Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューShinpei Tanaka(Hairdresser)(web Rooftop2016年11月号)

ジャンルに囚われず、国内外の様々なアーティストのヘアを手掛ける

2016.11.21

その人と自分だから生まれるデザイン

 
ーヘアメイクは裏方的とおっしゃいましたが1人のアーティストとしてとにかく自由にやってみたいとゆう気持ちはありますか?
 
S  んー…あんまりそこに対して強くは望まないですね。僕は自分の気質的にアーティストいうかデザイナーだと思ってるんですね、クライアントが望むモノをオーダーメイドで創るデザイナーというか。あまり自分の中の感情というか中身だけを形にするっていうことに今は魅力を感じていないし、1人だけで創りあげるっていうのはヘアメイクっていう性質上、矛盾を感じるんですよね。扱う素材がそもそも人なんで。だったら僕はその素材というかクライアント、その人と創りあげるというかその人と自分だから生まれるデザインを楽しみたいんです。例えば海外のモードブランドのコレクションでヘアメイクの個性がそのまま求められて、完全にアートとして成り立ってる様なモノと自分の仕事は違うモノというか。そうゆう風にアートとして仕事を完結出来る人を羨ましくは思いますけどね。
 
ーそういったジャンルでヘアメイクとして尊敬してる方はいらっしゃるんですか?
 
S come de garçonや多くのハイブランドのショーを担当するJulian dysやUNDERCOVERのヘアメイク等を手掛ける加茂克哉さんなんかは凄く尊敬してるし羨ましく思います。
 
でも僕がしているミュージシャンのヘアメイクとはやっぱりちょっと違うんです。僕もウィッグを使ってビッグシルエットのスタイルとか創ったりしますけど、それはそのデザインがミュージシャンに必要なトキだからなんですよね。
 
ー具体的にミュージシャンのヘアメイクだと使う道具は他の現場と違ったりするものなんですか?
 
S ミュージシャンにもよりますけど撮影のヘアメイクとライブのヘアメイクだと変わってきます。ライブは持ちをというか長い時間に耐える事と崩れてもかっこいい事を両立させなくちゃいけないので、ワックスみたいに重さのあるものはほとんど使わずにスプレーだけで飴細工みたいに創ってくんです。とは言いつつ、スプレーだと喉に着くから嫌だと言われる事もあるので、難しいですね。(笑)
 
激しいライブをするミュージシャンのヘアメイクはアスリートをヘアメイクする様なものなので本当に特殊で、同業者にメソッドを訊かれる事も多いです。
 
ーそういった特殊なヘアメイクならではの楽しみややりがいってやっぱりあるんですか?
 
S ミュージシャンのヘアメイクでしか味わえない喜びみたいので言うと、、
 
まず自分がヘアメイクしたミュージシャンがステージに立って輝いてたり、たくさんのお客さんに求められてる光景っていうのは、それだけで言葉に出来ない高揚感がありますね。
 
その上でヘアが自分の狙った様に動いてると、達成感というかちゃんと仕事した感があります。(笑)
 
一緒にステージに立っている訳ではないけど一緒にいる感覚が味わえるって言ったらいいのかな? その感覚はヘアメイクに限った訳ではなく、裏方仕事の醍醐味だと思いますね。
 
後は…というか自分にとっていちばん大きいコトなんですけど、自分がデザインしたミュージシャンのヘアスタイルを若い子が真似してるのを見たときですね。これはヘアメイクと美容師を両立してる自分にしかない感覚かな。もちろんアーティストの影響力ありきなんですけど。
 
自分の場合はRIZE/The BONEZのJesseくんであったりrapperのkid fresinoが特に影響力が強くて10、20代のフォロワーがいっぱいいるんですけど、その世代の子ってsnsが当たり前だから良いものを作ると物凄いスピードで拡散してくんですよ。
 
そうすると大袈裟な言い方、世界が少し変わるというか、、大袈裟だな。(笑)ただ、確実にストリートには浸透していくんですね。自分はストリートから新しいカルチャーが生まれると思ってるんで、少しでも影響力のある事が出来てる事がプレッシャーとモチベーションになりますね。ダサい事したらそれも一発で広まるんで。
 
まぁ、そんな大きな話じゃなくても10代の子が憧れを持って自分がデザインしたヘアスタイルにしたりするって事実が単純に嬉しいし、ミュージシャンに憧れて同じヘアスタイルにしたヤツって確実に気持ちがアガると思うんですね。自分がそうだったんで。そうゆう気持ちを若い子に与えられるのが凄く…なんて言うんだろうな? 恩返し出来てる感覚があります。影響を受けたアーティストやストリートに。
 
なんで自分がそんなにストリートに拘ってるかはわかんないですけど。
 
ーそこ出身だからですよね
 
S そうかもしれないですね。今もそこにいる感覚があるし。
 
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若い子をドキドキさせたい

 
ーちなみに始めに影響を受けたアーティストは誰なんですか?
 
S 12、3歳くらいの時に黒夢が新宿ロフトでのライブ盤を出したんですね。
 
ーLIVE AT 新宿LOFTですね。
 
S はい。それでロックってゆう存在を知った気がします。当時は大衆的なTVとかに出てるミュージシャンしか知らなかったので、清春さんの黒と金の長髪と破けたジーパンが衝撃的で一気に引き込まれた感じですね。
ファッション誌の表紙にもガンガンなってて、それでファッションにも興味を持つようになりました。小川恭平さんてスタイリストさんをつけてvintageの古着を着てってゆう、当時で考えたら段違いでファッショナブルなミュージシャンだったと思います。LIVE AT 新宿LOFTは映像もあって、ライブハウスってゆうテレビ番組で見る広いセットとは真逆の狭い地下室に悪そうな人達が詰め込まれてる感じも目に焼き付いてます。だから自分にとってrockとloftって本当に結びついてるんですよね。
 
ーその後、清春さんには出会うんですか?
 
S  はい。VAMPS Halloweenの打ち上げでお会いしました。ファンとして声をかけるんじゃなくて、OBLIVION DUSTのヘアメイクをしてますって自己紹介出来たのが嬉しかったですね。その時に初めてお会いしたんですけど、その前にあってなくて良かった。一緒に仕事をした訳ではないけど子供の頃に憧れた存在に大人になって自分もプロとして出逢えたのが感慨深かったです。
 
ー初期衝動が実を結んだ訳ですもんね。
 
S 向こうは僕の事もう覚えてないと思いますけどね。(笑)
 
ーそうやって今は目標としたお仕事をされてるわけですけど、この先のビジョンや夢などはありますか?
 
S 目標や終着点は決めてなくて今やってる事を拡げて続けたいです。って言うと小さく聞こえるけど、今はミュージシャンとして本当に尊敬出切る人達と仕事が出来てるのでそうゆう関係を拡げつつ、かっこいいhairを作り続けて若い世代に夢を与えたいですね。自分が子供の頃にかっこいいって衝撃を受けたようなかっこいいモノを自分がまた創ってくことで若い子をドキドキさせたいです。
 
ロックやカウンターカルチャーって基本的にはマイノリティというか、環境や社会に居心地の悪さを感じる若い世代の為のもんだと思ってるんですね。そうゆう子達の居場所になるようなもんだと。ロックミュージシャンはその子達が好きになった事を誇りに思える様なかっこいいもんじゃないといけないと思うんです。だから自分は、そういうカウンターカルチャーとしてのカッコよさを創り続ける様な仕事をしていたいです。憧れるくらいにカッコいいものがあると、それだけで人は楽しく過ごせるし夢を持てると思うんですよね。
 
後はLOFTでのイベントもまたいつか規模を大きくして色んなカルチャーを混ぜてやらせてもらいたいですね。LOFTにはそうゆう色んなカルチャーを受け入れてくれる懐の深さを感じます。
 
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