Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー廣木隆一 映画『さよなら歌舞伎町』監督(Rooftop2015年1月号)

新宿・歌舞伎町のラブホテルを舞台に、身も心もむき出しになった男女5組の人生が複雑に絡み合う群像劇──

2015.01.05

 急速な勢いで変貌しつつある新宿・歌舞伎町。そんな歌舞伎町を舞台にした映画『さよなら歌舞伎町』がいよいよ1月24日(土)から全国公開される。歌舞伎町の象徴とも言えるコマ劇場がなくなり、その跡地に新しくシネコンがオープンされようとしている現在、どんな思いでこの作品は作り上げられたのだろうか。監督の廣木隆一氏に特別に話を伺った。[interview:小柳 元(NAKED LOFT)]

新宿の変わらない風景は花園神社くらい

──先日、映画『さよなら歌舞伎町』を試写で見させて頂いて大変感動しました。作品が素晴らしかったのはもちろんですけど、僕の働いているネイキッドロフトは新宿の職安通り沿いにあるんです。映画の中でそのネイキッドロフト周辺の風景がたくさん使われていて、とても嬉しくなりました。
廣木:へぇー。ネイキッドロフトって職安通り沿いにあるんだ。
──そうなんですよ。1月16日(金)に『さよなら歌舞伎町』の上映記念イベントをネイキッドロフトで開催させて頂くのですが、最初、歌舞伎町をテーマにした作品だということもあって、歌舞伎町にある姉妹店のロフトプラスワンでイベントを開催したほうがいいのかなと思っていたんです。でも映画を見たら、ネイキッドロフトの近くで撮られていることのほうが多かったので、とても安心しました(笑)。
廣木:そうですか(笑)。歌舞伎町といっても、バッティングセンターが近くにある所のラブホテルを使っているだけで、後は大久保近くの百人町で撮影しているんです。歌舞伎町は撮影していても場所の雰囲気が伝わらない所が多いので、百人町から歌舞伎町の間のほうが新宿っぽい気がして、そちらで撮影してます。旧コマ劇場の辺りも撮影したけど、新しいビルが建設されている最中でクレーンが立っていたりして、新宿のイメージっぽくないんですよね。
──確かに最近の歌舞伎町は変化が激しいですよね。それをとても寂しく思っているのですが、監督は今回、どうして歌舞伎町をテーマに映画を撮られることになったのですか?
廣木:映画の脚本は、歌舞伎町のラブホテルの清掃をやっていた人が書いたルポをベースにしているので、歌舞伎町も久々にいいなと思いました。
──廣木監督は、最初の作品から歌舞伎町を利用されていたという話をお聞きしました。
廣木:そうですね。ピンク映画を撮っていた時はよくホテルの撮影で利用していました。『軽蔑』でも新宿でした。
──今回の映画で使われた新宿の撮影場所というのは、監督の好きな場所だったりするんですか?
廣木:好きと言うより、歌舞伎町っぽいと言うか、みんなが新宿をイメージしやすい場所を選びました。
──新宿や歌舞伎町は以前撮影していた時と比べて、変わった所とかはありましたか?
廣木:やっぱり雰囲気は変わってきています。昔は新宿西口にテントが立ち、芝居をやっていたり、高層ビルが立って、下北沢に流れていってしまい、歌舞伎町も昔ほど芝居をやっている人が集まらなくなりましたね。踊れるクラブも極端に少なくなったし、ゴールデン街は外国人観光客ばっかりになったし、何よりホストが多くなった(笑)。ラブホテルのロビーで徹夜して撮影をして、朝、外に出たりすると、ホストが大勢酔っ払って出てくるから、こんなにホストの子たちが一杯いるんだ!? って驚きましたよ。変わっていないのは花園神社くらいかな。映画でも花園神社で撮影しましたし、新宿の変わらない風景ですね。
──実際の街での撮影は大変だったりしませんでしたか?
廣木:映画の中の花園神社のシーンは、朝の午前6時くらいに撮影したんです。新宿は早朝でも車が多くて、あっちゃん(前田敦子)がいるということもあって凄い心配したんですけど、人は少なかったので無事撮り終えることができました。あと、染谷(将太)とあっちゃんが自転車を2人乗りして新大久保駅近くを走り抜けるシーンも撮影しましたけど、意外と大丈夫でしたね。映画にはエキストラと実際の通行人が半々くらいいたんですが、通行人も通り抜けると何かの撮影だって思うだけで、前田敦子がいるっていうことに気づいている人はいなかったです(笑)。でも、街での撮影はやっぱりいろいろと大変でした。
 

前田敦子はとてもいい演技をしてくれた

──最近話題になっている、ヘイトスピーチをする人々とそれに対抗するカウンターの人々が大久保通りでやり合っているシーンも映画の中に出てきたりしましたね。
廣木:実際の出来事として入れてます。
──凄い大変そうですね。
廣木:警察からも「もし何か問題があったら自分たちは介入できないし、責任も持てないよ」って言われましたが、パトロールを強化してくれたり、撮影のためにガードマンを入れたりして、エキストラのみなさんに他の場所で練習してもらったりしました。
──実際に何かあったりしたのですか?
廣木:特に何も起きなかったです。慣れたスタッフが協力してくれたので、終わったらすぐ退散して(笑)。
──前田敦子さんを映画のヒロインに抜擢されたのは監督とお聞きしましたが、なぜ前田敦子さんがいいと思ったのですか?
廣木:前田敦子のことは、他の映画にも出演しているのを見ていて、とても気になっていたんです。不思議な女優ですよね。役どころがミュージシャンを目指している女の子ということもあり、ちゃんと唄える女の子がいいなと思っていたので、思いきってダメ元で出演交渉してみたら引き受けてくれました。映画ではとてもいい演技をしてくれましたよ。
──ロフト系列のトークライブによく出演されている、リカヤ・スプナーさんが映画に出演されていたのも驚きでした。
廣木:リカヤってもともと、外国人の俳優を斡旋しているマネージャーさんなんですけど、俺が出しちゃったんです(笑)。そう言えばつい最近、新宿ロフトプラスワンで開催するエロトークイベントにも出演してくれって彼から誘われたなぁ。行きたかったけど行けなかったんですよね。
──そうなんですか(笑)。そう言えば、監督は以前新宿ロフトに出演された経験もあるんですよね?
廣木:『天使に見捨てられた夜』という映画を監督した時に自分でイベントを企画したんです。映画にも出演していたPANTAさんとか田口トモロヲさんとかにも出演してもらったなぁ。
──そのライブは見たかったですね。田口トモロヲさんは廣木さんの映画に本当によく出演されていますが、どういうご関係なのですか?
廣木:トモロヲさんとは『鉄男』の頃に知り合って、いろんな役に染まってくれるとても不思議な存在の人で、自分の映画には大体出演してもらってます。とても有難いことだと思ってますよ。この前は、トモロヲさんの映画に僕が出演したりもしました。映画監督って役で、そのまんまじゃないかよって思いましたけど(笑)。
──最後の質問になりますが、主人公の徹や彼の妹が東北出身という設定になっているのがとても印象的でした。監督自身が福島の郡山市出身であるということが関係しているのでしょうか?
廣木:自分が東北出身というのはプライベートなことなので、それを映画に入れるのはどうだろうと思い、少し悩みました。でも、やはりそういう部分を映画に入れていったほうがいいだろうという思いもあったので、主人公を東北出身という設定にしたんです。自分の地元の人がこの映画を見てどう感じるだろうと思うこともあるけど、そうやって逃げていてもしょうがないんですよね。そういうことも含めた上で今の新宿が撮れていればいいなと思ったし、こんな時代にこういう映画を撮ったんだっていうことが後で記憶に残ればいいと思いました。
 
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LIVE INFOライブ情報

映画『さよなら歌舞伎町』
出演:
染谷将太 前田敦子
イ・ウンウ ロイ(5tion) 桶井明日香 我妻三輪子 忍成修吾/大森南朋
田口トモロヲ 村上淳 河井青葉 宮崎吐夢 松重豊 南果歩
監督:廣木隆一
脚本:荒井晴彦/中野太
R15+
(C)2014『さよなら歌舞伎町』製作委員会
1月24日(土)より、テアトル新宿ほか全国順次公開!
 
映画『さよなら歌舞伎町』公開記念:廣木隆一監督トークナイト!
2015年1月16日(金)ネイキッドロフト
登壇:廣木隆一監督
ゲスト:我妻三輪子
OPEN 18:00/START 19:00
前売 1,500円/当日 1,800円
問い合わせ:ネイキッドロフト 03-3205-1556
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