Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー寺田浩史(TVアニメ『ハナヤマタ』宣伝プロデューサー)×堀田章一(TVアニメ『ハナヤマタ』制作プロデューサー)(Rooftop2015年3月号)

可愛いだけじゃない、物語も楽しめる作品

2015.03.02

 可愛い女の子、綺麗な舞台、魅力的な音楽と、一見よくある日常系の萌えアニメ。しかし、その本質はドラマとしても優れた熱血青春物語。あらゆる面でこだわりが窺える『ハナヤマタ』。この素晴らしい作品はどんなこだわりで作られたのか。3月14日のイベントを前に、そのこだわりの一端を語っていただきました。(interview:柏木 聡[Asagaya/Loft A])

可愛い女の子で、熱血部活もの

──『ハナヤマタ』のどういったところに魅力を感じてアニメ化を決めたんですか。
堀田:新しい企画を考えていた頃、いろいろな雑誌を買ったんです。芳文社様の『まんがタイムきららフォワード』もその中の1冊で、たまたま購入した号にカラーのイラストが掲載されていて、「これだ!」と。浜弓場 双先生の絵が本当に可愛くて、素敵な作品に違いないと思いました。実際に読んでみると凄く綺麗なお話で、フィルムとしても賑やかな作品になるなと感じました。
寺田:さらに全く同時期のタイミングで弊社のほうでも同じく本作品に興味を持っておりまして、結果2社でアニメ化に向けて進んでいった形です。
──作品のテーマでもあるよさこいがどういったものかを伝えるのは難しい点だったと思うのですが、どのように作っていったんですか。
寺田:一番の課題だったのは、やはり彼女たちの踊りをどうするか? というところですね。原作では絵として描かれていますが、全体を通した踊りはない。しかもダンスではなく、よさこい。中途半端なものにしたくないという思いがあったので、振付も生半可な方には頼めなかったんです。そうなるとプロに頼むのがやはり一番だと思いまして、数々の実績を持つ「天空しなと屋」様にお願いしたところ、快くオファーを受けていただけました。
堀田:また、アニメ化にあたってよさこいを説明する話を持たなければいけないと考えていました。アニメでは5組目に当たるエピソードになります。現実の大会等で踊られているよさこいを再現したいと考えていたので、その点も相談したところ、快くご協力いただけました。ですから、作中に出てくる他チームの踊りは実際のものなんです。皆さん人柄の良い方々で、今回のオファーを受けていただいたことが作品の成功につながっています。
──浜弓場先生は描き込みが凄いじゃないですか。着物柄も小物も凝っていて、背景も綺麗で、アニメ化では苦労する点だったと思いますが。
堀田:着物柄も細かいので現場も苦心されていましたが、本当にいい形でアニメにしていただけました。
──あと、どちらかと言えば内容も部活青春ものという感じですね。
寺田:私も原作を読んだ時、部活ものなんだと感じましたね。
堀田:僕たちもそんな物語を描きたいと考えていて、目標は熱血ものにしましょうと話し合っていました。
──制作にマッドハウスを選んだのは、どのような経緯があったのでしょうか。
堀田:部活ものという点や過去のいろんな作品を拝見させていただきまして、いしづかあつこさんに監督をお願いしたいというのが念頭にありました。もともと監督は女性がいいよねと話をしていた時にいしづか監督が担当されていたムービーを見て、なんておしゃれな色使い、画作りをされる方なんだと感じたんです。いしづかさんがマッドハウスに所属されているということもあり、是非制作をマッドハウスさんで! と。その点も希望が叶ったということになります。
──オファーの際、いしづかさんの反応は如何でしたか。
堀田:当時、こういった作品のオファーが来るとは思っていらっしゃらなかったそうです。他のインタビューでも仰っていますが、原作を読まれて、「可愛いからやります!」と仰っていただけました。
寺田:監督もお忙しい中だったに違いないと思いますが、スタジオ側含めオファーが来たということに驚かれたのかもしれませんね。
──シリーズ構成は吉田玲子さんで、女性の主人公を書かせると随一の方ですが、どなたの希望だったんですか。
寺田:堀田さんが最初からお願いしたいと言ってました(笑)。
堀田:脚本も女性にお願いしたいと考えていて、この作品に一番合う方は誰だろうと考えた時、吉田さんしか思い浮かばなかったんです(笑)。
 

5人のキャストが持っていた可能性

──主役の5人は若手の声優さんが多く選ばれたのはどうしてですか。
寺田:結果的に若手の皆様が選ばれたのはありますが、オーディションを経て決まった皆様がどのような踊りや演技をするかは、もちろん確証はありませんでした。しかし、アニメのキャラクターとのリンクは必須でした。実際、アフレコも回を追うごとにキャストの皆様はどんどん役そのものになっていきましたし、羽織衣装に身を包んだ時も、キャラクターを現実に表現しきっていたと思っています。この部分はスタッフも含め、非常に気を遣っていたと思います。
──アフレコと歌もあり、さらによさこいもとなると皆さん大変だったのではありませんか。
寺田:もちろん今回の作品柄、踊りもできる方が基準のひとつではあります。ただ、歌やイベント出演はともかく、よさこいの踊りは普段使わない体の動きもあったので、皆さん筋肉痛になったらしいです。特に鳴子。鳴子を持っての踊りはダンスとは全然違うようです。でも結果、演技、歌、ダンスと素晴らしいものになったので、キャストの皆様に感じた可能性は間違いなかったと感じています。
──放送を見られた先生の反応はどうでしたか。
堀田:1話を見た際に「本当にいいアニメにしていただけました」と仰って下さり、大変嬉しかったです。いしづか監督にも全幅の信頼を置いていただけたのかなと思います。
──先生にとっても満足のいく映像化だったんですね。
寺田:だといいですね。改まって聞くのは怖いところではあります(笑)。
堀田:そこは5年後くらいにお酒を呑みながら聞ければいいですね(笑)。
──アニメから原作への逆輸入のエピソードもあると伺いましたが、どんなエピソードですか。
堀田:10組目「オンセン・ガッシュク」のエピソードになります。「漫画では温泉に行けなかったので、アニメではそういったものがあるといいですよね」という話を伺っていて、監督が「部活ものなので、合宿の話を入れたい。せっかくだから温泉に行きましょう」と提案されたら吉田さんがノリノリで、浴衣で踊っちゃうのが可愛いということになって(笑)。先生も「それいいですね」って話になって、原作にも取り入れていただけたんです。女の子ならではのエピソードも盛り込みたいと考えていたので、上手くはまりましたね。先生には他にもヤヤのバンドについてでしたり、アニメを面白くするためにかなりご協力をいただけました。
──私は1話を見た時にクオリティがあまりにも凄くて、このまま続けられるのかと不安になったんです(笑)。
寺田:1話は思い入れも特別ですね。映像が良かっただけに解禁はどこにしようかと思いましたが、やはり芳文社様のイベントで出そうということになりました。
堀田:アニメの映像としては『まんがタイムきららフェスタ!』が初解禁だったんです。関係者含め、ご覧いただいた皆さんからは「凄いものを作ってるね」と言っていただけました。
──本当に脚本、画作り共に高い水準を最後まで保っていて凄かったです。
堀田:今だから言えますけど、僕自身はまさか泣けるアニメになるとは思ってなかったんです。
──王道の部活ものなので、意識されていたんだと思ってました。
堀田:熱血にしたいとは思ってましたけど、本読みのタイミングとかでも「これで泣かしてやる」とは思ってなかったんです。ただ、1話を見た途端にみんなに「泣いた」と言っていただけたのはとても嬉しかったです。
寺田:私も何回か泣いてます(笑)。
──それが逆に良かったのかもしれないですね、泣かせようという意識で作ると画面越しに伝わって冷めてしまいますから。
寺田:中途半端なものは絶対に作りたくなかったので、良いものを作ろうとは常に思っていました。芳文社様はもちろんですが、今回のイベントで登壇いただくニュータイプ様やFIAT様にも大変ご協力をいただきました。そういった意味でもキャストの皆様含め、各スタッフがこの作品を好きなことが少しでもお伝えできたのかもしれません。
──最後に、ファンの皆さんにメッセージがあれば。
寺田:現在、数多くの作品がある中から『ハナヤマタ』をご覧いただき、ありがとうございます。放送後の今も応援していただけるのは、スタッフ、関係者全員嬉しい限りです。今回のイベントで少しでもお返しできるようにと思っているので、是非よろしくお願いします。
堀田:「これからも一緒に、よさこいしませんか?」で(笑)。イベント当日はもっと濃い話をさせていただきます。
 
 

『上田麗奈に聞いてみた!!』

上田麗奈(声優/TVアニメ『ハナヤマタ』関谷なる役)

──最初にこの原作に出会った時の印象は?
「まず表紙の色合いの美しさに思わず感動のため息が出ました。一見ふわふわキラキラしているように見えて、少女たちの心の揺れ動きが大胆に表現されていて、とても感動しました」
──アフレコの際に気をつけたことはありますか。
「可愛いだけにしたくない、というのが本音でした。ですので、決して“いい子”にならないようにと心がけてはおりました」
──アフレコ現場はどのような雰囲気でしたか。
「勝さん役の小山(剛志)さんやサリー先生役の豊口(めぐみ)さんたち先輩の皆様が、楽しく温かい空間に引っ張っていって下さったというのが大きく、和気あいあいと、でもメリハリのあるアットホームな現場になったと思います」
──題材がよさこいということもあり、キャストの皆さんも実際に踊られていますが、その際の秘話や苦労話はありますか
「実は最初はもっと動きの激しい振り付けだったのですが、制服(ミニスカート)で踊るということもあり、少し動きを減らしていただいたり、女の子らしい動きに変更していただいたり、あの踊りは試行錯誤のなか完成した振り付けなのです」
──多くの楽曲も魅力ですが、お気に入りはありますか。
「私はころころお気に入りが変わるのですが、今は『コドクシグナル』がお気に入りですね」
──最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。
「原作でもどんどん成長しているなるたちを見守って下さって、本当にありがとうございます。アニメのほうでもまたなるたちに会えるといいなと日々願っております。今後とも、『ハナヤマタ』を、なるたちのことを、是非見守ってあげて下さい。これからもよろしくお願いいたします!」
 

ハナヤマタ音楽集『華鳴音女』

初回生産限定盤:EYCA-10411/定価:5,800円+税
通常版:EYCA-10413/定価:3,300円+税
2015年4月22日(水)発売

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LIVE INFOライブ情報

ハナヤマタ トークイベント 〜いっしょにおしゃべりしませんか?〜
2015年3月14日(土)阿佐ヶ谷ロフトA
OPEN 19:00/START 20:00
前売 2,100円/当日 2,500円(共に飲食代別)
*前売券はイープラスにて発売中!
【出演】上田麗奈(TVアニメ『ハナヤマタ』関谷なる役)、村上貴志(avex pictures)、寺田浩史(avex pictures)、堀田章一(フリュー株式会社)、土方耕平(KADOKAWA Newtype編集部)、宮澤文衛(FCAジャパン株式会社)
問い合わせ:Asagaya/Loft A 03-5929-3445
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