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INTERVIEW

トップインタビュー兼重淳(監督)- 「水上のフライト」自分も社会の一部だと認識する姿を描けるんじゃないかなと思ったんです

自分も社会の一部だと認識する姿を描けるんじゃないかなと思ったんです

2020.11.04

疑似家族の話にしたいなと思ったんです

――空を飛ぶイメージだったんですね。この作品はチームを作っていく、居場所を見つけていく作品だと思っています。そこは障害のあるなしとは関係なく、誰しもが持っている抱える葛藤ですが、それを描いたのはなぜですか。

兼重:それは最初に土橋さんの台本をいただいたときに考えたことなんです。もちろんプロデューサーの方々に言われた「障害は個性」だというのは大テーマなんですけど、僕の中では疑似家族の話にしたいなと思ったんです。

――それはなぜ。

兼重:それは僕に映画を教えてくださった是枝さんの『万引家族』が疑似家族の話だったので、そのことに影響を受けたということもあります。是枝さんがこういう疑似家族の話をやるんだったら、僕は違う疑似家族の話をやろうと思ったからなんです。

――確かに『水上のフライト』は出てくるみんな、子供たちも含めて一緒になっていく話なんですよね。

兼重:そうなんです。中条さんが演じてくださった藤堂遥というのは身体的なハンディキャップはあるんですけど、出てくる子供たちや杉野さんの加賀も精神的なハンディキャップを持っているので、それを乗り越えていくというのが僕の中での1つのテーマだったんです。

――そこも含めてなんですけど、「障害があることないことは関係ない」という意識を持たれたのは何故なんでしょうか。そこは監督ご自身のパーソナリティの部分でもあると思いますが。

兼重:僕のいとこがボランティア活動をやっているので、小学生くらいから障害がある方とも触れ合う機会があったんです。土橋さんの台本を読んだときに『水上のフライト』は事故で障害を抱えてしまった話ではあるけど、障害を抱えても自分の立場やパーソナルな部分も含めて、今までと関わりあい方が少し変わるだけで、自分も社会の一部だと認識する姿を描けるんじゃないかなと思ったんです。ちゃんとした答えになっているかわからないですけど、この思いをみんなにもわかって欲しいというのがあったんです。

――素晴らしいですね。そこは土橋さんも同じ思いだったんでしょうか。

兼重:そうだと思います。僕自身はモデルになったパラカヌーの選手とは2回くらいしか直接お会いしてはないんですけど、土橋さんがパラカヌーに出会って「障害は個性」なんだということを書きたいと思ったことととても共感しました。

――大変なこと、乗り越えなければならない壁はあるんですけど、努力の描き方もすごくきれいで前向きな姿もよかったです。中条さんもそうなんですけど、大塚(寧々)さんが演じられた藤堂郁子も陰ながら応援している姿から母親の無償の愛も感じ取れました。そこを過剰に演出されているのではなく、さりげなく感じ取れて…。

兼重:それは俳優さんたちが上手だから、そうゆう風に分かっていただけるんです。実は、。お母さんが夜なべして目をこすりながらやっているところとか、加賀が小学校3年生の時に両親が離婚した際にどちらからも引き取られないという回想シーンも撮っていたんですけど、もうなんかいらないかなと思ったんです。みんなさんの演技が素晴らしいから、後でジワッとわかってくれればいいのかなと思ったんです。それは俳優さんが素晴らしいから出来たことですね。

深くその魅力を伝えるお手伝いができれば

――脚本・演出も素晴らしいからさらに相乗効果が出ているんですよ。

兼重:ありがとうございます。

――終盤で遥が帽子を脱いで子供に預けるシーンが印象的でした。心の壁がなくなっていくのが視覚的にも感じられました。

兼重:形見ということではないですけど、心に傷を持っている少女と自分の思いを共有するものが欲しかったんです。なにかないかなと思って、帽子にしました。

――あのシーンも含めてみんなが家族になって乗り越えていくというのを自然に感じ取ることが出来ました。

兼重:俳優のみなさんもそうですが、上野(耕路)さんの音楽の力にも助けられました。訓練が始まるシーンは上野さんじゃなかったら、ロッキーみたいな曲になってたかもしれないんですよね(笑)。

――熱くなれていいですけどね(笑)。

兼重:ピアノをメインにして、遥をイメージした上品な曲にしていただけました。あの軽快な音楽があったからこそ、コケティッシュな感じになったんだと思います。

――この作品は乗り越えていくこと・挑戦していくことの表現としてスポーツを取り入れていらっしゃいますが、スポーツの持つ力・魅力について兼重監督はどのように思われていますか。

兼重:本当にスポーツはノンフィクションで、嘘がなく、ドラマチックなものだと思っています。どんなに物語を丁寧に描いても映画は嘘になってしまいますが、スポーツではそれがないじゃないですか。観ていて手に汗を握るのはそういう部分なのでそこは敵わないなと思うんですけど、だとしたらそのバックグラウンドを描くことでより深くその魅力を伝えるお手伝いができればと思っています。

――確かにそうですね。いよいよこのドラマが公開となりますね。

兼重:はい。どうしてもお願いしたくて、お願いして、お願いして、この『水上のフライト』出演を引き受けてくださった俳優さんがとても素晴らしい作品なので、そこを劇場でご確認いただければと思います。

――本当にみなさんの演技・表情も素晴らしくて、綺麗な作品なので大きなスクリーンで観たい作品でした。

兼重:ありがとうございます。本当に大きなスクリーンで観ていただけると嬉しいですね。

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ノベライズ
「水上のフライト」
土橋章宏(著)

価格:650円+税  発行:徳間文庫

amazonで購入

LIVE INFOライブ情報

映画「水上のフライト」

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11月13日(金)より全国劇場にて上映開始!
 
-staff-
監督:兼重淳
企画・脚本:土橋章宏・兼重淳
音楽:上野耕路
主題歌:SUPER BEAVER『ひとりで生きていたならば』
プロデューサー:遠山大輔、田中美幸
スーパーバイジング・プロデューサー:久保田修
アソシエイト・プロデューサー:小林麻奈実
ライン・プロデューサー:原田文宏
撮影:向後光徳(J.S.C.)
照明:斉藤徹
美術:布部雅人、春日日向子
録音:大竹修二(J.S.A.)
装飾:松尾文子
編集:川瀬功(J.S.E.)
衣装:加藤哲也
ヘアメイク:知野香那子
スクリプター:増子さおり
助監督:渡辺圭太
制作担当:阿部史嗣
協賛:SOMPOひまわり生命保険
広報協力:東京都 TEAM BEYOND 東京パラスポーツプロジェクト
協力:一般社団法人日本障害者カヌー協会
配給:KADOKAWA
宣伝:シンカ
制作プロダクション:C&Iエンタテインメント
製作幹事:カルチュア・エンタテインメント
製作:映画「水上のフライト」製作委員会
 
-Cast-
藤堂遥:中条あやみ
加賀颯太:杉野遥亮
村上みちる:高月彩良
朝比奈麗香:冨手麻妙
藤堂郁子:大塚寧々
宮本浩:小澤征悦 ほか
 
©2020映画「水上のフライト」製作委員会
 
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