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【ライブレポート】5月12日・代官山UNIT/FC FiVE LAST TOUR

2012.05.30

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FC FiVE LAST TOUR
5月12日(土)代官山UNIT
FC FiVE / Bane / kamomekamome / Hawaiian6 / MEANING / CLEAVE


 夏日のようなカラッとした天気だった。渋谷駅に着くと、首にスカーフを巻いてコートで身を固めた人がいるかと思えば、ミニスカートに白肌の美脚をさらした女性の姿も見かけた。暑いけれど、風は涼しい。そのどっちつかずの気候は、今日の心情に似ていた。興奮と哀切な感情がにらめっこしている。渋谷から代官山行きの電車に乗ると、目の前のカップルが旅行用の無料パンフレットを読んでいた。その表紙に大きな文字で「贅沢な瞬間」と書かれていた。ああ、自分もその瞬間を見届けに行くんだと思い、スイッチを一気に切り替えた。

 FC FiVE(以下FC)が12年間の歴史にピリオドを打つ解散ツアーは、残すところ2デイズ(ファイナルは彼らの地元・茨城にて)となった。今日は都内最後の公演となり、別れを惜しむように多くのバンドが集まった。

120512fukano_s-0721.jpg 開演時刻15時半、トップはHAWAIIAN6が務める。1曲目『THE LIGHTING』から哀愁満載の全力疾走ぶりにいきなり胸をえぐられる。観客も真正面から音を受け止め、ド頭から大暴れしていた。「ここに立ちたい人は一杯いたと思うけど…もう観れないので楽しみましょう!」と、いつもと変わらずHATANO(Dr)は男臭く語りかけた。MEANINGは『THE UNBROKEN HEART』の中盤、初の日本語詞を用いた語りパートを「僕の大好きなFCが自由を教えてくれた」と言い換えたり、また、彼らの最新CD+DVDのドキュメント部分はFCのDVDに触発されたと告白し、さらに「ずっと背中を見てきた、ハードコアのあるべき姿…」とリスペクトをストレートに吐露する様にグッと来てしまった。CLEAVEもそれに続き、「FCが切り拓いてきたシーンを絶やさず、海外でも勝負できるバンドになり、恩返ししたい」と力強く宣言し、猛々しいハードコアを掻き鳴らす。次は旧知の間柄にして盟友と言えるkamomekamomeの出番だ。嶌田(Dr←彼はほぼ常にFCのTシャツを着用するほど、いちファンだった)のありったけの気持ちを込めたカウントから、ケイオティックな怒涛のハードコアを叩きつける。「怒るだけじゃなくて、心で演奏する…楽しんで演奏することをFCから教わった」と向(Vo)は零していたが、確かに結成当時の彼らは内側へ閉じていた。2ndアルバム以降、聴き手を見据えた活力漲る音へとシフトした。その祝祭感漂うヘヴィな音像に心底シビれた。

 ここからFCと親交が深かった海外バンドが続く。この日出演予定がなかった豪産のMILES AWAYが急遽10分ほどプレイした後、米産のBANEにバトンを託す。初っ端からAaron(Vo)はステージ下に降り、観客と同じ目線で煮えたぎった咆哮をかます。それを切れ味抜群の図太い演奏が援護し、フロアを沸点に導いていた。

120512fukano_s-0426.jpg それから転換に45分ほどかかり、ジラしにジラされ、時計の針は20時28分を指すと、会場右サイドのスクリーンにFCの軌跡を辿る映像と共に、THE DOORSの映画『地獄の黙示録』にも使用された『THE END』が歌詞付きで流れた。こちらの興奮を爆発寸前まで高めると、TOMY(Vo)、HIROTO(G)、TOKU(B)、KIMURA(Dr)の4人が都内ラストのステージに立ち、イントロ『ENTER』が針の一刺しとなり、『EVOLVE』に移ると、会場は騒乱状態となった。序盤の『STOLEN THINGS』では早くもぶっといグルーヴを放出し、でっかいサークルピットを生み出していた。途中でMILES AWAY、BANEをゲスト・ヴォーカルに招き、スペシャルなハードコア・パーティーを展開する場面もあり、TOMYは彼らに対する感謝の意も忘れずに述べていた。これも海外を渡り歩いてきたFCだからこそ成し得る光景であり、海を超えたハードコア・ユニティの絆の強さを痛感した。終盤の『MY STRIFE』で遂に僕の涙腺は崩壊し、『JADED HOPE』から本編ラストの『COME TO THE END』の流れには完全降伏となった。そして、個人的なハイライトはアンコール一発目の『DANDELIONS BULES』である。演奏前にTOMYは「雑草のように強く生きてきた。その気持ちをみんなと共有してもらいたくて作った」と説明していた。この歌詞は“DANDELIONS”(=タンポポ)のように踏まれても踏まれても逞しく生きろ! というメッセージ性と共に、壮大なスケール感と荒ぶるダイナミズムを叩きつける曲調で、時空を超越した生命力溢れるサウンドを解き放つ。WアンコールではFCが日本のハードコアを聴くきっかけになったバンド・SWITCH STYLEの元メンバーであるKENZO(現kamomekamome)とYURI(現NUMB)をゲスト・ヴォーカルに招いて『TRUTH HAS GONE』を熱演し、最終曲『WATCHING THE SKY』で大団円を迎えた。21時44分、TOMYは「また会おうぜ!」と挨拶し、メンバー全員ステージ袖へと消えていった。

 過去に何度もFC FiVEが海外バンドを凌駕するド迫力のライヴを見せられ、体中が震えるような感動を味わってきた。世界を相手にしてきた日本屈指のハードコア・バンドは、その12年間の歴史に幕を閉じた。その終わりは…同時に始まりの鐘を激しく鳴らしていた。さあ、俺たちも始めなければいけない。何でもいいから、始めようじゃないか!(TEXT:荒金良介)

Photo by Terumi Fukano

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