"ハメ撮り"の祖であり、「アダルトビデオ」という言葉がない時代からその世界に身を投じ、年商100億円を稼ぎ出したかと思えば借金50億円へと転落......。その人生はまさに波乱万丈! 30代以上の男性であれば誰もが一度はお世話になった伝説的AV監督、村西とおるがRooftop初見参! 破天荒すぎる生き様に今こそ耳ヲ貨スベキ!(インタビュー・構成:石崎典夫・一木義彦)
俺が本番路線を突っ走ってなければ今のAVはない!
村西とおる(以下:村):お待たせいたしました。お待たせしすぎたかもしれません。
──(笑)監督、今日はよろしくお願いします! まず『Rooftop』読者のために、AV監督になったキッカケから教えて下さい。
村:もともと裏本を作ってたんですね。それが警察にバレて全国指名手配されちゃってね。最終的には捕まって執行猶予4年の有罪判決を喰らったんですよ。前科者になって学歴もない資格もない、自分の生きて行く道を得るしかない。その時、ビデオの時代が来たから自分もビデオの世界に参加したんだけど、にっかつロマンポルノの方式で前貼りなんか付けてやってるわけよ。「あー、これは絶対売れない」と。嘘本番みたいことをやっててね。
──AVで本番すらもない時代だったんですね。
村:そう。なら、本番をやるしかない。でも、本番をヤッてたら皆から総スカン喰らってね(笑)。「村西のとこ行ったら強姦されちゃうぞ」とか悪評立てられて(笑)。他のAVメーカーのヤツも「監督、ボカシ入れるのにわざわざ本番なんてやんなくていいよ、インチキでいいんだから」って言うのね。ギャラも1本辺り100万出したら、「みんな20万で納得してヤッてんだから、なんでアンタだけ100万出してんだよ?」って言われたんだけど、「100万出さなきゃね、まともな女の子は人生かけてこんな仕事するわけない! 将来とんでもないスーパースターが生まれるためにも200万、300万、金に糸目をつけずにやっていかなきゃダメなんだよ!」っていつもケンカして。あの時に俺が本番路線を突っ走って“駅弁”だろうが“顔射”だろうがいろんなことをやってこなければ今のAVはないですよ!
──最初からAV業界で上手くいったわけではないんですよね?
村:全然いきませんよ。スタッフなんかにも泣かれましたよ。「監督、撮影はもうやめて下さい。私には女房も子どももいるんですよ」と言われました。でも俺には自信があった。裏本時代も含めて、日本で一番“本番”を撮っているのはこの俺だと(笑)。裏本時代もね、男優志望でヤクザの使いっ走りとか来るんだけど1回しかもたないのよ、そういう現場に耐えられないわけ。確かにね、(股間を指差し)ココには入ってますよ、真珠が。でもそういうヤツは見かけ倒しが多いのよ(笑)。俺は不退転の決意でやってたから。そうこうしているうちにハッと気づいたら、1日に30本、50本、300本、1000本、最終的には1日に10000本のオーダーが来ました。
──えー! まだアダルトビデオが1本10000円とかで売られていた時代にですよね?
村:そう、俺がこの業界に参入した時は、ビデオの普及率が0.数%だったんだけど、日本での0.数%は大きいんですよ。人口が1億2千万だから1%でも120万でしょ。で、120万の人たちはこんなに高い機械買ったんだから、「1本ぐらいスケベなヤツを買ってやろう」となるんですよ。そうこうしているうちに、ビデオの普及率がうなぎ登りに上がって、それと同時にレンタルショップがどんどん増えていって。業界の誰もがこんな加速度的に盛り上がるとは思ってなかった。それでAVの時代が来たわけですよ。当時ね、鶴ちゃん(片岡鶴太郎)が『オレたちひょうきん族』でさ、「村西とおるが行く」ってコーナーをやってたらしいのよ。鶴ちゃんがカメラ担いでBVDの白いブリーフ履いて「ナイスですねぇ」って。小森のおばちゃま相手に「見せてごらん」とかやってたらしいのよ(笑)。俺全然知らなかったけど。で、ある時六本木歩いてたの、そしたら横にスーッとベンツが止まってガチャってドアが開いていきなり「監督! いつもお世話になってます!」って鶴ちゃんが最敬礼してきて(笑)。意味わかんないよ、こっちは見てないんだから(笑)。
ロフトプラスワンは日本の文化遺産だよ!
──監督が革新的だなと思うのが、監督自らが出演して、緊張している女優さんにインタビューしながらほぐしていって、最後には声を出させてハメ撮りまでしている(笑)、その振り幅に僕らは興奮していたわけですけど、あの演出方法ってどういう所から思いついたんですか?
村:僕はセールスマンだから、言葉で技を作れるって自信があるんですよ。基本的なベースは、かつて人類が相まみえたコトのないような映像をお見せすると。もう一つ付け加えるならば、この女優さんを撮る時に魅力的にセクシーに撮れるのはこの世に俺しかいないだろうと。この子と寄り添ってセクシーな部分、見せたくないけど見せてもいいわというような、バレてしまう部分というものを、この時間の中において一番効果的にエグく撮れる能力を俺は持っていると。それは自分の言葉を持っているから。言葉で世界を作り上げていくエロというものは日本人にしか実はできない。たとえば女優さんに、何も言わなくていいよと。そこに座っているだけでいいよと。「お待たせいたしました。お待たせしすぎたのかもしれません。それではさっそく始めたいと思います。まず、お名前を承りましょう。お名前は?」。女の子は黙ってる。「ほら、見なさい。視聴者の皆様、ご覧頂きたい。不貞腐れてんじゃありません。恥ずかしいんです。恥ずかしい世界の住人でございますから、これからアダルトビデオに出るのに、何の誰れ誰れというようなことはおっしゃることはできないんです。とても雅やかな厳しいご家庭にお育ちになっております。これだけは聞いておきましょう。年齢はおいくつでございますか?」。また黙っている。「視聴者の皆様、これでご理解頂けますね。年齢も言えない。アンポンタンだからじゃないんですよ。その辺からさらってきたわけでもないんです。なんだ年齢も言えないのかと。そうじゃない。言えないんではなく、言いたくないんです。言いましょう! 21歳です」
──そう、監督が言っちゃうんですよね!(笑)
村:(無言で頷き)「さぁ、それでは初体験の話を聞きましょう。初体験はどちらでございましたか? 何歳の時? ここで初体験が言えるようじゃ、はっきり言ってアバズレでございます。初体験というものはお父様お母様にだって生涯内緒にしておくものです。そんなね、謎めいた世界があるんです。言いましょう。19の時!」
──また言っちゃう!(笑)
村:「そうでしたね? おじさんが亡くなったあのお通夜の晩に町内会の副会長に後ろからアプローチされて、でしたでしょ? そんな作り話をと皆さん思われるかもしれませんが、違うんです! 真実を言うのには時間がかかるんです!」てな話をするわけです。
──凄い! ずっと聞いていられます!(笑)
村:引き出しは無限にまだまだあるから。僕はね、馴れ合いになっちゃうから女の子とコミュニケーションはほとんど取らない。データなんか必要ないし。打ち合わせは1分以内だからね。
──そんな監督のイベントが6月4日にあるわけですが。監督は富久町時代からロフトプラスワンに出て下さってますよね。ココにはどういうイメージをお持ちですか?
村:世の中にはね、テレビでもお見かけすることができない、あっと驚くような天才がいるんですよ。トンデモないものを自分に与えてくれる存在。そういう者を自分は目の当たりにしてみたい。それは今を生きる喜びです。それを鷲掴みにしてみたい。それがこのロフトプラスワンという空間なのでございますよ。ネットとは違う、同じ空間で同じ空気感、そして温度感、距離感、やりとり。その中に自分も参加できる。これはかけがえのない知的ゲームのレベルだよね。こういう所は日本の文化遺産だよ!
──嬉しいです! ありがとうございます!
村:今度のイベントは異種格闘技と言いますか、違う文化の人たちといろいろお話をして、そういうスパークと言いますか、化学反応を見せていければと思っております。そう言えば20年以上前にウチの専属女優だった荒井美恵子さんも出るんです。彼女とは一緒にスリランカへ行った時、撮っちゃいけないとこ撮って、革命軍に追いかけられて、スリランカ中を逃げ回ったということがありました。まぁ、そんな話もできたらいいですね(笑)。