「ブギーポップ以降・ブギーポップ以前」という言葉が存在するほど大きな影響を与えたエンタテインメントノベル『ブギーポップは笑わない』。多くのフォロワー作家を生み出した名作が20周年を迎えアニメ化。今なお多くの読者を魅了する今作のアニメはどのように制作されているのか、その一端をお話していただきました。[interview:柏木聡(LOFT/PLUS ONE)]
「作品に対する思い」のギアは、“いつでも全力”という一個しかないですね(笑)
──お忙しい中お時間いただきありがとうございます。よろしくお願いします。
福士:TVアニメ『ブギーポップは笑わない』でアニメーションプロデューサーを担当させていただいてます、福士裕一郎です。よろしくお願いします。
──一口でプロデューサーといってもいろいろな形がありますが、福士さんはどういった形で現場を支えられているのですか。
福士:私はアニメーションプロデューサーとして絵や音響に携わるスタッフのアテンドをしたり、現場がスムーズに回るように予算やスケジュールの管理をしたりして、最高の状態で放映できるように映像を完成させる仕事をしています。
──アニメーションプロデューサーとしてこの作品に対する思いを伺えますか。
福士:今までの作品もそうですが、毎作品いつも、原作・アニメ化企画・制作現場に全力で向き合って制作してますので、今回も「作品に対する思い」のギアは、“いつでも全力”という一個しかないですね(笑)。
──その全力のおかげで私たちファンが素晴らしい作品を見ることができるのでとてもありがたいです。『ブギーポップは笑わない(以下、ブギーポップ)』といえば、「ブギーポップ以降・ブギーポップ以前」という言葉ができるほどの大きな衝撃をライトノベル界に与え、『Fateシリーズ』の奈須きのこ、『物語シリーズ』の西尾維新など多くのフォロワーを生んだ名作ですが、今回のアニメ化に際しプレッシャーはありませんでしたか。
福士:プレッシャーについても、いつも変わらず持ってます。
──過去の映像化とどうしても比べられてしまう面もありますから、さらにプレッシャーも大きいのかなと思っています。
福士:今作品については、『20年前の原作を知らない世代により向けて』という企画意図も命題の1つとしてあるので、新しい挑戦としてのプレッシャーが強いですね。
──過去のアニメはオリジナルストーリーだったので、原作エピソードとしてのアニメ化は初めてですものね。20年を迎える作品ということなので、現場は世代的にもストライク世代が中心スタッフに多いのではと思いますが。
福士:原作を知っている人もいれば、参加が決まってから読んでもらっている人もいる感じですね。制作現場の雰囲気も、相変わらずとても忙しくしています!(笑)
お願いしたいこと・目指して欲しいことを話し合って進めてます
──お忙しい中お時間いただいて本当にすみません(笑)。『ブギーポップ』は特に読み手によって見え方が違ってくる作品ですが、どのように意思統一をしているのですか。現場の雰囲気もお伺いさせてください。
福士:忙しさだけだと辛いので、制作意図を共有して、各スタッフにお願いしたいこと・目指して欲しいことを話し合って進めてます。人手不足ですから、参加してもらえるスタッフがいるのは有難いことです。いろいろな持ち味がそれぞれありますので、みんなで集まって制作するのは楽しいし、刺激的だなと感じてます。
──お互いに刺激しあってということですと、活性化しますからとても良い雰囲気で作られているんですね。コミックナタリーのインタビューでは“宮下藤花/ブギーポップ役”の悠木(碧)さんが、「あえて若いキャストを選んでいる理由がちゃんとあるなと感じました。」とおっしゃられていましたが、キャストのみなさんはどのように選ばれたのですか。
福士:メインのキャストは、オーディションで決めさせていただきました。あとは、音響スタッフとキャラクター性を説明・相談をしながら進めている形ですね。悠木さんの別媒体でのインタビュー内容で、「日常の中にある異質さ」「フィルムのリアルさ」について話しくれています。キャスティングも含め、キャラクターの髪型や服装、美術や色彩、撮影とそこは意図してあると思います。
──そういった面でも先ほどの『原作を知らない世代より向けて』という企画意図を意識しているということなんですね。なかなか具体的には共有しづらい感覚ですが、キャストの皆さんにはどのように伝えられたのですか。
福士:キャストさん、音響チームに方向性を示し共有するため1話のアフレコまでに絵完パケさせたものを用意し、意図がしっかりと伝えられるようにしました。
──最近は絵コンテを撮影したものを使ってのアフレコも多いと聞きますから、大変だったんじゃないですか。
福士:そこがしっかり共有できないと演技にブレが出てしまうので、頑張りました。2話以降は皆さんの想像にお任せします(笑)。
とても見ごたえのある映像になっていると思ってます
──そこは制作が進む中でこだわりが出ると予定通りにはいかないですから(笑)。皆さんなら大丈夫だと信頼しています。とはいえ1話をアフレコに間に合わせて制作しつつ、さらにPVはこのためだけに作られた映像でハッタリだということですが、忙しい中このような仕掛けをしたのはなぜですか。
福士:ティザーPVについて、聞いて頂けて嬉しいです。さすがロフトさん! いろいろな思惑があって作ることになったのですが、『ブギーポップ』の世界観表現、映像の指標となるよう制作しました。
──視聴者にも世界観を伝えるための仕掛けの1つだったんですね。
福士:当時、夏目(真悟)監督とキャラクターデザインの澤田(英彦)さん、設定制作の川野(麻美)さんと4人だけでプリプロしていたので、久しぶりに制作進行の仕事をして、高まりましたね。もちろん疲れましたけど!(笑) …という状況だったので、演出は夏目さん、作監は澤田さんで作っていて、原画で参加してくれた人たちのことを是非紹介させていただきたいので、機会を用意しようと考えてます。本編に参加している人から、ティザーPVだけ参加の素敵なスタッフ陣になってます。
──是非、伺いたいです! アニメ本編も2月に入り、まだまだ物語もここからとなりますが、可能な範囲でこれから先の展開について伺うことはできますか。
福士:この記事が出るのが2/1(金)とのことなので、放送時期としては最速で『第6話:イマジネーター編3』の放送日ですね。今回、取材いただく経緯にもなったのですが、7話でライブハウスのシーンが出てきます。作業に際して、柏木さんに相談してLOFTを参考にさせてもらいました。
──お話しをいただいたときはまだアニメ化が発表される前で、私もストライクの世代なので高まりました。お声がけありがとうございます。
福士:ありがとうございます(笑)。4~6話で、イマジネーター編のキャラクター・シチュエーションが見えてきて、7話以降でドラマもキャラクターの感情も一気に動いていきます。とても見ごたえのある映像になっていると思ってます。また、今後いろいろなエピソードがあり、たくさんのキャラクターが登場しますので、是非注目して欲しいです。
──本当に楽しみにしています。改めてこれからの放送を楽しみにしているファンの皆さんにメッセージをお願いできますか。
福士:原作からのファンの皆様には、上遠野浩平先生監修のもとでシリーズ構成を進めたことを楽しみにしていただきたいですし、TVアニメからのファンの皆様にも、より多くの人に少しでも楽しんでもらえるよう、参加してくれているスタッフともども制作に励んでおりますので、どうかご視聴のほど宜しくお願い致します。