四季の魅力に魅せられたー「季節によって、吹く楽器も変えないといけないんだよ。」どこか嬉しそうに語る表情がとても印象的だった。

トランペッターとして坂本龍一や浅川マキを始め、数多くのミュージシャンと共演して来た彼が、"都会から得るものはもうない"と、大自然の中でのソロ演奏"地球を吹く"を始めたのが1993年。マッキンレー、マチュピチュ遺跡、富士見高原など、あらゆる自然の中で演奏を行って来た。

冬の到来さえ感じさせる冷たい雨が降りしきる新宿、午後7時。トランペットと言われて想像するあらゆるものをひっくり返す、唯一無二の音がそこに広がった。エレクトロやノイズ、かと思えばオーケストラがそこにあるかのような音の広がり。あっという間に音の波に飲み込まれていく。

やがて訪れた静寂に、ここが新宿であることを思い出したオーディエンスに、ハスキーな声で訥々と語り始める。「映像になってしまうとどうしてもフラットになってしまうのが残念なんだけど。」自らのDVDをしてそう語った言葉を体現するかのような、その空間を全て味方に付けた演奏が続く。窓の外の喧騒さえも。

音楽業界の衰退が取りざたされる昨今だが、人間にとって、風や波、いつもそこにある音が音楽を奏でている。五感で音楽を楽しむほど贅沢なものはない。そんな余韻を残した夜だった。

Naked LOFT. しまだかずよ

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