「なんかいいな」っていうのが一番いい
──そういえば、お台場の特設会場で開催が予定されていた『キャノンボール・フェスティバル東京 2018』が警視庁の圧力で中止に追い込まれたことが今回のアルバム制作に影響を及ぼしたところはありましたか。
TOMMY:直接の影響はなかったかな。僕は精神的にだいぶ消耗したけど(笑)。
──あれは結局、会場の管理会社が警視庁及び湾岸警察署に忖度したということなんでしょうか。
TOMMY:目に見えない何らかの力がはたらいたんだろうね。こっちは綿密に準備をして、いい態勢に入ってたときに会場の管理会社から一方的に貸し出しはできないって理不尽な通告を受けてさ。
──まるで「恋のクレイジーパラダイス」の歌詞みたいじゃないですか。「クレイジーすぎて笑っちゃう世の中」という。
KOZZY:まさにね。国会中継を見ても笑っちゃうよね。幼稚園児レベルの不毛な言い合いばかりして、ホントにバカなんじゃないかと思う。
TOMMY:実際、バカなんだと思うよ(笑)。なんで会場を貸し出せないのかの話を聞いたときも、こいつらアホなんじゃないか!? と思ったからね。話してることに筋が通ってないし、言い訳だらけでね。
KOZZY:何か複雑な事情があるんだろうね。大人の世界はいろいろあるからさ。
──聞いたところによると、その振替公演の会場となる下北沢での公演のイベンター側にも警察から問い合わせがあったそうですね。場所を変えて暴走族の集まるイベントをやるのか? と。まったくお利口さんが多くて疲れますが(笑)、マックショウによる振替公演の注意事項が振るっていて。「会場周辺に駐車場はございません。路肩にも駐車できません。道路すらありません。公共交通機関でのご来場をお願いします(確実にマークされてます)」というユーモアを交えた切り返しが見事だなと思ったんですよね。
KOZZY:さすがに道路はあるだろって(笑)。まぁ、2020年の東京オリンピックが終わるまではいろいろピリピリしてるんだろうね。だけどそんな現実とは一転、マックショウは相変わらずお気楽な曲ばかりつくってるなと思ってさ(笑)。マスタリング済みの音を聴きながらそう思ったよ。でもこんなご時世に「彼女はパーフェクト」みたいな曲をつくるのが僕らなりの反骨っていうかね。音楽を通じて何らかのメッセージを発したい気持ちはまったくないし、「今夜はShowdown」や「高速ヘヴン」みたいにマックショウのなかでも歌詞がメッセージ的なことに受け取れる曲も今回はないしね。
──とは言え、お気楽な曲を自由に楽しめることの尊さってありますよね。
KOZZY:そう、それを噛み締めてほしいってことだね。「なんかいいな」っていうのが一番いいわけだから。結局のところ何も唄ってないような曲だけど、なんかいいなっていうのがね。僕自身、そうやって自分のつくった曲を純粋に楽しんでもらえるのが嬉しいしさ。
──ライブの鉄板曲やベスト・アルバムに入るような人気曲もあれば、いつの間にか埋もれてしまった名曲もあると思うのですが、つくり手としてその見極めはおよそ狙い通りなんですか。
KOZZY:半々だね。「今夜だけが」なんて最初は捨て曲中の捨て曲だったし、「恋のスピードウェイ」も2分くらいでつくった曲だったし(笑)。つくったときはいいのができたなと思うけど、そこまで人気が出るとは思わなかったから、もうちょっとちゃんとつくっておけば良かったみたいなことはあるね。「今夜だけが」はまさにそんな感じ。「グリース・ミー」や「ナナハン小僧のテーマ」とかは最初からメインになるべくしてつくった曲だけどね。だけど「ケンとメリーのバラード」なんて最初はタイトルしかなかったし、タイトルが浮かんだ時点で勝った! と思ったんだよね(笑)。曲自体はすぐできるわけ。だからその時点でできたものをなるべく入れちゃおうとするんだけど、あまり詰め込みすぎるのももったいないなと思ってさ。『Rocka Rolla ZERO』なんて曲がいいのが多いから2枚に分ければ良かったと思うよね。
──だけどいつも自分たちを追い込むだけ追い込んで、曲は出し惜しみなく詰め込むだけ詰め込むのがマックショウなりの流儀なんでしょうね。
KOZZY:今回だって2、3曲はカバーで薄めて、いい曲を取っておくことだってできるのにね(笑)。
TOMMY:僕らの知らないうちにワーッと曲がすごいできてたしね。こっちは覚えるのに必死でやべぇ! と思ったけど(笑)。
KOZZY:だいぶネタ枯れだとは思っていても、結局はこれだけの曲ができちゃうわけだからね。もはやもう誰も新曲なんて求めてないのかもしれないけど、ずっと何も出さないっていうのも寂しいしさ。今回のアルバムだって実は2年半ぶりだし。
TOMMY:地方に行くと「新しいアルバムは出ないんですか?」って聞かれることも多いからね。
KOZZY:新しいアルバムが出るのを期待されるのは純粋に嬉しいことだよね。海外のアーティストがライブで新曲をやるときは「ビア・タイム」って呼ばれるわけ。客はみんなビールを買いに行くタイミングなんだよ。それでも新曲を求められるのが僕はやっぱり嬉しいし、つくる以上はマックショウ印のクオリティをキープしたいし、待ち望む人たちの期待には全力で応えたい。まぁ、その優しさが命取りなのかもしれないけどね(笑)。