今年の4月に新メンバー2人を迎え、ますます勢いを増すBray me。昨年は話題となったSHELTER UNITEDのコンピレーションアルバム『下北沢ガールズコレクション』にも参加し、9月にはニューミニアルバム『GOOD LUCK』を引っさげ全国をめぐるツアーもはじまり、SHELTERとしても目の離せない期待のバンドである。今回は結成当初からのメンバーでVo./Gt.のこたにに話を聞いた。[interview:義村智秋・安佳夏(下北沢SHELTER)]
自分は何がしたいのかと考えた時に
──Bray meは昨年無料配布したSHELTER UNITEDのコンピレーションアルバムに参加していただいて、そのときのライブはメンバーふたりとサポートでやっていましたが、今年に入ってGt.イトウアンリとBa.さいとうゆきが加入して4ピースになりました。メンバーチェンジが割と多かったという印象も受けますが、新メンバーのイトウさんとさいとうさんはどういった繋がりだったんですか?
こたに(Vo./Gt.):多いですかね…?(笑) でもバンドを組んでから1人目が抜けるまでは長かったですよ。そこからちらほらという感じですね。イトウアンリはもともと長野の伊那でSALEDっていうバンドをやってて、共通の知り合いだった埼玉のmumscratchっていうバンドに紹介してもらったんです。「めっちゃいいバンドいるから紹介したいんだよね」って。その時Bray meは岐阜のライブが決まってて、対バンに好きなバンドを連れてきていいよって言ってもらえてたので、SALED呼んでみようと思って連絡したのが始まりですね。岐阜で初めて一緒にライブをやって、SALEDがめっちゃかっこよくて。SALEDも女子4人で同世代でやってたから親近感も沸いたし、アンリはすごくかっこよくて一緒にやりたいなと思ったから誘いました。さいとうゆきは、去年の10月にベースがやめた時に、やめた2日後くらいに関西遠征があって、その時は2ピースで行ったんですけど、京都のひなたになったってバンドのボーカルが、「めちゃめちゃかっこいいベーシストいます」って紹介してくれて。さいとうゆきがもともといたバンドのPVをその場で見たらすごくかっこよくて、ライブも見に行ってみたらやっぱりかっこよくて、まずはサポートからお願いしたんですよ。でも、1回スタジオ入って、その場ですぐにサポートではなくてもう入って欲しいってお願いしました。ふたりともそんな感じでしたね。2ピースになったことによって自分は何がしたいのかって考えたとき、そのふたりとありさとバンドをやりたい、って思ったんです。女で同世代だからふたりを選んだっていうよりも、そのふたりだから一緒にやりたいなと思って。
──女子同世代のバンドで、よく「ガールズバンド」と称されることもあると思いますが、「ガールズバンド」という括りについてはどう思いますか?
こたに:バンド始めた時から、「ガールズバンド」っていう言葉があること自体がおかしいなと思ってて。そう言うんだったら「ボーイズバンド」があってもいいのに、そうは言わないじゃないですか。女でも普通にバンドやっていいじゃんって思いますね。「ガールズバンド」って言われて、別に女だし否定はしないけど。昔は「ガールズバンドって言われるの嫌だ」ってすごく執着してましたけど、今はもうどうでもいいというか、そのくらいの言葉にはなりつつあります。昔ほどは引っかからない。そうなっちゃうのもわかるんですよ、衣装とか喋ること決まってたりとか。見せ方は大事だと思うけど、そう言うのにこだわらない女の子のバンドは「ガールズバンド」じゃなくて「バンド」だと思ってますね。
新しいバンドをやってる感覚
──4月に現メンバーに落ち着いて、バンドとしての変化はありましたか?
こたに:え〜、めちゃめちゃある(笑)。まずすごくにぎやかになりましたね。地方への移動はハイエースなんですけど、2人のとき、サポートメンバーは現地調達することが多かったのでハイエースの後ろガラガラで意味なかったんです(笑)。メンバーが増えて車内がにぎやかになったっていうのと、あと個人的にライブの見方が結構変わったかもしれないです。今までもかっこいいライブを見たらテンション上がってたけど、対バンとかもどちらかというと後ろで眺めてる方だったんですよ。でもさいとうとアンリがけっこうガヤガヤしてるタイプで、それが結果的にイベントを良くしてることがあって。自分もふたりに巻き込まれてガヤガヤして、前より自然体でライブを見れるようになりました。あとなんだろうな〜、曲も、曲作りもすごく変わったし、どちらかというと変化というよりは新しいバンドやってる感覚に近いかもしれないですね。
──今年の5月に、今のメンバーになってから初めてリリースされたシングルのタイトルが『1st』ということで、バンドとしてはファーストではないはずなのにこういうタイトルがついていたところから、バンドが新しくなった、または生まれ変わったというような意識があるのかなと感じていました。
こたに:いやなんかもう、その通りです(笑)。タイトルとかテーマを決めてあの3曲が揃ったわけではなくて、先にあの3曲を録ろうってなってて出来上がってからタイトルを決めたんですよ。そのとき、「start」だとなんかちょっと違うかなと思って。案はいくつかあったんですけど、今のバンドとして1枚目、「1」っていうのをすごく大事にしたかったですね。
過去の自分へのエール
──9月13日にニューミニアルバム『GOOD LUCK』がリリースとなります。やはり新しいメンバーですぐにアルバムを作りたかったという感じでしょうか。
こたに:『1st』を出したあと、とにかく早く次の音源が出したかったんです。それでメンバーで相談してて、あれも入れたい、これも入れたいってやってたらアルバムのボリュームになっちゃったんですよね。アルバムを作ろうとしてたっていうより。今回のアルバムでは新曲は2曲で、その他は既存の曲をアレンジし直したものなんですが、今も新曲はけっこう作ってますね。
──『GOOD LUCK』というタイトルに込めた意味は?
こたに:曲を録り終えてから決めたタイトルで。前の4人からやってた曲も入ってるし最新の曲も入ってるので、入ってる曲の期間が長いアルバムになっているんです。「過去」と「今」と「未来」的なところを歌ってる曲たちが集まって、「過去」の自分に、ちゃんとさよならをできたアルバムになったんじゃないかなと思っていて。生きてれば良くなっていきたいなと思っていて、過去の自分に別れを告げられた瞬間というか…。恋人とかだとわかりやすいかもしれないですけど、恋人に限らずなんでも人と別れた瞬間って、その瞬間はちゃんと別れられてないって思うんですよね。片方がひきずってたり。ちゃんと別れられるのって相手の幸せを願えた瞬間かなって。今回のアルバムを作ったことで、過去の自分としっかり別れができたなと思えたんです。それで、『GOOD LUCK』。ある意味では過去の自分の幸せを願う『GOOD LUCK』です。
──歌詞はこたにさんが書いてるんですか?
こたに:私です。みんなそれぞれ、自分のパートを自分でやるっていう形で作ってますね。
──歌詞のインスピレーションはどんな時に沸きますか?
こたに:よく、「降ってくる」とかいうじゃないですか。わたしそれ全然なくて(笑)。ひたすら、考えるっていう感じですね。次の日、続きからやりたいなって思ってもそこまでいくのに時間がかかるんですよ。歌詞は結構時間かかりますね。
──4人になって曲作りも変わったと先ほどおっしゃっていましたが、いま曲作りはどういった風に進めていますか?
こたに:歌を大事にしたいバンドなので、基本的に歌と構成とコードがあって、そこにみんなが自分のパートをつけていくっていう感じですね。あとはそれを元にスタジオで、「もっとこうしたほうがいいんじゃない? 」ってやって実をつけていく感じです。
──『GOOD LUCK』の中で手こずった曲はありますか?
こたに:3曲目の「ROSE ROAD DANCE」と、6曲目の「フィンガークロス」はレコーディングの1週間前くらいになってできた曲で、結構ギリギリだったので焦りました。手こずったというより、ヤバイ、って思ってました(笑)。結果的にはすごくいいアルバムになったので、ぜひ聴いて欲しいですね。もしよかったら他の人にも勧めて欲しいです。
それぞれの背景を持って今一緒にバンドをできるということ
──メンバーチェンジを経て、Bray meはライブがいま1番いいと感じます。とても楽しそうになったと思うし、それはやはり新しく入ったメンバー2人の影響が大きいですか?
こたに:う〜ん、単純にいますごく楽しいですね。他のメンバーが楽しそうだから楽しくなるとかじゃなくて、楽しいなと自分がすごく思う。それは2人が入ったからもそうだし、みんなそれぞれバンド解散したり、メンバーが抜けるっていうことがあったり、みんなそれぞれいろいろあったけど音楽を続けてきて、いま一緒にできてるっていうのがすごく嬉しいのかなってライブ中に時々思ったりします。
──9月13日のSHELTERから、ミニアルバムのレコ発ツアーが始まります。初日の対バンにANABANTFULLSとソウルフードを選んだ理由は?
こたに:前からすごく好きで。ANABANTFULLSとソウルフードがどっちも出てるライブ見て、その場で声かけました。選んだ理由…う〜ん、かっこよかったからですかねぇ。
──結構、地方に行ってると思うんですけど、好きなところとかありますか?
こたに:伊那! GRAMHOUSEっていうライブハウスがあるんですけど、あそこマジやばいですよ。聖地みたいな。アンリの地元なんですけど、アンリがもともと働いてたライブハウスでもあって。客層が中学生からその中学生の親くらいの層までいて。近所の飲み屋みたいなアットホーム感がすごくいいんですよね。それがすごく面白いので伊那は好きだし、大事な場所になりました。
常に前を向いていられるように
──9月13日のライブのBray meのバンドとしての意気込みをお願いします。
こたに:……頑張ります、しかないですね(笑)。その日から会場限定で『GOOD LUCK』発売なので、CDがお客さんに渡る瞬間の方がドキドキするかもしれないです。
──ツアーファイナルもSHELTERでワンマンということで、SHELTERに始まりSHELTERに終わるツアーになるわけですが、どんなツアーにしたいですか?
こたに:ツアーってモチベーションすごく大事だなと思っていて。疲れたりとか、ましてや女4人だし。でもみんないろいろ乗り越えていてる分、常に前を向いていられるようなツアーにしたいなとは思ってます。気持ちが落ちても、ちゃんとそれをすぐに、今やるべきことはなんなのかとかを考えて、常に前を向いて、1本1本のライブを更新したいですね。そういうツアーにしたいです。
──今後のバンドの目標や展望は?
こたに:フェスとかにも出たいし、「売れたい」っていうのは常日頃メンバーと言ってるんですけど。ケータリング食べたいっていうのが目標ですかね。(笑)。あとは、届くべき人のところに届いてほしいって思うんですよ。それは4人になってからさらに強く思うようになったことで。ちゃんとかっこいいものをやってる自信があるから、どんな方法でも聴いてもらえたらいいなって思ってます。