです」とおっしゃっていただいたことは嬉しかった。
田中:僕は先生が、 すごく優しく声をかけてくださって、 いろんなお話をしてくださったことが印象に残っています。 小説が扱っているシリアスなテーマとはまた異なる印象でした。 物腰がやわらかく、 温かい方なんだなと。
海堂:とくに田中さんには気を遣ったんです。 登場人物の中でも氷室貢一郎という一番の問題児を演じていただいたわけですから。
田中:問題児。 たしかにそうですね。
海堂:この人は怒らせちゃいけないな、 という役ですから(笑)。 そういう難しい役をきちんと演じていただいて感謝しています。
この続きは、 「カドブン」にて。
【前編】8月1日(木) https://kadobun.jp/talks/102/636e4882
【後編】8月2日(金)公開予定
対談 取材・文 /タカザワケンジ 撮影/橋本龍二