凄く愛らしいなとも思うんです
――これは映画というよりもこの『ポルノグラファー』シリーズそのものについてなんですけど、木島は手紙も小説も手書きで書いているじゃないですか。二人の関係も事故からの口述筆記で始まっているというのも特徴的な部分です。だから、木島がアナログ人間なのかと思っていたらスマホも持っている。
丸木戸:(笑)。
――作中のセリフでも「手書きが疲れたらPCでもいいよ」というものありましたが、手で文字を書くという表現方法をとられたのは何故なんでしょうか。
丸木戸:確かにPCで打てばいいという方法もありましたね。
――そこは無意識だったのですか。今は手書きのものを渡すというのが昔に比べると特別な行為になっていると思うので、口述筆記などは特殊性癖だなと思ったんです。
丸木戸:『ポルノグラファー』の第1話を描いたときは、時代を80年代くらいにしようかなとも思っていたんです。
――確かにその頃であれば手書きも違和感はないですね。
丸木戸:なぜ昔の設定にしようと思ったのか思い返すと、絵にしたときに情緒がないのでやっぱり手で書かせたかったからじゃないですかね。作中に「君の文字が好きなんだ」というセリフがあるんです。字にはやっぱり癖が出てしいますから、そういうところは取り入れたかった部分ではありましたね。
――作品を書く、手紙を書くというのは、ただ文字を書く事から更に感情を乗せて書く行為になりますからね。
丸木戸:そうですね。
――この二人はかなりめんどうな性格じゃないですか。原作者という立ち位置から離れて見た際この二人どのように感じられますか。
丸木戸:四六時中、付き合わなければならないとなると大変だと思いますけど、人としては嫌いじゃないです。長文で自分の日記みたいなメールを送り付けてくるような人いるじゃないですか。木島はそういうタイプかなと思っていて。これをどう返信したらいいのと思う反面、凄く愛らしいなとも思うんです。木島はあそこまで心開いてくれたら、だいぶ付き合いやすくなると思います。大人ってどうしてもカッコつけちゃうじゃないですか、あそこまで心を開くことはなかなかできないので羨ましいですね。
――わかる気がします。セリフに関して言うと、「幸せな人間に文学はいらない」というものも印象的でした。
丸木戸:ちょっとカッコつけすぎてますけどね(笑)。大学時代の先生で実際に言っていた人が居て、その言葉だけ覚えていてそれを使わせてもらいました。
――私は『ポルノグラファー』シリーズの中では蒲生田(郁夫)先生が一番好きなキャラクターなので、好きなシーンの1つです。
丸木戸:嬉しいです。昔はああいうタイプの人は結構いたのかもしれないなと思いながら描きました。映画でも素晴らしかったですよね、私も気に入っている点の1つです。
感性の違いを感じるのも面白かったです
――そこも含めて映像化の正解、お手本のような作品だなと感じました。
丸木戸:そういっていただけるのは嬉しいですね。
――それだけ作品の理解が高い方が作られているんだなと感じました。
丸木戸:私から観ると三木監督の作品だなと思う部分もありました。演出面でビックリすることもあって、そういう感性の違いを感じるのも面白かったです。
――そうなんですね。改めて映画を観ての感想を伺えますか。
丸木戸:本当に漫画を綺麗に映画化してくださったなと感じています。映画ではストレートに二人が思いをぶつけあうシーンが漫画より強く表現されているのが印象的です。劇場版は特に最後の物語の締め方が良かったなと思っています。読み切りで書いた蒲生田先生と対話するシーンを木島と久住の二人が思いを確かめ合った後にちょっとピリッとした感じで持ってきているのが、甘すぎず、辛すぎず、好きですね。
――大人な作品になっていましたよね。
丸木戸:思いがけず始まった映像化の企画がまさかの3作目。自分の中では今も本当に現実なのかなと思っている部分もあります。本当に沢山の方が真剣に向き合って作って下さった作品で、私にとっても大切な思い出です。皆さんにも隅から隅まで味わっていただきたいなと思っています。特に『プレイバック』は原作の段階から映像化というのを念頭に置きながら描いた作品でもあるので、ぜひ見届けて欲しいです。