Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー吉成 曜(アニメーション監督)(Rooftop2015年10月号)

ファンからの後押しで進みだした2作目!!

2015.10.01

 『アニメミライ2013』での上映、YouTubeの配信が国内外で大反響を呼び、続編としての企画が進みだした『リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード』。クラウドファンディングでの目標金額がわずか6時間で達成したことでも話題を呼んだ今作が、制作発表から2年の歳月を経て今年10月9日に公開が決定!! 多くのファンが待ち望んだ今作の裏側を監督本人に語っていただきました。[interview:柏木 聡(Asagaya/Loft A)]

予想以上の反響

──『アニメミライ2013』の4作品のうちのひとつとして公開された前作の続編が、今回単体での映画化に至った経緯をお伺いできますか。
吉成:実は続編をつくりたいという思いは最初からあったんです。『アニメミライ』は文化庁も関わっている事業ではありますが、作品の権利はスタジオにいただけるというものだったので、試しにYouTubeでも公開してみたところ、いろいろな国の方から好評をいただいて、この作品は単体でも勝負できるのではないかと思ったんです。そこでクラウドファンディングで資金を集めてみたら予想以上の反響があり、実際に動き出すことになりました。
──ファンの後押しがきっかけになったということなんですね。
吉成:そうですね。2本目も同じくらいの規模で考えていましたが、予想以上に資金が集まったので、もう少し長いものにしようということになりました。
──『リトルウィッチアカデミア』(以下、LWA)は、昔からやってみたい作品だったんですか。
吉成:LWAに関してはそうではないですね。『アニメミライ』でやるのに相応しいテーマは何かなと考えた時に思いついた作品です。
──前作は『アニメミライ』の“新人を育てる”というテーマから学園を舞台にしたストーリーを作られたということですが、今作のテーマは?
吉成:“みんなの力で困難を乗り越える”というのが今回のテーマになっています。クラウドファンディングのおかげで劇場化を実現することができた2作目の背景と通じているところもあります。
──ストーリーはどのように作られていったのですか。
吉成:一度挫折して立ち直るという大枠は考えていました。最初は恋愛要素も入れてみようかとも考えてみたのですが、ストーリーが上手くまとまらなくなってきたので、もっとシンプルな友情物語にしようということになりました。そこから友達同士だと何をするかということを考えた時に、学校行事を達成するのがいいんじゃないかということで、今のパレードを題材とした流れになりました。
──そこには吉成さんご自身の経験も含まれていますか。
吉成:主人公が夢見てあれこれやりたいというのを周囲が止めるのは、アニメ現場にもよくある作り手が好き勝手言うのに周りが振り回されるのに近いので、経験からと言うとそうなのかもしれません。多分、アニメ業界だけではないと思いますけどね(笑)。
──ものづくりをしていくとそういった面も出てきてしまいますよね。
吉成:そこは最終的にお客さんに救われるところがあります。
 

新しい風を入れて

──前回の脚本の大塚(雅彦)さんが演出に変わられて、島田(満)さんが脚本に入られていますが、新しい風を入れてということでのお願いだったのですか。
吉成:そうですね。最初は大塚さんが脚本の予定ではあったんですけど、男の発想だと女の子の心理は分かんないなというのもあり、女性の力をお借りしないと難しいということで入ってもらいました。島田さんは『世界名作劇場』にも参加されていて、LWAもああいった作風にしたいなというのもあったのでお願いしたところ、快諾してもらえたので心強かったです。
──メインのキャラクターが前作から3人増えている理由を伺ってもいいですか。
吉成:友情の在り方に違う形があってもいい、というのを表現したかったんです。喧嘩ばかりしているけど、本音を言い合っているのが大事という点で、アツコと対照となるようなキャラクターを新たに追加しました。もともとLWAはキャラクターをいっぱい出したい気持ちがあって、設定だけはつくってあるんですよね。そういったものを活かしたかったというのもあります。
──それは島田さんが入られる前からあったのですか。
吉成:そうだったと思います。最初は3人の関係がギクシャクするきっかけになるキャラを、ということで入れたと思います。島田さんには全体の構成が出来た段階で入ってもらいました。
──島田さんが入られてから大きく変わったところはありますか。
吉成:ラストに近いシーンなどは島田さんのアイデアによって出来上がりました。他にもアツコたちの心情表現にはとても助けられました。
──前作では新人だったスタッフの方は今回も参加されているんですか。
吉成:参加しています。
──新人の方は2年経って変わったなというところもありますか。
吉成:成長はしたと思いますが、個性はあまり変わってなかったので意外でした。
──そういう意味ではスムーズに劇場版にも入ってもらえたということなんですね。
吉成:そうですね。何がやりたいのかがすでに分かっていたので、だいぶスムーズに行きました。前作ではどういう絵を描くのかも分からなかったので、当時は試行錯誤の連続でした。
 

監督として自分の個性を出せるように

──監督業もかなり板についてきたということですね。
吉成:そこは経験不足が露呈しています。監督以前に演出家としても未熟なので、まずはそこを目指したいですね。
──アメリカの『アニメエキスポ』では先行上映されましたが、現地での反響はいかがでしたか。
吉成:もの凄く反応が良かったです。ただあまりにも良すぎてよく分からないです(笑)。これから日本のお客さんにはどう受け入れられるのかなという興味はあります。日本のお客さんは厳しいので、その点は覚悟しています。
──そんなことはないですよ(笑)。
吉成:全然反応が違うかもしれないですから(笑)。
──吉成さんが一番感情移入できるキャラクターは誰ですか。
吉成:主人公が一番よく分かんないですね。そういう意味では対比となっているのがダイアナなので、一番心情が分かりやすいキャラクターではあります。
──私の勝手な想像ですが、前作のテーマが育成だったので、アーシュラ先生が一番近いのかなと思っていました。
吉成:指導者的な立場で見てしまうとそっちばっかりになってしまうので、あまり先生は出しゃばらないようにしました。そういう意味では、前作では指導者はあまり指導者らしいことをしていなかったですね。今回は多少導くようなことをしていますけど、そういった主人公たちをのせていくという役割は監督業とも似ているのかもしれないです。『アニメミライ』では特に若手を育てるということから、自分たちで直させるというのがあったので、何とかやる気にさせるというのは試行錯誤でした。
──監督として一番大変なところですね。今作ではそこは上手くできましたか。
吉成:自分が絵描きでもあるので自分で描きたくなるのを我慢しましたが、まだまだバランスが取れていないなというところがあります。本来はもうちょっと自分の描く量を減らさないといけないんですよね。
──LWAではキャラクター・デザイン、作画監督もされているとどうしても絵を描くパートは増えますよね。
吉成:ホント無茶なんですよ(笑)。短いから何とかなってますけど、長い作品だと無理ですね。細田(守)さんや宮崎(駿)さんのように絵は描かなくても監督として自分の個性を出せるようにしないといけないです。
──そのバランスは悩みどころということですね。やはり、これからも監督業をやっていきたいということですか。
吉成:そうですね。シフトしていきたいと考えています。次はもう少し上手くやりたいです。
──今回は東宝映像事業部配給での劇場公開ということで、より多くの方に見ていただきやすい環境だと思います。どんな方に見ていただきたいと考えていますか。
吉成:コアなアニメ・ファンはもちろんですけど、多くの方に楽しんでいただける内容にできたと思っているので、間口を狭めずにいろんな方に楽しんでいただきたいと思っています。監督としてはまだまだ新人なので、自分ではどうアピールしていいのか分からないですね。細田さんくらいになると監督の名前でもアピールできますけど。
──細田さんの名前が一般に知られるきっかけになった『時をかける少女』はもともと上映館数も少ないなか、いわゆるオタク・ファンから一般の方に輪が広がって世に知られていった作品でした。LWAもそうなりますよ。
吉成:そればかりは公開してみないと分からないですけど、本当に多くの方に楽しんでいただきたいとは思っています。

吉成曜画集 イラストレーション編

著者:吉成曜
価格:4,000円+税
発行:株式会社スタイル

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映画『リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード』主題歌
大原ゆい子 1st Single『Magic Parade』

発売日:2015年10月7日(水)
品番:THCS-60079
価格:1,200円+税

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1. Magic Parade
2. 世界のどこかで
3. 星に雲に揺れる木々に
4. Magic Parade (Instrumental)
5. 世界のどこかで (Instrumental)
6. 星に雲に揺れる木々に (Instrumental) (収録内容変更予定)

LIVE INFOライブ情報

リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード
配給:東宝映像事業部
2015年10月9日(金)より2週間限定公開
TOHOシネマズ新宿 ほかにて上映
休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻