ひとりひとりが生きている世界
――映像化されたことで改めて驚いたことはありましたか。
桑原:改めて音楽の力は凄いなと思いました。横山(克)さんに担当して頂き、ほとんどがシーンに合わせて曲を作るフィルムスコアで作曲していただけたんです。
――贅沢ですね、まるで映画じゃないですか。印象深い曲はありましたか。
桑原:第3話の光る龍が現れるシーンで嵐を抜けたときの曲や、第5話の空中海賊のお話の曲が特に印象に残っています。あと、曲ではないんですけど雲の色・空の色が素晴らしいなと感じました。
――確かに。空はどうしても雲と太陽しかないので変化がつけにくいですが、天気や時間で表情が変わっていて綺麗でした。
桑原:吉平監督も単純に朝昼晩という情報ではなく、グラデーションのある空を描くと決めていたらしいです。
――そこはCGの強みかもしれないですね。
桑原:そうかもしれませんね。
――音の話に戻るのですが、キャストオーディションにも参加されたのですか。
桑原:はい。原作者が決めるというよりは、全員で意見を出しあって決めていくという形で進めさせていただきました。
――収録現場にもいかれたのですか。
桑原:はい。挨拶だけして後はお任せしようと思っていたのですが、1回目が楽しすぎて結局全部参加させていただきました。
――原作者の特権ですね(笑)。印象的だったシーンはありますか。
桑原:ベテランの方々が遊んでいるのが面白かったです。この作品はアフレコではなくプレスコだったので、吉平監督が「長くしゃべっただけ出番が増えます」と冗談で言ったら、関(智一)さんが本当にゆっくりためてしゃべって(笑)。
――歌舞伎役者のように(笑)。
桑原:はい。ほかの皆さんも普段のイメージとは違うキャラクターを演じられているので、そこは面白いなと思いました。吉平監督の中でひとりひとりが生きている世界だから、類型的なキャラクターにしたくないという意向があったそうです。だから記号的にならないようにキャスティングしたのかなと思っています。
――素晴らしいです。ここまで熱いファンが集まって制作していると頼もしいですね。
桑原:はい。
――制作現場にも入られ完成品を見られたわけですが、原作に逆輸入したものはありましたか。
桑原:主要4人以外のキャラの性格付けですね。上江洲さんが書き足された部分やディスカッションから発見したものもありましたし、キャストのみなさんの演技を聞いて「このキャラはこういう性格なんだな」と感じて、漫画に反映したものもあります。
――改めて一歩引いてみることでわかることがあったということですね。
桑原:そうですね。上手く把握できていなかった部分を補ってもらえました。
――理想的な原作とアニメの関係ですね。全話見られた感想を伺えますか。
桑原:原作者というよりはファンの1人として見ています。すごく幸福なアニメ化だと思います。
――本当にそうですね。こんなに丁寧に物語を紡いでいる作品は最近ないなと感じました。
桑原:出来る限り詰め込もうと意気込んで作っていただけたので、アニメはかなり濃いものになっています。
――それでいて展開が駆け足になっていないのが凄いですね。
桑原:確かにそこは凄いですね。
――これからTVアニメはクライマックスに向かっていきます。
桑原:こんなクオリティーの高いアニメを観られて、いち視聴者として幸せです。キャラクターの表情・目の演技も含めてすみずみまで楽しんでいただきたいです。