血と汗で彩られたガールズパンクの新譜が、あのAAレコードからリリースされる。その名も『LOLITAAA!!!』! タイトルからもとんでもない気合いを感じることができる本作を引っさげて、ラフィンノーズとロリータ18号のツーマンツアー『TAKE IT ALL TOUR』もスタートする。そう、『Rooftop』でインタビューを"殺る"時が来たのだ!![interview:松原弘一良(MOBSPROOF)]
「TAKE IT!」は夢からの贈り物
──今回、PONさんが見た夢とマサヨさんが夢にまで見た現実が繋がったわけですが、リリース決定の経緯というのは?
PON:ロリータが「出したい」って言うてきてん。実は今回の陰の立役者がアンガー(ANGER FLARES)のユウイチやねんな。
マサヨ:最初、ラフィンとロリータのツアーが決まって、それだけで回るのももったいないなって長尾くん(Dead rock project)に相談してたら、「せっかくだからAAから出してもらえばいいじゃないですか!」って。で、ユウイチくんも「何でも手伝う!!!」って言ってくれて、みんなが背中を押してくれて。お願いしに行くときはドキドキで! 下北で一緒にライブした時の打ち上げで、たこちと一緒に「この日しかない!」って。PONさんが酔っぱらう前に、モジモジしながら「リリースしたいんですけど……」って。そしたら「エエよー」って。
PON:ハハハ! 即答で! あっ、これは考えたらあかんなって。それまでロリータはロリータでずっと自分たちでやってきてるから、AAで出すのも違うんやろなって思っててん。けど、ライブで「TAKE IT!」を唄ってもらったことがあって、夢の中でロリータが唄ってたのも頭の中にずっとあって、オファーが来た時に「あぁ、『TAKE IT!』の件があったな」って、頭の中のパズルがパッパッと繋がって。真っ白な、ドラムセットとアンプしかないスタジオで、マサヨがオバQみたいな感じで唄ってて、「こいつらまたメジャーでやってんのか。さすがエエ曲やな」って思ってたら、パッと目が覚めて……「夢やったのか! かっこええ曲やったなぁ……そういや、あの曲、どこにもなかったな…………俺の曲や!!」って。
一同:ハハハ!!
PON:夢からの贈り物。だから、「TAKE IT!」のオリジナル・テイクを聴きたいなと思って。
たこち:オリジナル・テイク!!(笑)
マサヨ:いや、やってなかったし!!(笑)
──PONさんからアルバム制作に関してリクエストを出したりは?
PON:全くなし。バンドって、こっちから口出しても上手く転ばへんと思うねん。それにロリータはちゃんとしたバンドやしね。
マサヨ:でも、「TAKE IT!」に関してはPONさんが完全プロデュースですね。スタジオまで来てくれて。
PON:あれね、オバQみたいな声で「テッケ、テッケ、テッケ」って、俺の夢の通りにしてもらったのね。あれは可哀想や思たわ〜…ゴメン!! オリジナルは「Take It! Take It!」ってパンキッシュでかっこよかったんやけど……どうせやったら……「あ〜、夢と一緒にしたいな〜!」って。
一同:ハハハ!!
たこち:「オバQが向こうから大行進してくるみたいに」って。「テッケ、テッケ、テッケ」って可愛くブースの外でずっとやってくれてたんだけど。
マサヨ:どうやって唄えばいいのか全くわからなくて。何回もテイクを録って、絶対これじゃないだろうなっていうのがオッケーになって、「これだったんだ!(笑)」って。
PON:夢の中の感覚で言ってたから。最後には俺の夢どおりの違和感と浮遊観のある、T・レックスのような仕上がりになりました。ハハハ!
「命のねだん」を殺る時が来た!
──セルフカバー「命のねだん」も収録されてます。
PON:あれ、ハマってたね!
マサヨ:結果的にハマりましたね! たこちとドラムのちーちゃんは元々ロリータ・ファンで、普段は強く言わない二人が「『命のねだん』を殺ったほうがいい」って強く言ってきたから間違いはないんだろうなって。当時のムードを出したかったから、あれだけは「せーの!」の一発録り。
たこち:うん…イかった! 当時のロリータがそのまま蘇った気がしました。ロリータと出会ったのが20歳ぐらいの時なんですけど、カセットテープに「命のねだん」が入ってて、それが大好きだったの。で、これはライブで殺ってなかったけど、絶対殺ったほうがいいって思ってて。
マサヨ:殺る時が来た!
PON:この曲はむちゃくちゃな歌詞やね(笑)。
──今回のアルバム制作で意識したことはありますか?
マサヨ:「パンクをやりたい、パンクを目指したい」と。今まではそういうものをあまり意識しなかったんだけど。タイトルも最初は「『AAAAA!!!!!』っていうタイトルにしたいんです」って相談したら、「せっかくだからロリータを入れたほうがいいんじゃないの?」って『LOLITAAA!!!』って書いて。最初はピンとこなかったんですけど。馴れてきたら『LOLITAAA!!!』のほうが強くて、PONさんに間違いはなかった! で、調子に乗ってお客さんのことを“ロリーター”(語尾が上がる)って呼ぶようになって(笑)。
──ツーマン・ツアーも始まりますね。
マサヨ:ラフィンとこうやって、よく話をさせていただくようになったのが、長尾くんの主催するイベントに出るようになったからで。
PON:そうやねん。この『TAKE IT ALL TOUR』も長尾が持ってきたのよ。「一周してありやな」と思って、そこからリリースの話も持ってきてくれて。最初は「ありかな」程度やったのが、必然性のあるツアーになって、お互いのお客さんにも良かったなと。チャーミーも『LOLITAAA!!!』をリリースする前に恐る恐る聞いたら、「あぁ、ロリータ、アリやな!」って。なんでかって言うたら、韓国で彼女らの情報を聞いていたから。
マサヨ:そうなんですよ。去年、10年ぶりぐらいに韓国でライブをやって。ジャケットも韓国へ行った時にエレベーターで自撮りした写真をイラストにしたものなんですよ。私たちもチャーミーさんに「向こうのバンドが面白いよ」って聞いていて。
PON:チャーミーは韓国の件もあって、ロリータには敬意を持って話してるよね、「先輩!」みたいな。
マサヨ&たこち:いやいやいやいや!(笑) 滅相もない! なに言ってんすか!!
PON:今回のツアーは「TAKE IT!」がツアー・タイトルでもあるから……「TAKE IT!」でマサヨだけ呼び出すのもなんやし、ロリータの「TAKE IT!」でチャーミーを送り出そっかな。
マサヨ&たこち:それヤバいっすね!!
やっつけと芸歴の長さが上手く作用した!?
──最後にアルバムの話に戻りますが、今回のアルバムを聴いてPONさんの感想は?
PON:曲だけ聴いたら普通にかっこええパンク・ロックなんやけど、マサヨの声とメロディが乗ったらものすごくポップになるねんな。「デーモン」とかオケだけ聴いたらありがちと言うか、そこはずっとやってる彼女たちやから工夫はあるんやけど、プラスアルファが加わるんよね。ファストな曲が捨て曲になってない。あと「人間失格」も好きやね。
マサヨ:お〜っ!! 良かったぁ…。最初はベースをあんなに爆音にするつもりはなくて。ミックス作業だけでも13時間ぐらい続いて、8〜9時間目ぐらいに「人間失格」が来て耳と頭がバカになってきて、時間も朝方でテンションもヘンになってね。わけが分からなくなってきて、「ベース思いっきり上げてもらっていいかな?」って言ったら、エンジニアさんが「これでいいんですか?」って何度も振り返って聞くから、「いいんです、これにしてください」って。だから、1曲目にあの曲をミックスしてたら、ああはなってなかった(笑)。
PON:そいうのがエエねん! あと紹介文に「ワウペダルを入れて」って書いてたんやけど、どこに入ってるか分からへんかった。
マサヨ:まさにその曲ですよ! ベースのデッカい音の裏がワウワウワウワウって。でもベースがデカ過ぎて。
PON:デカいベースの裏でワウが鳴ってるから、かっこよく聴こえるねんな。でも、上手いこといったね!
マサヨ:あれは賭けでしたね。最後の「AAAA!!!!」には自分の思いの丈を詰めた感じです。本当はこれを1曲目にして「TAKE IT!」を最後にしようかと思ってたんですけど、マスタリングの時に頭と最後の曲を入れ替えて。
PON:勢いで作ったのがすごい伝わるアルバムやな。やっつけが上手く作用した。ハハハ。
マサヨ:芸歴の長さが上手く作用しました。何とか上手くまとめ上がった感じがしてるんで、最初からこうでしたって顔でいこうかなと。ハハハ。
──その勢いはパンクとしては重要ですよね。
PON:「パンクを目指しました」と言うてたけど、パンクが合ってたね!