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11月9日(火)下北沢440〈橋本・F・高橋〉ライブ・レポート

2010.11.15

橋本・F・高橋にはお茶とミカンと漫画本がよく似合う
〜橋本・F・高橋ライブ・レポート〜

“440 (four forty) presents”KAT/星羅/橋本・F・高橋
11月9日(火)下北沢440 (four forty)
文:石川 愛(web Rooftop)
写真:saito mayumin

IMG_000.jpgIMG_001.jpgお茶とミカンが恋しい季節に一歩踏み込んだ11月9日、下北沢440にて、とあるイベントが執り行われた。
弾き語りの「星羅」が、女の子の柔らかい恋心をしっとりとメロディに乗せ、続けて「KAT」が違った目線からの女の子の気持ちを高らかに歌い上げる。

私は、その日のトリをつとめた「橋本・F・高橋」なる3人組が気になった。
開場入りのシュールすぎるSEに関しては言わずもがな、まずはその容貌。皆一様にキャラ物の衣装を纏い、エレアコを抱えた髪の黒い、橋本と名乗る女性は、昭和の漫画家を思わせるようなベレー帽などを被ったりしている。
「はて…なにやら大物の気配だが…どーれ、今日はアコースティック・ライブのようだし、ここはゆっくり…」と椅子に深く腰を落とした。と、同時に私はにんまりと笑ってしまった。
彼女たちが「橋本・F・高橋のテーマ」を歌い出したのである。
私は、「バンド名+のテーマ」という曲をライブレパートリーに取り入れてくるバンドに目がない。そして「バンド名+のテーマ」という曲には、喧しい音が似合うと思っていたのだが、まさかアコースティックの柔らかいライトの中で、楽しげに歌われるとは毫も思っていなかったのだ。
歌い終わり、拍手。
聞けばこの3人、初舞台がフジロックフェスティバル。なんと今回が2回目のライブだとか。
最初のうちは「なーに、初舞台が大舞台だろうと、新人は新人だァ」などと高をくくっていたのだが、「橋本・F・高橋」の全員が、とんでもない歌唱力の持ち主であることがすぐに判ったものだから、私はなぜかソワソワとした気持ちになり、落ち着きなく座り直したり、ハンカチで意味もなく手を拭いたりしていた。
演奏側も緊張していたのか、若干張りつめた感のある面持ちで言うカウント、「せーの」は、聴き手のこちら側にとって、何故かとても新鮮なものであると感じたのは私一人ではあるまい。

IMG_002.jpgIMG_003.jpg1曲歌い終わり、MC。
「えーっと…、別バンドがやってる曲ですけど…いや、オリジナルです!」と言い張っていたが、どのような含蓄があったのだろうか。それに関する発言がある度、会場からは笑い声があがっていた。
パーカッション(別ユニットではドラムを担当しているらしい)の高橋に対し、ベース(別ユニットでもベースを担当しているらしい)のFが「タンバリンで息があがっておる。アコースティックの諸先輩方を見習いたまえよ」と叱責するシーンなど見受けられ、会場内がどっと明るく揺れた。
途中、Fがピアノを弾き、高橋がクラリネットを吹く曲なども有り。
多才な人たちだ、と驚かされる。
途中、ピアニカのチューブがぺろっと外れる、といったアクシデントの後、高橋が「発表会とかね、先生の前だと、なぜか外れるのよね」と呟いていたのが、やけに印象的であった。
立ち位置を変更している間に橋本が「あのー…」と何か言いかけ、「いっか」と話すのをやめてしまう。それに対し高橋が「橋本はそういうところが多々見受けられる」と咎める。
オーディエンスは会話を聞き漏らすまいと静かになる。そこにFの一言、「盛り上がってもらっていいですか?」
もはや「お察しください」のオーラを放つのを諦めた彼女の発言に、私もつい、笑ってしまった。

IMG_004.jpgIMG_005.jpg結婚の幸せに胸を膨らませる優しい歌や、背伸びする歌、コンクリート・ジャングル東京に於ける自分の小ささなどを歌い上げること全6曲。
橋本・F・高橋の、アコースティックならではの良さが全面に押し出された、とても密度の高い30分間であった。

最後には当日出演した全員でセッション。
「独特の、新鮮な雰囲気」を楽しむイベントとしては100点満点だったのではなかろうか。
因みに彼女たちの音楽活動は、今日までのライブ回数からもお察しいただける通り、リリースなどは一切なく、出演予定のイベントも11月11日(木)の風呂ロック@弁天湯以外決まっていないという。
ちらりと聞きかじったのだが、ここだけの話、別ユニットでも活動しているそうなので、どうにかして調べたら、またどこかで彼女たちに会えるかもしれない。
私は帰り道、不思議と耳に残る「橋本・F・高橋のテーマ」を歌って歩いた。寒さが故に早歩きがだんだん楽しくなり、走り出した足が止まらなくなったのは言うに及ばない。
寒い寒い冬、ヘドバンやポゴダンスが止まらない音楽もいい。勿論、鍋をつつくのもいいだろう。だが、時にはこのように落ち着いたアコースティックの音こそ、心に暖かいのではなかろうか。
橋本・F・高橋には、お茶とミカンと漫画本がよく似合うと思った。

IMG_006.jpgIMG_007.jpgIMG_008.jpg

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