ULTRA VYBEとP-VINE という二つのレーベルを跨いで行われるダブルリリース、そして11月5日に新宿LOFTで開催されるリリースパーティー。このアクションがどのようにして為されたのか。またふたつのアーティストが一つの部屋で曲を作ることで生まれたエピソードや、そこから学んだこととは。対談していく中で見えてきた彼らの共通項などもいくつかのキーワードと共に紐解いていこうと思う。[interview : 佐藤慧(@sato_live_)]
tomodati ニューリリース"今夜悪いことしよう"
──まずtomodatiの新曲「今夜悪いことしよう」には「全部嘘みたいな街で僕らだけが唯一マジで」や「僕らだけの法律を作り遊ぶ」といったリリックがありますが、このような曲の雰囲気やモードになったのは何かきっかけのようなものがありましたか?
中村むつお(tomodati):元々、この曲は一見ラブソングに聞こえるけどそれだけではなくて。思春期の「クソが!」みたいな気持ちを夜の街に持ち込んで「ぶっ壊してやろう!」みたいに思うんだけど、何もできないみたいな経験はみんなあると思うんです。そういう部分も歌いたかった。でもそれだけだとロマンティックではないので恋愛にも捉えられるような、どっちにも取れる展開にしています。だから思春期っぽい気持ちでも、恋愛の気持ちでもどちらでも歌えるし、tomodatiは結構そのような、聴く人によって答えの違う曲の作り方をしています。
──その展開の後に「そうさ僕たちじゃ世界は変わらないそんな僕たちは僕たちを変えれるんだ」「今夜悪いことしよう」と続きますね。
中村:3.11以降、世界がどんどん孤立し始めて個人主義の世界になっていっていると思っていて、それはインターネットにも反映されている気がします。でもオレは2020年、この先はみんなが繋がろうとすることがすごく重要だと思っています。その「悪いこと」が一体どういうことなのか、それが悪いことじゃなくてもみんなで繋がる、そこが大事だと思います。そんなシリアスな歌になっています。
パブリック娘。ニューリリース"あいつはクールガイ"
──誰かに対しての負けん気や、ある種ディスとも取れるようなリリックになっていますが、これはどういう気持ちから生まれましたか?
文園太郎(パブリック娘。):これはね…特に思いはないです(笑)。
中村:製造過程が特殊でね…(笑)。
文園:トラックをむつおさんから10パターンくらいもらって、メンバーと先にスタジオ入った時にうまくラップを乗せられず…「ま、どうにかなるっしょ!」とそのままむつおさんの家に行ったんですね。
中村:オレもそれは聞いてなかったから(笑)。トラックをどんどん流したんですよ。その中でひとつ、ファンキーで、LL Cool Jっぽいトラックがあって。それをみんなで流しながら話したんですよ。
文園:それを流しながらみんなで、「この曲はどういう曲なんだろう」って話したんですよ。男が歩いてる…みたいな。「男として生まれたことについて書きたい!」って清水くんが言い出して、そしたら今までずっと黙ってた辰也くんがいきなり目を開いて「クールガイだ。」って言い出して(笑)。「誰が?」「あいつがクールガイ」っていう話になって、そっから一時間くらいで作りました。それが「あいつがクールガイ」です(笑)。
中村:だからパブリック娘。がクールガイを、見てる奴らなんですよ。
──「あいつがクールガイだ!」って(笑)。
中村:それで最後にオレがクールガイとして登場する(笑)。どれだけクールガイっていうのはリリックを見てもらえばと思います。
文園:だからコラボ感も出てよかったですよね。パブリック娘。だけで曲を作っていたら、クールガイは出ないまま曲終わってたかもしれないけど、最後に「あ!こういうことか!こいつがクールガイだったのか!」ってなる。
中村:パブリック娘。はやっぱりリリックが面白くて、パンチラインもたくさんでましたね(笑)。特に「クール戦車」…一体どういうことなんだ…
──パブリック娘。とtomodatiで作った曲だからこそ生まれたリリックがあるのでしょうね。
文園:最近は、楽曲を作る時に遠隔でやり取りをしているとうまくいかないなと思う部分は結構あって。トップダウンでやろうと思えばできるっちゃできるけど、みんなの意見が入ったものを作りたい、それをするにはどうしたらいいかっていうのはありましたね。そんな中で今回はパブリック娘。とむつおさんとで4人で集まって話したら10分でできましたね。
中村:オレは初めてそういう曲の作り方をしたから、その中で見えてくるものはありました。
tomodatiとパブリック娘。の共通項
──今回そのようにしてレコーディングを行っていく中でわかったtomodatiとパブリック娘。の共通点などはありましたか?
中村:オレはね、これ一つあるんだけど「少年ジャンプ感」だと思う。
一同:ああ〜〜(笑)
文園:いいこと言いますね。
中村:一見こうジャンルも違うようで、似ている部分も見つけづらいんだけど、お互いレンジが広いんだなって感じがありますね。そしたらリリースパーティーに出てくれる永原真夏さんもNEO CREAM CITYも確かに少年ジャンプに出てそうですよね(笑)。
文園:あとは結構tomodatiもパブリック娘。も歌を引き立てる部分が似ているかもしれないですね。
中村:そうだね。tomodatiもジャンルとしてはJ-POP、歌モノであって。子供も口ずさめるメロディだけど、音はクラブミュージックにするところは目指していますね。
文園:あとはグルーヴが似ているな、と思うところが多かったですね。
中村:「ちょっとまって!このシンセ入れてみよう」とかね(笑)「これめっちゃよくねえ?」とか言って。
文園:むつおさんの曲の作り方とパブリック娘。の曲の作り方がマッチしたのは結構よかったな、って思います。
中村:やっぱりバンドとは少し違う所作、みたいなものはありました。
──今回のダブルリリースはtomodatiとパブリック娘。別々のレーベルでしたが、その実現についてはいかがですか?
文園:昔はよくレーベル関係なくリリースとかも行われていましたけど最近はあまりないですからね。
中村:今ってどこもムラを形成してしまいがちだし、垣根もあると思うんですけどそこを乗り越えてリリースできたのは良かったです。
──最後に11月5日に新宿LOFTで行われるダブルリリースパーティについて意気込みをどうぞ!
中村:「少年ジャンプ感」も出しつつこれを機に今後お互いのライブにも出演していきたいです。
文園:客層も意外と被っていないので、お互いのお客さんが出演するアーティストに興味を持ってくれたらいいなと思います。