2014年に放送され大好評を博した『月刊少女野崎くん』。男女問わずに多くの視聴者の支持を集めた作ったスタッフが再集結。さらに今回はオリジナル作品。2018年の東京を舞台にした今作ではどのような恋が描かれていくのか。今作の魅力の一端を、監督である山崎みつえさん本人に語っていただきました。[interview:柏木 聡 / Asagaya/Loft A]
みんなが共感できるものを
――企画立ち上げの経緯を伺えますか。
山崎:『月刊少女野崎くん(以下、野崎くん)』の打ち上げでの、「また皆で集まって、オリジナル作ろうぜ」という飲みの席でのノリが発端でした(笑)。その席にいたKADOKAWAの田中(翔)さんや動画工房の鎌田(肇)さんも「やりましょう」と言っていただけたんです。それは飲みの席でのノリだと思っていたんですけど、1ヶ月後くらいに集合をかけられて「じゃあ、オリジナルやります」って、本当にやる気あったんだと驚きました。
――本当に飲みのノリが形になった作品なんですね(笑)。
山崎:実現となったのは、田中さんと鎌田さんの両プロデューサーの力です。
――ラブコメにしたいというのも飲み会で出ていたんですか。
山崎:そこまでは出ていなかったです。実現すると思っていなかったので、「温泉地を舞台にして、ロケハンで温泉巡りしたいね」みたいな軽い感じでした(笑)。
――実際の作品舞台は東京の銀座や下町あたりですよね。
山崎:そうですね。PVを見ていただければわかりますが実際にロケハンもしました。場所の選定には外国の方たちが日本に来た時に、観光として行きやすい場所というので話し合って決めましたね。さらに、みんなが共感できるものをということで考えたときに、学園生活を取りいれていこうという意見が出て。鎌田さんから、「このメンバーなら、ラブストーリーじゃないですか」って。じゃあ、学生生活でラブストーリーでコメディーも含みつつと、温泉がどこかに行っちゃったんですよ(笑)。
――逆に原点に戻ってきたんですね。
山崎:スタッフもみんな『野崎くん』が好きだったので、自分たちが視聴者だとしたら見たいと思う作品はなんだろうと考えたときに、ラブコメじゃないかということで。
――でも『野崎くん』は9割コメディーの作品でしたよね。今回はラブストーリーのほうがメインなのでしょうか。
山崎:そうですね、私たちなのである程度コメディーにはなっているのですが、大筋のテレサと多田くんの恋物語がちょっとだけ切ないかもしれません。でも、いろんなキャラがいるので、好きなキャラを見つけてくれると嬉しいです。私たちもキャラを1から作るのは楽しかったです。
――オリジナルの醍醐味でもありますね。
山崎:そこは『野崎くん』で学んだことが活かされました。変なキャラを作りたいけど、そうなった経緯や過去がある、例えば、「もてるキャラが女の子が苦手」というちぐはぐさが面白いという部分を技術として学ばせてもらいました。
――作品情報だと悲恋の香りがするので、かなりシリアスなんじゃないかと思っていました。参考にされた作品とかはありますか?
山崎:「星の王子様 ニューヨークへ行く」という映画があるじゃないですか。
――エディー・マーフィー主演の映画ですね。
山崎:外国の方からみた日本ってどんなのだろうという話になったときの参考作品の1つにさせていただきました。日本に憧れてハチャメチャなテレサとそれに歯止めをかけるクールキャラとしてのアレクみたいな。他にもたくさんあります。
五里霧中なところがあったんです
――飲み会から始まった企画だとは思えない練り込みようですね。
山崎:お金をもらうならちゃんと作らないとなって、意外とみんな真面目だったんです(笑)。でも、雑談で出てきた設定が実際に活きてきている部分もあります。
――そこはオリジナルだからこそできることですね。
山崎:そうですね。気心が知れた信頼できるスタッフだからこそできることだと思います。
――さらに今は恋愛モノが来ていますが、意識されてますか。
山崎:『君の名は。』がヒットしてから毎クール何かありますよね。企画自体は公開よりも前なんですけど、世間がブームになって、やばいなって話してます(笑)。
――大丈夫です。山崎みつえ監督と動画工房なら鉄板です。オリジナルは先の展開が読めないというのが楽しさでもありますから。
山崎:そうですね。実は制作している側もシナリオまでは五里霧中なところがあったんです。絵になることでアニメを作ってたんだなって実感しました。文字だけの共有認識ではどうしても微妙な差が出てきてしまうので。絵があると、どう動かすというディティールになってより明確になりました。
――スタッフの方でもそうなんですね。このデザインですと、一般の方に受けそうですね。
山崎:そうなっていただけると嬉しいですね。中高生にはもちろんですけど社会人の方で普段それほどアニメに馴染みのない方にも楽しんで欲しいと思っています。
思い出が蘇ってくるのは切ないよね
――今回メインキャラクターを高校生にしたのはなぜですか。学園モノなら中学生でも、初恋ということであればそれこそ小学生でもいいのかなとおもうのですが。
山崎:企画の際に中学生だと価値観が幼く、若干子供っぽくなって共感しづらいんじゃないかという意見がでたからです。
――確かにそうかもしれないですね。なんとなくわかります。
山崎:大学生だと結構大人で、社会人を意識するところも出てきてどこか生々しさがでてきてしまうので。高校生だとどの年代からも見てもらいやすい時代なんじゃないかって。一種のファンタジー感もあるんだと思います。夢を見られる年齢で、まだ大人になりきれてないけど子供っぽすぎない。自分の自我もはっきりあって、誰かを好きってなった時にも相手のことも考えることが出来るっていう、人間関係のしがらみも出てくる年代で。
――さらに将来も考え始めないといけない時期で。高校生だとアルバイトも始めて、学校や親以外の大人との絡みもできて。
山崎:だからこそ、今思えば高校3年間は大事な時期だったんだなって。もっと大事に過ごせば良かったって思います。今の子たちには本当に大事に過ごして欲しいって思います。
――その時の経験値があるからこそ生まれた作品ですよ。
山崎:そうだといいなと思いながら作っています。
――高校生という点とともに気になっていたのが、多田くんが写真部という部分です。いまは携帯カメラもすごいですし、InstagramやTwitterとの相性の良さであれば携帯かなと。
山崎:学園生活を送るとなった時に部活はどうしようという話になったんです。色々と候補は出てきたんですけど。PVのセリフでもある「この恋を忘れない」が物語のテーマの1つになった時に、何か思い出に残るものが後から出てくるといいよねって話になったんです。うっかり撮った写真とかをふとしたきっかけで見つけた時、当時の思い出が蘇ってくるのは切ないよねって。
――すごく切なくなるやつじゃないですか。
山崎:そうですね。そうしたら、本気でやらなくてはいけなくなって。本当に一眼レフとか買いました。作中のカメラも許諾をちゃんととってるんです。
――Nikonと出ていて気になっていたんですけど、やっぱりそうなんですね。
山崎:実際に高校の写真部にも取材させてもらったんです。写真部の子たちが「こいつはこういう写真ばっかりとるんですよ」って友達の写真をいじってるのを見て、なるほどそういう話で盛り上がったりするんだな、キャラ同士もそうゆう会話をしていたら楽しいかなって思ったんです。
――いまは昔よりも写真を撮る文化が日常になってますからね。
山崎:そうですね。あと、たまたまですけどKADOKAWAのプロデューサーに写真好きな方がいらっしゃって、その方にも話を伺えたのが大きいです。その方は星の写真を撮るために富士山にロケに行ったりもされているらしくて。それを聞いてみんなで、「これネタに使える! 合宿だ!」って盛り上がりました。
――近くにそれだけ詳しい方がいると安心ですね。
山崎:助かっています。視聴者の方が、ちょっとでも気になってお話に入り込めなくなるのは嫌なので。
――リアルな作品だと気を付けないといけないところですね。そこは現物があると違いますね。
山崎:はい。実際に手に取れると全然違いますね。
「テレサが来た」って思いました
――そうですよね、どんなに詳細を聞いても想像は想像ですから。あとはPVをみてびっくりしたのが多田くんが前作の主人公:野崎くん役の中村(悠一)さん、伊集院(薫)役も宮野(真守)さんと。
山崎:そこはオーディションの結果、たまたまです。イメージに合う方ということで協議した結果、お願いしました。みなさん演技の素晴らしい方ばかりなので安心して任せています。アフレコすることで、よりキャラを感じることが出来ました。特に伊集院がそうですね。宮野さんには想像の上をいく形で演じていただいて、より可愛くなったのでお願いしてよかったです。
――ヒロインの石見(舞菜香)さんはいかがですか。
山崎:少女性を残しつつ、品のある自然な感じの方で、まさにテレサそのものですね。オーディションの時にみんなが、「テレサが来た」って思いました。
――みなさんの演技も含め楽しみですね。いよいよ4月から放送開始されますが、最後に放送を楽しみにされているファンへのメッセージをお願いできますか。
山崎:オリジナル作品なのでこれからどうなるかわからないワクワクを楽しみにしてもらえると嬉しいです。是非、多くの方に見て頂きたいと思っています。
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