ピアノ・インストシーンのトップランナーとして活動する ADAM at(アダム・アット)。テレビやラジオのテーマ曲を多数手掛け、数多くの音楽フェスにも出演するなど、インストシーンの普及に力を注いでいる彼が2017年から活動しているサイド・プロジェクトが"DJ ADAM at"で、来たる2023年4月26日、はじめて"DJ ADAM at"名義でのアルバム『百物語』がタワーレコード限定盤としてリリースされる。収録曲はこれまで ADAM atとして発表してきた人気曲を中心に、本作品のために制作された新曲を含む7曲。そしてリミックス&リアレンジには、Schroeder-HeadzやDJ OKAWARIら著名アーティストが参加しているという豪華作品だ。
今回はじめてRooftopのインタビューに応えてくれた ADAM atこと玉田大悟氏には、"DJ ADAM at"とアルバム『百物語』について中心にうかがいながら、本当に様々なお話を、ライブのMCさながらの楽しいトークを交えて聞かせていただいた。[Interview:たまきあや(下北沢Flowers Loft)/ Photo:ニイミココロ]
コロナ禍で増えたDJ ADAM atとしての活動
──DJ ADAM atとしての活動は以前からずっとされていたわけですが、このタイミングで音源としてリリースしよう、ということになったのはどんな経緯だったんでしょうか?
ADAM at:DJ ADAM at自体、2017年ぐらいからやってたんですけど、基本的に一人で鍵盤を弾きながら、CDをターンテーブルに入れて。自分の曲を知り合いにリミックスしていただいて、ピアノをマイナスワンして、それに合わせて楽器を弾いて、曲の繋ぎをDJでやって…みたいな感じでやってたんですよ。時期的には長かったんですけど、コロナ禍もあってライブ本数が減ったりもして、とはいえライブがしたいと。ただ、うちはメンバーがサポートなので、たとえばサポートとスタッフで、お世話になったライブハウスに行くときに、けっこうなカロリーを使うんですよね、経費という名のカロリーを(笑)。とはいえ、行かないと我々のことを忘れられてしまったりだとか、たとえば知り合いのライブハウスが困ってるときに行くのも大事かなと。じゃあそのときに何かないかなって思ったときに、「そういえば俺一人でやってるし」って。そんなかたちでね、DJ ADAM atとしての活動が増えたんです、コロナ禍で。それこそ配信もインスタライブなんかでやったりして、ライブハウスには行けないんだけど、画面越しにでも、自分が今こういうことやってるっていうのが伝わればいいなと思って活動してるうちに、ありがたいことに音源化を望む声が高まりまして。昨年もADAM atとしてのリリースはあったんですけど、まだまだコロナ禍ではあったので、ライブは単発が多かったんですよ。今はね、ある程度落ち着いてるんですけど、そのときは「来年ももしかしたらライブ本数を絞ってやらなきゃいけないんじゃないか」と思ってて。それじゃあDJ ADAM atとしていろんなところへ行けたらいいなと。でも、もし回るんだったら何かしらのものを持って回ったほうがいいなと思って、音源化を望む声もあったりした中で、ビクターさんに相談して今に至る、というかたちですね。
──なるほど。リリースをするからツアーを回るのではなく、ツアーを回るためのリリースなんですね。
ADAM at:これはMCとかで冗談風に言うと、二毛作ですね。
──あははは! 両方で儲けようと(笑)。
ADAM at:そうです、そうです。冬場は白菜しか作ってないですけど、やっぱりね、同じ野菜をずっと土壌で使うと栄養が抜けるらしいので、じゃあ夏場はキュウリも作ろうかな、みたいな(笑)。
──うまいなぁ(笑)。
ADAM at:拙い知識ですけどね(笑)。
──音源化を望む声が多かったっていうことなんですけど。今回の音源は、いろんな方にリアレンジ、リミックスをしていただいてるということなんですが、それはもともとDJ ADAM atとして活動している段階から…?
ADAM at:いや、そうではないですね。
──今回のリリースに向けてやっていただいたということなんですね。
ADAM at:そうです。一番最初に始めたときは、札幌のRETRO FUTUREってバンドにリミックスを作ってもらってて。自分で宅録をするようになってからは、見よう見まねで自分でリミックスをやったりもしてたんですけど、自分の曲を第三者が聴いたときにどういう解釈をするかっていうのもちょっと楽しみで。それで、親交のあるミュージシャン、Schroeder-Headzの渡辺シュンスケさんであったり、DJ OKAWARIさんであったり、特に鍵盤をメインにしている方にお願いをしたんです。
──それが私はすごく意外だなと思って。玉田さん自身が鍵盤をメインに弾いていて、楽曲も鍵盤が主旋律で作っていらっしゃるわけじゃないですか。あえて別の人にリミックスしてもらおうってなったときに、鍵盤の人にお願いするんだって、なんだか意外だったんですけど。
ADAM at:そうですね…。ベース飲み会だとかギター飲み会だとかボーカル飲み会だとかってけっこうあるのに、鍵盤飲み会ってあんまりなくて…(意外な返答に一同笑う)。ほんとにないんですよ。
──たしかに(笑)。
ADAM at:まあ、鍵盤人口も少ないですし。でも、こういったかたちでね、音源で鍵盤会みたいな。鍵盤の気持ちって、鍵盤の人にしかわからないところもあったりして。
──なるほど。それであえて、鍵盤をメインで使ってる方だったらどういうふうに解釈するのかな、っていうことなんですね。
ADAM at:そうなんです。特に僕のピアノはテクニックっていうよりもメロディのほうを推してるので、自分の作った曲のメロディを、リミックスされる方はどういうふうに使うのかなというのも楽しみではありましたね。
──なるほど、それはすごくおもしろいですね。