自主企画『FORGIVE YOUR DARKNESS』でもSHELTERとは縁の深いmoke(s)がRooftop初登場!
さまざまなバックグラウンドを持って集まった3人の男たちが、真剣に情熱や楽しさを追求しながら奏でる力強いオルタナティヴ・ロックは、文字通り型にはまらず、あの手この手で我々を楽しませてくれる。初の全国流通盤『BUILD THE LIGHT』が発売され、ますます勢いの止まらないmoke(s)。今回はvo. /gt.町田直隆とba.海北大輔が、ニューアルバムや曲作り、8月28日のLUNKHEADとのツーマンの話などなど、イマのmoke(s)をまるごと語ってくれた。[interview:川本俊・安佳夏(下北沢SHELTER)]
初の全国流通盤
----7月に初の全国流通盤『BUILD THE LIGHT』が発売されましたが、まずこのアルバムの話を聞かせていただきたいと思います。今回、Low-Fi Recordsからの発売ですが、Low-Fi Recordsから出すことになった経緯を教えてください。
町田直隆(Vo./gt.):Low-Fi Recordsは実は、それでも世界が続くならというバンドのボーカルの篠塚くんがやってるレーベルで。moke(s)とそれでも世界が続くならは『FORGIVE YOUR DARKNESS』でもSHELTERで一緒にやってるんですけど、きっかけになったのはたまたま僕がイベントでそれでも世界が続くならのライブを見ることがあって、その時すごくライブがかっこよくて好きになっちゃって、moke(s)の企画に出てくれないか、と誘ったんです。そこから親交が深まっていって。
海北大輔(Ba.):マッチーが最初に呼びたいって言ってね。
町田:そう、それで対バンした後も個人的にメールのやりとりをしたりとか普通に仲良くなって。で、篠塚くんといろいろ話をしている時に、「moke(s)がCDとか作ってもなかなかリリースするレーベルが決まらなくて」っていう話をしてて。
海北:前作はUKPで作らせてもらったけど、あくまでそれはUKPの中の配信のMajixっていうレーベルで、がっつりそこでやっていくっていう感触ではなかったから。だとしたらいろんなところに声かけて他も当たってみようよ、ってなったんです。
町田:それでレーベルを探そうみたいな話になった時に、篠塚くんに、「なかなかレーベル決まらないんだよね」って相談をして、「そういえば俺レーベルやってるの知らなかったっけ?」「え、そうなの?」という話になり、篠塚くんが自分のレーベルでよかったらmoke(s)出したい、と言ってくれたんです。ぜひとも! という感じでしたね。
----もともとアルバムを作ろうとはしてたんですか?
町田:そうそう、ファーストアルバム出した後も、ガンガン曲はできてて。
海北:レコーディングは定期的にしてたよね。黒盤・白盤とか会場限定のデモCDとかは作り続けていて曲のストックがどんどん溜まっていってたから。ぼちぼち何かしら、セカンドアルバムなりなんなりをリリースしたいね、っていう話と、どこから出そうかって話がタイミングよく重なって。当初、僕らメンバー的には、アルバムを出したかったんですよ。ミニアルバムっていうのは、しのくんから出てきた案で、せっかく初めての全国流通の作品になるんだから、選りすぐりの曲がぎゅっと入っているインパクトのある作品にしたいということで、「ミニアルバムどうですか」って提案したくれたんです。最初、マッチーはわりと渋ってたよね(笑)。
町田:最初はアルバムを作ろうと思って作っていたからね(笑)。頭脳がアルバムモードになってて、それがミニアルバムになったから、「なんだよっ」って感じはあったんですけど(笑)。でもしのくんは、意見すると同時に具体的な案を出してくれるタイプで、「ミニアルバムにするんだったら、この曲順だったら完璧だと思うからこれでどう?」みたいにすぐに曲順を送ってくれたり。その通りに並べて聴いてみたら確かにいいじゃん! と。
海北:ものすごく聴きごたえもあるし、ぎゅっとしてるから何周もリピートできるしバリエーションもちゃんとあるし、すごくいい提案をしてくれたなと。
町田:これだったらミニでもいいかな、と思ったし、むしろミニでいい作品ができたと思っています。
海北:結果的に曲のストックはまだまだたくさんあるので(笑)。レコーディングが終わってる曲も多いし、下手すると間髪入れずに次回作も出せちゃうかも...。
町田:まぁ、このCDが売れればね(笑)。
自分の中の闇を赦し、光を築く
----『BUILD THE LIGHT』にはどういった思いが込められているんでしょうか。
海北:マッチーが出してきて、僕と小寺くんとしのくんに提案してくれて。ある意味、『FORGIVE YOUR DARKNESS』の対になってるんだよね。
町田:『FORGIVE YOUR DARKNESS』っていうのは、「自分の中の闇を赦せ」という意味合いなんですけど。自分の中でずっとモヤモヤした解決しない闇みたいなものがあって、若い時ってずっと自分の中の闇との戦いを、どう表現するかみたいな感じで曲を書いてきたんですけど、moke(s)を始めた頃は30歳半ば過ぎてて、そういうことだけじゃなくて、そこから一歩先に抜けた自分の表現をやりたいなと思ってた時期で、もう自分の中の闇のことはいいじゃないか、それはそれでもう許してやろう、っていう意味を込めて、そこから一歩先の音楽やライブをやっていきたいという気持ちを込めて『FORGIVE YOUR DARKNESS』っていうタイトルのイベントをやってたんですけど。一番最初に企画をやった時から、『FORGIVE YOUR DARKNESS』ってタイトルだったよね。今はそこからさらに次の段階で、『BUILD THE LIGHT』、「光を築く、創る」というところに来たかなと。
海北:考えてみたらmoke(s)が産声をあげたのはSHELTERだもんね。当時は今と音楽性もちょっと違ったし。やっぱり小寺くんが入ってから変わったかな。岡山くんとやってた時も楽しかったけどね。『ヒムス』を作ったあたりから音楽性が変わっていった気がする。
町田:2014年からmoke(s)は活動してるけど、実質、moke(s)がmoke(s)になったのってドラムが小寺くんになってからな気がするよね。
海北:それからwash? とやれたのも結構デカかったよね~。
町田:確かに。言われてみればwash? と一緒にやって、よりもっとオルタナ道極めなきゃなっていう気持ちになったかも。オルタナティヴバンドであるべきだと思った。
タバコ休憩の間の数分で
----曲作りはどのように進めているんですか?
町田:最近はちょっと忙しくて完全なデモを作ることはできてないんですけど、もともとは基本的に僕がパソコンでデモを作って、ベースもドラムも打ち込んで、っていう感じで作ってますね。最近は僕がスタジオで爆音で弾き語りをして、それに対して二人が肉付けしていくみたいな作り方してますね。
海北:すごいなと思ったのは、僕と小寺くんは喫煙者なんですけど、スタジオで僕ら二人がタバコ休憩をしているほんの数分の間に、マッチーが一曲作り上げちゃってる時がある(笑)。で、その場で弾き語ったり、ボイスメモに吹き込んだのをみんなで聞き直しながら、小寺くんはドラムの先生もしてるんですけど、ホワイトボードに曲の構図をパパッと書いていって、そこにキメとかのポイントだけ印をうって、はい、できた! って。安産の時は結構すんなりですね。難産なのは、今作はないよね。
町田:ないかもね。
海北:前の『BEAUTIFUL LOSER』の時はアレンジを組み替えたりで時間がかかった曲もあったんですけど。今回、一番時間がかかったの「果て」くらいかな。
町田:そうだね。最初に弾き語りやって、そこから合わせていって、だいたい平均して一時間くらいで大元のアレンジはできちゃうかな。
海北:で、歌詞が最初はざっくりした仮の言葉だったりするのを後からちゃんとはめていくので、どんな歌詞がどうのってくるのかも僕らも楽しみでしたね。
----歌詞は後からのせるんですね。
町田:後からのせますね。僕は並行してソロ活動もしてて、ソロの時は完全に歌詞から書いたりすることも多いんですけど。moke(s)に関しては音ありきっていうか。最初にかっこいい曲を作って、そこからどういう歌詞を当てはめていくかっていうのが面白くて。moke(s)は全部、曲から作ってますね。
今なら真正面から
----8月28日にはSHELTERでLUNKHEADとレコ発ツーマンがありますが、LUNKHEADを選んだ理由は?
町田:LUNKHEADは、僕がBUNGEE JUMP FESTIVALの後半に一度だけ共演してて、その頃バンジーは完全に下降線で、LUNKHEADはすごかったんですよ。QUATTROでやったんですけど、とても対照的だった。僕らは頑張ってやっていたけどその頃にはバンドのピークは越えてて、 LUNKHEADは昇り調子で、ライブでバンドが出している雰囲気も全然違ったし、すごく眩しく見えたんですよね。で、LUNKHEADはバンドを続けてていまだにすごくかっこいいし、僕はmoke(s)を始めて、今ならようやくリベンジというか、真正面からLUNKHEADとツーマンできるんじゃないかなと思って。あの時は正直、気持ちいい対バンはできなかったけど、今だったら最高の気持ちで対バンできるんじゃないかなと。
海北:僕と小高くんは年も同い年だしデビューも近いしキャリアが同じくらいで、数少ない今後音楽がなくても友達であり続けたいなと思う人の一人だから、そういう人たちとできることがすごく嬉しいし、LOST IN TIMEとLUNKHEADじゃない接点でできるのも楽しみですね。こういう大事なタイミングのレコ発、リリースのすごく大切な一日を、同世代と組めたのはめちゃくちゃ嬉しいことですよね。同じ時代を同じようにサバイブしてきた仲間と、僕からしたらまた新しいスタートを一緒に築きあげることができる、こんなに幸せなことはないな、と。なので是非、見届けに来て欲しいですね。
フォロワーが生まれるようなバンド
----今回の『BUILD THE LIGHT』のリリースもそうですが、moke(s)はバンドとしてすごく加速して行っているなという印象を受けるのですが、今後のバンドのビジョンはありますか。
町田:バンドのビジョンとしては...うーん。楽しくできればっていうところなんですけど...(笑)。
海北:健康第一(笑)。
町田:うん、楽しく、できる限り長く続けていきたいですね。それが一番で、バンドの目標としては、例えばこのバンドで武道館やりたいとかそういう感じじゃなくて、フォロワーが生まれるバンドになりたいんですよね。moke(s)を見てバンドやりたいと思いました、っていう子たちが出てくるバンドになりたい。
海北:そうだね~。展望とかっていうところでいうと、野望はそんなにないです(笑)。結果的に膨らんでいったら良いけどね。
町田:僕にとって、めちゃくちゃCDを売ったバンドや、めちゃくちゃ大きい会場でやったバンドよりも、このバンドがきっかけで自分はバンドを始めたんだ! 続けられたんだ! っていうバンドの方が特別なバンドなんですよね。やっぱり自分がバンドをやる以上はそういうバンドでありたいですね。