これからどこに行くかが楽しみ
――第二幕の箕輪(豊)さんや第五幕の川尻(善昭)さんなど、過去にご一緒された方が入られているのは共通言語があるからですか。
浜崎:この作品にぴったりのエキスパートの方たちです。キャラクターデザインの小木曽(伸吾)さんも『無限の住人』の大ファンで、彼とは一度がっつりと仕事をしたいなと思っていたので監督を受けたという面もあります。
――小木曽さんのキャラクターデザインは沙村さんのもつ耽美な絵を表現されていて素晴らしいです。
浜崎:ライデンフィルムの現場も頑張っています。アニメーターは役者でもあるので、絵が描けるだけでなく、多方面に審美眼を持ってないと務まらないです。これからの若いアニメーター・演出家にはその点も意識して大きく育ってほしいと思っています。
――そうやって先輩に引っ張ってもらえるといいですね。
浜崎:同時に彼らに私も引っ張ってもらっています。それがあるからこそ監督の仕事を全う出来るわけで。基本的なルールは作りますけど、実際に制作しているのは私以外の大勢のスタッフですから、僕の作品ではないですよ。
――その考え方は目から鱗が落ちます。
浜崎:それは現場に期待をかけているという意味でもあります。やはり現場に期待をかけないと作品は作れないですから。それぞれのスペシャリストと一体感が生まれる現場というのが健康的な現場ですかね。私の仕事は線路の上に列車をのせるまでなので、これからどこに行くかが楽しみでもあります。それが面白い仕事のやり方だと思っています。
――素晴らしいです。
浜崎:ファンの多い作品なので、みなさんそれぞれのイメージはあると思います。そういう意味では緊張感は持ちつつ、でも緊張しているだけでは固苦しいものになってしまうので、現場で即興的なアイデアを取り入れ、 “アニメーション作品として自由に”を意識しています。そこは現場力しだいですね。そして一緒に作った人たちをリスペクト出来る瞬間を見つけるのが喜びです。
――その思いはフィルムからも伝わってきています。これから先の配信が楽しみです。