Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー蛭子能収(Rooftop2015年2月号)

世間が思ってるほど「クズ」じゃない!?
蛭子流「幸福追求のための哲学」とは?

2015.02.02

 独特のタッチとナンセンスな笑いが特徴の、孤高の漫画家・蛭子能収。近年では個性派俳優として、またはイジられキャラとしての印象が強い蛭子さんが昨年上梓した『ひとりぼっちを笑うな』(角川書店・刊)。
 この刊行を記念して、なんと吉田豪×蛭子能収のトークライブの開催が決定! 売り切れ必至のイベントを間近に控え、蛭子さんの「クズじゃない」部分を徹底インタビュー! 悩める若者に贈る「ひとりぼっちの哲学」![interview:石崎典夫/構成:マツマル(LOFT/PLUS ONE)]

成功の秘訣はいじられキャラ!?

──今回は蛭子さんの新刊『ひとりぼっちを笑うな』発売記念も兼ねたイベントということで、この本の内容に沿っていろいろとお話をお訊きしたいんですけど。
蛭子:え? 俺、イベントやるんだ? どこで?
──!?!? 新宿ロフトプラスワンです。
蛭子:へ〜、誰と?
──吉田豪さんです。
蛭子:吉田豪さん!? ええ〜〜!
──知らなかったんですね(笑)。で、この本に「合作は手を抜く」という項があるんですが、これは本当なんですか?
蛭子:それ本当は言っちゃいけないやつなんだけどね(笑)。根本(敬)さんと展覧会やった時なんですが、根本さんに「蛭子さん、ここは合作しようよ」と言われて、やってみたはいいものの、だいぶ手を抜いたものになってしまったんです(笑)。「合作」ってどっちつかずじゃないですか。俺、何でも白黒ハッキリつけたいタイプなもんで。
──蛭子さん自身、「友達がいない」と仰ってますけど、根本さんやみうらじゅんさんは「友達」には入らないんですか?
蛭子:知り合いですね。仲の良い知り合いと言うか。ちょっと時間がある時とかに競艇に気軽に誘ったりできるような人、それもわざわざ時間を合わせてくれるとかじゃなく、何となく来てくれるような人でないと、うまく付き合えないです。
──同じガロ仲間の平口(広美)さんは?
蛭子:知り合い(笑)。でもかなり仲は良いですね。ガロの忘年会で大勢の漫画家さんが集まった時、毎回帰りに平口さんや根本さんと少人数で喫茶店にケーキを食べに行っていたんです。それはけっこう楽しかったですね。
──本の中にテレビに出始めた頃のお話も出てましたけど、蛭子さんの「いじられキャラ」って、テレビに出始めた頃からだったんですか?
蛭子:初めは『笑っていいとも』のとあるコーナーの審査員に文化人枠として呼ばれたんです。テレビに出ているうちに、徐々に今の扱いに変わってきました。まぁ「文化人」と言うほど知識はないので、今みたいな扱いのほうが楽と言えば楽ですね(笑)。
──どの辺から「いじられキャラ」の部分が加速したんですか?
蛭子:やっぱり『スーパーJOCKEY』ですね。あるコーナーでアナウンサーと一緒に司会をさせられたんですが、それがあまりにもヒドくて……。そこからは完全に「いじられキャラ」になっていきましたね。映画とかテレビはディレクターだったり、脚本の方がいらっしゃるので、できる限りその人たちに言われたことをやるだけの「協力者」といった感じのポジションにいるよう努めています。
──本の中で「とある方を怒らせた経験がある」とありましたが、それはどういった経緯だったんですか?
蛭子:当時、楽屋で漫画を描いていたんですが、ずっと横にその方がいらっしゃるのに挨拶をしなかったんです(笑)。そもそも「楽屋挨拶は必ずする」というルールも知らないので、仕方ないじゃないかとも思うんですが。当時は楽屋に漫画の原稿を置いたままにするのが凄く心配で、スタジオの床に原稿の入った鞄を置いた状態で収録に臨んだりしてましたね(笑)。
 

白黒ハッキリつけないと気が済まない

──本の中で奥様が亡くなった時に「初めて孤独を感じた」とありましたが、以前、テリー伊藤さん司会の番組で、蛭子さんが「CGでスクリーンに映し出された、亡くなった奥さんと会話する」という回があったのですが、覚えてますか?
蛭子:ああ……ありましたね。今やっても流行りそうな企画ですよね。
──その中でCGの奥さんから「何か一つお願いを聞いてあげる」と言われて、「じゃあこっちに戻っておいでよ」と答えるシーンが、もの凄く印象に残ってて……。
蛭子:え? そんなこと言ったっけ?
──あ、そこは覚えてないんですね(笑)。
蛭子:妻を亡くした時は競艇に行ってもなんか楽しくなかったんですよね。
──競艇には行くんですね(笑)。
蛭子:それから2、3ヶ月は落ち込んでいたのですが、「とにかく誰か一緒に住んでくれる女性を探そう」という気持ちに切り替わって、当時ファンレターをくれた人に会いにわざわざ大阪まで行ったんですね。それなのにその子に彼氏がいたのが判明して諦めたんです。「彼氏がいるならファンレターなんかよこすな」と思いましたね(笑)。
──立ち直るためには「新しく彼女を作るしかない」と思ったんですね。
蛭子:昔から自分の幸福追求のためなら必死に動くことができるんですよ。子どもの頃なんですけど、どうしてもパチンコに行きたくてしょうがない時期があって、自分で割と本格的なパチンコ台を作って遊んでましたね。近所の子どもたちからビー玉をもらってやらせる、という商売めいたこともしてました(笑)。
──当時からギャンブルに対して並外れた好奇心があったんですね。
蛭子:高校の卒業証書をもらった直後にパチンコ屋に行きましたね。たぶん俺が全国の高校卒業生の中で一番最初にパチンコ屋に行ったんじゃないでしょうかね。すぐ負けましたけど(笑)。法律違反はしたくないのでパチンコ屋は18歳、競艇は20歳になってから行ったんだけど、麻雀にはそういった年齢の基準がないじゃないですか? 白黒つかない曖昧なものは本当にイヤなので。
──そこは声を大にして言いたいと(笑)。
蛭子:ソープランドもそうですよね。遊んでいいのかどうかハッキリして欲しいです。芸能人ということもあり、何かあったら仕事に支障が出ますし、気持ち良く遊びたいのでしっかりとルールを作って欲しいですね。ただ、基準を作る時は参加させて欲しいです。ソープランドは禁止かどうかを決める時は、エッチが好きでどうしようもないような人に参加させるべきなんじゃないかな(笑)。
 

ダメならダメでいいじゃない!

──本の中で、長崎で看板屋さんをされていた時に、「大阪万博に太陽の塔を見に行く」と言って、そのまま大阪を素通りして上京しちゃった話も興味深かったです(笑)。
蛭子:万博に行く気は実は全くなかったんですが、「万博に行く」と言えば休めるムードがあったので、それを口実にしただけですね。上京してもっとクリエイティブな仕事に就くつもりでいました。万博には行かなかったんですが、大阪の住之江競艇場には行きました(笑)。
──東京に来てからはどういった経歴があったんですか?
蛭子:とにかくお金がなくて、結局、渋谷の看板屋に勤めることになったんです。そこの三食付きの寮に住み込みで働きつつ、シナリオセンターに通ったり、描いた漫画を『ガロ』に持ち込みしていました。しばらくは食えなかったんですが、30過ぎぐらいでエロ劇画がコンビニに置かれるようになって、やっと安定した収入が得られるようになりましたね。そこから「東京乾電池」に出演したりしているうちにテレビにも出演……という感じです。
──この仕事はキツかった! っていうのはありますか?
蛭子:熱湯風呂ですね。とにかく熱かった。
──もともとクリエイティブな仕事をしたかった蛭子さんが熱湯風呂に入ることに対して、どの辺から吹っ切れたんですか?
蛭子:最初から吹っ切れてましたよ(笑)。どんな仕事でもある程度はイヤな思いをしてお金をもらうものだと思ってますので、「仕事が楽しい」なんていうのはちょっと信じられないですね。
──今の若い世代で、「目標がない」とか「やりたいことが見つからない」という人もたくさんいると思うんですけど、蛭子さんからアドバイスはありますか?
蛭子:まずはお金を稼ぐことですね。肉体労働でも何でもいいので。お金を稼ぐことの大変さを知った上で、「どんな仕事でお金を稼ぐか」ということを考えていくようにして欲しいです。仕事で自尊心を傷つけられることも多々あるでしょうけど、そこをグッと堪えて食い扶持を得るのが仕事ですから。
──孤独を感じている若い子たちにもアドバイスがあればお願いします。
蛭子:そういう子たちにこそチャンスはあると思いますよ。友達がいなくたって、自分が本当にやりたいことが見つかれば絶対に楽しくなってきますから。頑張ってもうまくいかないこともあるでしょうが、一生懸命やってダメなら一つ下の目標に落として、また頑張ればいいじゃないですか。
──では最後に吉田豪さんと出演されるわけですが、豪さんにはどういった印象をお持ちですか?
蛭子:凄くにこやかな人だという印象はありますね。辛辣なことも訊かれるとは思いますが、お客さんが喜んでくれればいいです。
──どんな質問でもかかってこいと。
蛭子:まぁ言いたくないところは誤魔化しますけど(笑)。お客さんには入場料分ぐらいは楽しんでもらえればいいですね。チケットはいくらなんですか?
──2,800円です。
蛭子:2,800円!? 高っ!! 大丈夫かな……。
 
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ひとりぼっちを笑うな

2014/8/18発売

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『ひとりぼっちを笑うな』刊行記念!
吉田 豪の『復活!雑談天国』2daysスペシャル!!
「蛭子能収×吉田 豪 スペシャルトークライブ!」
【出演】吉田 豪(プロインタビュアー)
【Guest】蛭子能収
OPEN 18:30/START 19:30
前売 2,800円/当日未定(税込・要1オーダー500円以上)
*前売券は2月7日(土)正午12時よりe+にて発売!
*2月16日には、吉田 豪の『復活!雑談天国』2daysスペシャル!!「ゲスト・東野幸治さんを迎えて」アリ! 両日来て頂いたお客様には特典付き!(2月17日に両日のチケット半券をお持ち下さい)
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