増子直純(怒髪天)との異色コラボレーション
──増子さんの話が出たので「絶望 feat. 増子直純(怒髪天)」(『Happy life』通常盤に収録)についてお聞きしたいのですが、「絶望」のコラボレーションは以前、ROTTENGRAFFTYともありましたよね(シングル『ZERO -ゼロ-』通常盤に収録)。
ガラ:ありましたね。ライブでいろんなバンドとコラボしているので、音源でもコラボで何か面白いことをやりたかったんです。それで増子さんと何か一緒にやりたいと思って。で、以前「絶望」をROTTENGRAFFTYとコラボさせていただいたことがあったので、シングルを出すたびに必ず「絶望」で誰かとコラボして、いつか「絶望」のコラボ・アルバムを出せたら面白いなと考えたんですよ。と言うのも、フラワーカンパニーズの「深夜高速」をいろんなアーティストがカバーしたアルバムを聴いて、凄く感動したんです。同じ曲なのに、こんなにもいろんな表現の仕方や解釈があるんだなと思って、いつか同じようなことを自分たちでもやりたくて。
健一:アレンジも変えられたら面白いですね。以前、アコギで「絶望」をやったこともあるので、そういう面白いアレンジを入れてみたりして。
ガラ:スカっぽい感じの、けっこう無理やりなアレンジだったよね(笑)。
──「絶望ばかりの世の中じゃ、せめて叫ばにゃやりきれぬ。3分足らずのお付き合い、男の魂燃やします!」という冒頭の台詞から増子さんの持ち味がフルスロットルで出ていますよね。
ガラ:そうなんですよね。怒髪天は“R&E(リズム&演歌)”をテーマに唄ってるから、普段はシブい感じの声じゃないですか。でも僕のキーは高いからどうなるんだろうな? と思ってたんですけど、実は増子さんって凄くキーが高いんですよね。増子さんがスタジオに来て「絶望! 絶望!」と唄った瞬間に鳥肌が立ったんですよ。1時間くらい唄ってもらってサーッと帰っていったんですけど、それがめちゃくちゃ格好良くて。しかも、「MERRYの曲って俺には合うなァ…」と言ってもらえたんですよ。
──怒髪天本体でも、あれだけ高いキーでシャウトする曲はないんじゃないですかね。
ガラ:だと思うんですよ。だから僕もびっくりして。サビが高すぎるようなら下で唄ってもらっていいですと話したんですけど、いざ録りが始まるとカツーン!と高いキーを出してくれて、何回か唄ってもらって、「じゃあ後はヨロシク!」と。もうホントにシビレましたね。
──冒頭の増子さんの台詞はあらかじめ用意されていたんですか。
ガラ:いや、その場で作ってもらいました。増子さんはツイッターにbotがあるくらい名言の多い方なんで、熱いキメ台詞を頭に入れて欲しかったんですよ。それでお願いしたら、ちょっと考える時間を作ってから一発であれをキメてくれました。「この曲、何分くらい?」しか聞かれなくてあの台詞ですからね。あれで怒髪天の魂が「絶望」に入ったなと思いましたね。
──そんな話を聞くと、いつかライブでも怒髪天と共演して「絶望」の生コラボを実現して欲しくなりますね。
ガラ:ロフトさん、是非お願いします(笑)。新宿ロフトで怒髪天と一緒にライブをやって、その流れでロフトプラスワンで増子さんとトークライブをやりたいんですよ。増子さんとはいろいろとメールをさせてもらったり、何かと相談させてもらってるんですけど、話してくださる内容がめちゃくちゃ深いんです。みんなから“兄ィ”って呼ばれるのがよく分かりますね。今回のコラボも僕から増子さんに「どうしても増子さんと一緒に唄いたい曲があるんです」と電話して、「ああ、イイね。面白そうだね。分かった」って、それでOKですからね。事務所がどうとか大人の事情がどうとか関係なく決まったことで、僕も増子さんみたいな大人になりたいです。最近はそういうロックな人とばかり出会えているので嬉しいですね。
潰れた真っ赤なトマトは幸せの象徴
──ちなみに、今回の『Happy life』のアーティスト写真はガラさんのスマイル全開で従来のイメージを覆す感じでしたが、あえて意表を突くものにしようという意図があったんですか。
ガラ:ありましたね。あの写真が発表された時はちょうどツアー中で、ファンの人たちはみんな「エーッ、ガラが笑ってる! どうしたの!?」みたいな反応で、こちらとしてはニヤリでした。今までアー写ひとつであれだけ騒がれたのは初めてでしたし。今って黙っていても向こうから情報がどんどん流れてくる時代で、自分が気に留めていなければその情報も流れたまま消えてしまうじゃないですか。だから良くも悪くもトゲのように引っかかるものを残したい思いがあるんです。
──『Happy life』のジャケットにも引っかかりのある写真が使われていますね。潰れた真っ赤なトマトが象徴的にあしらわれていて。
ガラ:「トマティーナ」って呼ばれるスペインのトマト祭りがキーワードとして出てきたんですよ。
──群集が誰彼構わずトマトを投げ合う収穫祭ですね。
ガラ:はい。あのトマト祭りを調べてみたら、その起源は「野菜売りのスタンド前での喧嘩でトマトを投げ合った」「住人同士の階級闘争」「パレードでトマトが一斉に投げられた」「町政に不満を持つ住人が、町の祝賀会で町の議員に向けてトマトを投げつけた」と諸説あるらしくて。しかも、「トマト戦争が終わって、こんなに真っ赤になっても死なないぞというメッセージがある」って書いてあって、それってめっちゃパンクじゃん、って思ったんですよ。トマトを投げ合う戦争だけど、終われば互いにハグし合って、最後はみんなハッピーになるっていうのが『Happy life』のコンセプトにピッタリだなと思って。それでジャケットに潰れたトマトを使うことにして、PVのほうでもトマトの投げ合いを撮影してるんです。
──楽曲のみならず、パッケージやPVの細部に至るまで必然性が貫かれているわけですね。
ガラ:『Happy life』を発表するまでの流れを含めて、ひとつひとつ理由づけられたものが今の自分たちの中にはあるんです。それは今までのMERRYにはなかった部分かもしれません。それまでは行き当たりばったりの面白さがあったんですけどね。今回、「Happy life」の中で「世界がどうなったって 別にそれでいい/目の前の人たちを幸せにしたいだけ」と唄った2行が今の自分のすべてだと思うんですよ。だからこの先、自分が何を唄うべきなのかが楽しみでもあり不安でもありますね。
──9月から始まる『Grateful Year 2015「NOnsenSe MARkeT 2F」』をやっていく中で見えてくるものもあるかもしれませんね。
ガラ:そうですね。またいろんな対バンを迎えて、今年はいっぱいライブをやっていくので。もしMERRYっていうデパートがあったら何を売ってるんだろう? どんな施設が入って、何階まであるんだろう? っていうのが『NOnsenSe MARkeT』のコンセプトだったんで、3F、4F…と続けていくつもりなんですが、自分たちもどこが屋上なのかは分からないんですよ。今のMERRYにはタブーがないので、いろんなジャンル、いろんな場所へ飛び込んで引っ掻き回してやろうと思ってます。
──“屋上”になったら“ルーフトップ”ですね。
ガラ:ルーフトップさんにも協力してもらって、新宿ロフトでトマトを配布したライブをやりますか? 僕らもお客さんもトマトを投げ合って、最後はハグして帰る、みたいな。トマト祭りのロフト・バージョン(笑)。
──MERRYが出禁になるか、僕が始末書を書くか(笑)。でも、予定調和じゃないことを何かしらやりたいですよね。
健一:今のMERRYに予定調和なことはないし、音楽的にも何でもアリだし、せっかく何でもアリだったらNGなしでいろんなことをやったほうがいいと思うんですよ。おそらく次のアルバムにはそんな部分が出てくるんじゃないですかね。
ガラ:まだまだやれることがあるし、やらなきゃいけないことがMERRYにはありますからね。バンドをやってる以上は立ちたい場所があるじゃないですか、大きなタマネギの下とか。その前にまずは“2Fツアー”でまたいろんな対バンを迎えて刺激をもらいつつ、今年を締めくくる面白いことをある場所でやろうと考えてもいるので、僕らの結成記念日やカレンダー上の大切な日はMERRYのために空けておいて欲しいですね。